円形脱毛症は、円形やまだら状に毛髪が抜ける病気です。「ストレスが原因」というイメージが広く知られていますが、日本皮膚科学会の一般向け情報では、現在は自己免疫、つまり本来は細菌やウイルスなどから体を守るはずの免疫の働きが自分自身の毛包(毛を作る組織)に向かってしまうことで起こる病気と考えられています。ストレスは発症のきっかけの一つになりうるものの、多くの患者さんでは直接的な関係がないとされています。
脱毛が自然に治まる場合もありますが、再発したり、範囲が広がったりする場合には早めの受診がすすめられています。ステロイド外用・局所注射・局所免疫療法など複数の治療の選択肢があり、近年は重症例に対する新しい薬も登場しています。脱毛に気づいて不安な方は、自己判断で育毛剤などを試し続けるより、まず皮膚科で診断を受けることをおすすめします。
円形脱毛症とは・原因
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aでは、円形脱毛症は自己免疫疾患であり、毛包の周囲に炎症が起こり、リンパ球が毛包組織を攻撃することで脱毛が生じると説明されています。原因は自己免疫反応、つまり免疫による防御機構が誤って毛包を攻撃するためと考えられています。
また、兄弟姉妹や親子での発症も珍しくなく、遺伝的な素因の関与が示唆されています。生え変わりの範囲で起こる通常の抜け毛とは仕組みが異なる、皮膚科で扱う「病気」です。
タイプと重症度
円形脱毛症は、脱毛の範囲によって次の5つに分類されます。
- 単発型: 頭部に円形の脱毛斑が1つできるタイプ
- 多発型: 頭部に複数の脱毛斑ができるタイプ
- 全頭型: 頭部全体の毛髪が抜けるタイプ
- 汎発型: 脱毛が全身に及ぶタイプ
- 蛇行型: 頭髪の生え際が帯状に抜けるタイプ(まれ)
このうち全頭型・汎発型・蛇行型は、通常のタイプと比べて治りにくい傾向があります。
ストレスとの関係——「ストレスが全て」ではありません
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aでは、精神的なストレスの後に脱毛が始まる患者さんもいる一方で、多くの患者さんではストレスとの直接的な関係はないとされています。患者さんの4分の1は15歳以下で発症し、ストレスがあまりないはずの乳児・幼児にも重症の方がいることなどから、単純な「ストレス原因説」は見直されています。発症のきっかけとしては、ウイルス感染症や肉体的疲労、出産など多様なものが挙げられています。
「ストレスを減らせなかった自分のせい」と考えて受診をためらう必要はありません。免疫の仕組みが関わる病気として、治療の相談ができます。
合併しやすい病気
円形脱毛症の患者さんでは、アトピー素因(アトピー性皮膚炎などの背景体質)、甲状腺の病気、膠原病との関連が報告されています。甲状腺疾患や白斑(皮膚の色素が抜ける病気)を併発している人もいることが知られています。診察の際に、こうした病気の症状や既往について確認されることがあります。
AGA(男性型脱毛症)との違い
同じ「脱毛」でも、円形脱毛症とAGA(男性型脱毛症)・女性型脱毛症は、原因も経過も治療法も異なります。円形脱毛症は免疫の関与が考えられている一方、AGAは進行性の薄毛で、治療のアプローチが別になります。どちらに当てはまるかの判断も含めて、診察で確認できます。
診察で確認されること
円形脱毛症の診察では、脱毛斑の状態や広がり、いつから・どのように抜けてきたかという経過の確認が基本になります。脱毛には円形脱毛症以外にもさまざまな原因があるため、他のタイプの脱毛との区別も診察のポイントになります。また、前述のとおり甲状腺の病気などとの関連が報告されているため、症状や経過によっては、そうした病気に関する確認が行われることがあります。
治療の選択肢
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aでは、診療ガイドラインを踏まえた治療として次のようなものが挙げられています。
- ステロイド外用薬: 実施しやすく、広く行われている治療です
- ステロイド局所注射: 脱毛部に直接注射する方法で、脱毛範囲が広くない場合に有効とされています。一方、痛みを伴うため小児には実施しにくい側面があります
- 局所免疫療法: SADBEやDPCPという化学物質を塗り、わざと軽いかぶれを起こして毛の再生を促す治療で、広範囲の脱毛でも有効な場合があります
- ステロイドパルス療法(点滴): 急速に広範囲の脱毛が進む場合に、入院のうえ短期間の点滴治療が行われることがあります
- その他: 紫外線療法、カルプロニウム塩化物の外用、セファランチンや配合剤の内服、液体窒素療法などが挙げられています
また、近年は円形脱毛症の治療薬としてJAK阻害薬(バリシチニブ、リトレシチニブ)が国内でも承認されており、重症例に対する新しい選択肢も登場しています。どの治療が適しているかは、脱毛の範囲・年齢・経過によって異なるため、医師と相談しながら決めていくことになります。
治るまでの経過——再発することもある病気です
小さな脱毛斑が自然に改善することもあります。一方で、一生に一度だけの場合もあれば、何度も再発する場合もあり、「一度治ったらもう出ない」とは言い切れない病気です。また、一般に、脱毛が広範囲に及ぶ場合ほど毛が再生しにくくなるとされています。
経過には個人差が大きいため、焦らず、状態に合わせて治療方針を医師と相談していくことが大切です。
受診の目安
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aでは、次のような場合には早めの診察がすすめられています。
- 脱毛斑が何度も再発する
- 脱毛斑が徐々に増えている・広がっている
- 急激に頭部全体の毛髪が抜けてきた(早期のしっかりとした治療が有効なことがあります)
また、脱毛には円形脱毛症以外の原因(他の病気に関連する脱毛など)もあるため、「円形脱毛症かどうか分からない」という段階での受診でも問題ありません。
子どもの円形脱毛症
円形脱毛症の患者さんの4分の1は15歳以下で発症するとされており、子どもにも決して珍しくない病気です。治療法によっては小児に実施しにくいもの(局所注射など)もあるため、年齢に応じた治療方針を皮膚科で相談してください。
よくある質問
Q1. 自然に治ることはありますか?
小さな脱毛斑では自然に改善することもあります。ただし、再発や拡大がみられる場合は早めの受診がすすめられています。
Q2. 何科に行けばよいですか?
皮膚科をご検討ください。円形脱毛症は皮膚科で診療する病気であり、診療ガイドラインに基づく治療の選択肢があります。
Q3. 治療をすればすぐに生えてきますか?
経過には個人差があり、脱毛が広範囲に及ぶ場合は再生の可能性が低くなるともされています。効果や期間を一律にお約束することはできないため、状態に応じた見通しを診察の中で確認していくことになります。
あわせて読みたい: AGA治療薬の比較(薄毛治療薬の違い)
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」 – https://qa.dermatol.or.jp/qa11/index.html(2026年8月27日確認)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「円形脱毛症とはどのような病気なのでしょうか?」 – https://qa.dermatol.or.jp/qa11/q10.html(2026年8月27日確認)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ストレスは円形脱毛症の原因になりますか?」 – https://qa.dermatol.or.jp/qa11/q11.html(2026年8月27日確認)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「円形脱毛症の治療はどのようにするのでしょうか?」 – https://qa.dermatol.or.jp/qa11/q13.html(2026年8月27日確認)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状の診断・治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は皮膚科の受診をご検討ください。

