口内炎は誰でも経験するありふれた症状で、多くは放っておいても治ります。それでも皮膚科にご相談が来るのは、繰り返す場合と、口以外にも症状がある場合です。口の中の粘膜は皮膚とつながった組織で、皮膚に出る病気が口にも出ることは珍しくありません。
アフタ性口内炎とは — いちばん多い、円い白いくぼみ
口内炎の大半を占めるのがアフタ性口内炎です。頬の内側、舌のふち、唇の裏などに、数mmの円い浅いくぼみができ、中央が白〜黄色、周囲が赤く縁取られます。触れると鋭く痛み、食事や歯みがきがつらくなります。
原因ははっきり一つに決まりません。臨床で多いのは次の組み合わせです。
- 粘膜の傷 — 頬を噛んだ、歯の詰め物や矯正器具が当たる、硬い食べ物で擦れた。同じ場所に繰り返しできるときは、これを疑います
- 疲れ・睡眠不足・ストレス — 「忙しい時期に必ず出る」という方は多いです(関連記事: ストレスと皮膚)
- 栄養の偏り — ビタミンB群・鉄・亜鉛の不足
- 唾液の減少 — 口呼吸、薬の副作用、脱水
放っておいても治りますが、治るまでの痛みを短くすることはできます。そのために受診する価値は十分あります。
見分け — ふつうの口内炎と、そうでないもの
| アフタ性口内炎 | ヘルペス性口内炎 | 注意が必要なもの | |
|---|---|---|---|
| でき方 | 1〜数個が離れてできる | 小さな水ぶくれが群がり、破れて融合する | 1か所が大きく、硬い |
| 場所 | 頬の内側・舌・唇の裏(動く粘膜) | 歯ぐき全体が赤く腫れる、唇のまわりにも及ぶ | 舌のふち・口の底など同じ場所に固定 |
| 熱・だるさ | なし | 初感染では高熱が出ることがある(特に小児) | ものによる |
| 経過 | 10日〜2週間で跡なく治る | 1〜2週間。再発は唇のふちに出やすい | 2週間を超えて治らない・大きくなる |
| 他の部位 | なし | 口のまわりの皮膚 | 陰部の潰瘍・目の充血・皮膚の発疹・関節痛 |
| 考えること | — | 抗ウイルス薬の適応(関連記事: 口唇ヘルペス) | ベーチェット病・自己免疫の病気・口腔がん等の可能性。要受診 |
特に覚えておいていただきたいのが、「口内炎と、陰部の痛い潰瘍を、どちらも繰り返す」というパターンです。目の症状や皮膚の発疹を伴うこともあり、この組み合わせは自己判断で片づけず、必ず相談してください。
もう一つは「2週間以上、同じ場所が治らない」です。縁が硬い、盛り上がっている、出血する、といった特徴があるときは、口の中の悪性腫瘍を除外する必要があります。痛みが軽いことも多く、痛くないから安心とは言えません。
治療とセルフケア
治療の目的は、痛みを抑えて、治るまでの期間を短くすることです。
- 口腔用のステロイド軟膏・貼付剤 — 炎症を抑える中心的な薬です。ただしヘルペスや真菌による口内炎に使うと悪化するため、自己判断で使い回さないでください。診断がついてから使うものです
- 含嗽剤(うがい薬) — 粘膜を保護し、清潔を保ちます
- 痛み止めの内服 — 食事がとれないときは我慢しないでください。食べられないと治りも遅くなります
- レーザーによる処置 — 痛みを早く軽くする目的で行われることがあります
- 栄養の補給 — ビタミンB群の内服が処方されることがあります
生活面では、熱いもの・辛いもの・酸味の強いものを避け、歯みがきは患部を避けつつ口の中は清潔に保つのが基本です。清潔にする理由は、細菌が増えると治りが遅れるからです。しみるからといって歯みがきを全部やめると、かえって長引きます。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 市販の貼る薬を使っていい? | 典型的なアフタなら使って構いません | ただし1週間使っても変わらない、増えていく場合は、診断が違う可能性があるため受診してください |
| 何科に行けばいい? | 口の中だけなら歯科・口腔外科、皮膚や陰部にも症状があれば皮膚科です | 口の粘膜は皮膚とつながっており、全身の病気の一部として出ることがあるためです |
| うつりますか? | アフタ性口内炎はうつりません。ヘルペスはうつります | ヘルペスはウイルスによるもので、唾液や接触で広がるためで、タオルや食器の共用は避けてください |
| 繰り返すのを減らすには? | まず、当たっている歯や器具がないかを確認してください | 同じ場所に繰り返すものは物理的な刺激が原因のことが多く、そこを直さないと薬だけでは止まらないためです |
| 子どもが痛がって食べません | 冷たくてなめらかなものにしてください | 刺激が少なく飲み込みやすいためです。水分がとれず、おしっこが減っているときは受診してください |
受診の目安
- 受診を — 2週間以上治らない、だんだん大きくなる、縁が硬い
- 受診を — 年に何度も繰り返す、いつも複数個できる
- 受診を — 口内炎と同じ時期に、陰部の潰瘍・目の充血・皮膚の発疹・関節の痛みがある
- 受診を — 新しい薬を飲み始めてから口の中が荒れた(関連記事: 薬疹)
- 早めに受診を — 高熱を伴い、歯ぐき全体が腫れて痛い(特に小さなお子さん)
- すぐに受診を — 痛みで水分がとれない、唇や目のふちまでただれてきた。夜間・休日で迷うときは救急相談の電話窓口(#7119)も利用できます
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ヘルペスと帯状疱疹」(確認日: 2026-09-20)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(確認日: 2026-09-20)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

