「顔にできた茶色いもの。これはほくろですか、シミですか」。診察室でとてもよく聞かれる質問です。見た目の呼び名としては曖昧に使われていますが、皮膚の中で起きていることは別物で、治療の選び方も変わります。まず何が違うのかを説明します。
ほくろは「細胞の塊」、シミは「色素の沈着」
ほくろ(色素性母斑)は、メラニンを作る細胞が変化した母斑細胞という細胞が、皮膚の中で塊になっているものです。細胞の塊なので、多くは少し盛り上がります。生まれつきあるものもあれば、子どものころから思春期にかけて増えるものもあります。毛が生えてくるものも珍しくありません。
シミは、細胞の塊ではなく、メラニンという色素が皮膚に溜まった状態です。代表的なのは紫外線の影響で中年以降に出てくる老人性色素斑で、こちらは平らで、輪郭がややぼんやりしています。ほかにも、頬に左右対称に広がる肝斑、炎症のあとに残る色素沈着、そばかすなど、シミと呼ばれるものは複数あり、それぞれ治療が違います(関連記事: シミの種類)。
見分け方の表
| ほくろ | シミ(老人性色素斑) | |
|---|---|---|
| 触った感じ | わずかでも盛り上がることが多い | 平ら |
| 色 | 濃い茶色〜黒。均一 | 薄茶色〜茶色 |
| 境目 | くっきりしている | ややぼやける |
| 毛 | 生えることがある | 生えない |
| 出てくる時期 | 幼少期〜思春期に増える | 30代以降、紫外線を浴びた場所に増える |
| 場所 | 全身どこにでも | 顔・手の甲・前腕など日の当たる場所 |
| 保険適用 | 診断や悪性の否定が必要な場合は保険診療になり得る | 基本的に自由診療 |
紛らわしいものもあります。脂漏性角化症(いわゆる老人性イボ)は、シミが年月をかけて盛り上がってきたもので、茶色くて盛り上がるため、ほくろと見間違えられます。表面がザラザラして、指で触ると縁に段差があるのが手がかりです(関連記事: 老人性イボ)。
迷ったら「ダーモスコピー」で中を見ます
皮膚科では、ダーモスコピーという拡大鏡で、皮膚の内部の色素の並び方を観察します。痛みはなく、その場で数十秒です。これで、色素が皮溝(皮膚の細かい溝)に沿って規則正しく並んでいるか、それとも不規則に乱れているかを見ます。肉眼では判断がつかないものでも、この段階でかなり絞り込めます。それでも判断がつかない場合に、はじめて切り取って病理検査をする、という順番になります(関連記事: できものの種類)。
治療 — 何を目的にするかで方法が変わります
ほくろを取る方法は、大きく分けて炭酸ガスレーザーなどで削る方法と、メスで切り取って縫う方法があります。悪性を否定する必要がある場合や、根が深い場合は、切り取って病理検査に出す方法が基本です。理由は、レーザーで削ると組織が残らず、あとから顕微鏡で確かめることができなくなるためです(関連記事: ほくろ除去の方法)。
シミは、種類によって使う手段が違います。老人性色素斑にはレーザー、肝斑には内服や外用が中心で、肝斑にいきなり強いレーザーを当てると、かえって濃くなることがあります。だからこそ、治療の前に「どのシミなのか」を決める必要があります。
※美容目的のほくろ除去・シミ治療は自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。治療後に赤み・色素沈着・へこみなどが一時的に残ることがあります。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| ほくろは取ったほうがいいですか? | 医学的に必要なものは限られます。多くは見た目の希望で決めて構いません | ほとんどのほくろは良性で、そのままでも問題が起きないためです |
| ほくろから毛が生えています。抜いていい? | 抜いても構いませんが、毛抜きで繰り返し抜くのはおすすめしません | 毛の出口が炎症を起こして腫れることがあるためです。気になるなら短く切ってください |
| 刺激するとがんになると聞きました | 普通の生活での刺激でほくろががんになる、という根拠は確かではありません | ただし繰り返し傷つく場所のものは、変化に気づきにくいという別の問題があります |
| 足の裏のほくろは危ないですか? | 足の裏にも良性のほくろはあります。ただし一度は診てもらってください | 日本人ではメラノーマが足の裏に出やすいことが知られており、確認の価値があるためです(関連記事: ほくろと皮膚がんの見分け) |
| シミは日焼け止めで薄くなりますか? | すでにあるシミが消えるわけではありませんが、濃くなるのを防ぐ効果は期待できます | 紫外線はメラニンを作らせる最大の刺激で、治療後の再発予防としても土台になるためです |
受診の目安
- 受診を — 短い期間(数か月)で明らかに大きくなってきた
- 受診を — 形が左右非対称で、輪郭がギザギザしている
- 受診を — 一つの中に黒・茶・赤・白などの色が混ざっている
- 受診を — 直径が6mmを超えて、なお広がっている
- 早めの受診を — 傷つけていないのに出血する、ジクジクする、かさぶたが治らない
- 早めの受診を — 爪に黒い縦線が出てきて、だんだん幅が広がっている
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ホクロ」(確認日: 2026-09-22)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「メラノーマ」(確認日: 2026-09-22)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

