子どもの保湿は、年齢ではなく肌の状態に合わせて続けます。乾燥しやすい肌には、朝と入浴後を目安に十分な量を。赤みやかゆみが続くときは、保湿だけでなく湿疹の治療が必要なことがあります。
「毎日塗っているのにカサカサが治らない」「いつまで続ければいいのか分からない」——子どもの保湿では、量・タイミング・洗い方を見直すことが大切です。
ただし、よくならない原因が、必ずしも保湿不足とは限りません。乾燥と湿疹を区別しながら、お子さんに合ったケアを考えましょう。
子どもの肌が乾きやすい理由
皮膚のいちばん外側にある角層には、水分を保ち、外からの刺激を防ぐ役割があります。特に乳児では、角層の水分の出入りや水分を保つ仕組みが発達途中で、大人の肌と同じではありません。
空気の乾燥だけでなく、汗やよだれ、洗いすぎ、衣類などによる摩擦も肌荒れのきっかけになります。保湿は、皮膚の水分を補い、逃がしにくくすることで、こうした刺激から肌を守る手助けをします。
いつから、いつまで塗るのか
保湿は、新生児期からでも肌の状態に応じて行えます。使用する製品の対象年齢や使い方を確認し、乾燥や刺激の出方を見ながら続けましょう。
やめる時期は「何歳になったら」と一律には決められません。日常の乾燥対策では、次のように肌の状態で調整します。
- 粉をふく、触るとザラつくなどの乾燥がある場合は、保湿を続ける。
- 保湿の回数を減らしても乾燥やかゆみが出ない場合は、塗る範囲や回数を調整する。
- 冬だけ乾燥する場合は、その季節に合わせて保湿を増やす。
一方、アトピー性皮膚炎のお子さんでは、見た目がよくなっても乾燥しやすい状態が残ることがあります。症状が落ち着いている間も保湿を続けることが再燃予防に役立つため、治療中の場合は主治医と相談して調整してください。
量の目安——年齢と塗る面積に合わせる
クリームや軟膏の量を考えるときには、「FTU(フィンガーチップユニット)」が参考になります。
口径約5mmのチューブから、大人の人差し指の先端から第一関節まで出した量が、約0.5g=1FTUです。これで、大人の手のひら側の面積約2枚分、指も含めた範囲に塗るのが目安です。
お子さんに必要な量は、年齢や体格で変わります。次の表は、それぞれの部位全体に塗る場合の、おおよその1回量です。
| 部位 | 生後3〜6か月 | 1〜2歳 | 3〜5歳 | 6〜10歳 |
|---|---|---|---|---|
| 顔・首 | 1FTU | 1.5FTU | 1.5FTU | 2FTU |
| 片腕・手 | 1FTU | 1.5FTU | 2FTU | 2.5FTU |
| 片脚・足 | 1.5FTU | 2FTU | 3FTU | 4.5FTU |
| 胸・お腹 | 1FTU | 2FTU | 3FTU | 3.5FTU |
| 背中・おしり | 1.5FTU | 3FTU | 3.5FTU | 5FTU |
FTUは大人の指で量ります。表は外用剤の塗布量の目安であり、実際には体格、塗る範囲、製品に合わせて調整します。チューブの口径が違う製品や、ローション・ポンプ式製品では、同じ長さや1プッシュが同じ量になるとは限りません。
肌に数か所置いてから、すり込まず、手でやさしく広げましょう。塗ったあとにしっとりする程度を目安にします。つややべたつきの出方は製品によって違うので、「塗った跡が消えたから足りない」とは限りません。
乾燥しやすいお子さんでは、朝と入浴後の1日2回を目安にします。手洗いなどで落ちやすい部分は、必要に応じて塗り直してください。
タイミング——入浴後を習慣にする
入浴後は、皮膚から水分が蒸発して乾燥しやすくなります。タオルで押さえるように水気を取り、その後なるべく早く塗るとよいでしょう。
ただし、「何分以内に塗れなければ意味がない」ということではありません。お子さんの着替えやお世話で遅くなっても、その時点で保湿してください。
入浴後と朝の着替えのときなど、毎日の行動と組み合わせると習慣にしやすくなります。入浴しなかった日も、乾燥する部分の保湿は続けましょう。
洗い方も見直しましょう
保湿を続けていても、熱いお湯や強い摩擦で肌に負担をかけていると、乾燥やかゆみが改善しにくくなります。
- お湯は38〜40℃程度のぬるめを目安にし、長湯を避ける。
- 洗浄剤はよく泡立て、ナイロンタオルなどでこすらず、手でやさしく洗う。
- 首やわき、股などのしわに洗浄剤が残らないよう、十分にすすぐ。
- 洗浄剤の使用範囲や量は、汚れ・皮脂・乾燥の程度に合わせる。
「毎日、全身を念入りに石けんで洗う」「乾燥肌だから石けんは一切使わない」と、どちらかに決めつける必要はありません。汚れやすい部分はきちんと洗い、乾燥や刺激が強い部分では洗浄剤の使用を控えめにするなど、肌の状態に合わせます。
季節と剤形の使い分け
| 季節・肌の状態 | 選び方の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 春・秋 | ローション・乳液・クリームなど | 季節の変わり目に乾燥が戻る場合は、剤形や回数を調整する |
| 夏 | べたつきの少ないローションや乳液など | 汗をやさしく取り除いてから塗る。乾燥している部分まで一律に量を減らさない |
| 冬・乾燥が強いとき | クリーム・軟膏など | ローションだけでは乾燥が残る場合、より保湿性の高いものを検討する |
| 湿疹があるとき | 保湿に加えて、必要な治療薬を使う | 保湿剤の種類を変えるだけで、赤みやかゆみを抑えようとしない |
夏でも乾燥するお子さんはいます。「夏だから保湿は不要」「厚く塗ると必ずあせもになる」と一律に考えるのではなく、乾燥と蒸れの両方を見ながら調整しましょう。
べたつきを嫌がって塗れなくなる場合には、使い心地の違う製品に変更する方法もあります。ただし、使いやすくても乾燥が改善しない場合は、剤形や量を見直す必要があります。
よくある落とし穴
湿疹を保湿剤だけで治そうとする
保湿剤と、ステロイドなどの炎症を抑える薬は、役割が違います。赤みやかゆみを伴う湿疹が続いている場合、保湿だけでは十分に改善しないことがあります。
乾燥する皮膚には保湿剤を、湿疹の部分には処方された治療薬を使います。「湿疹の部分は保湿を避けて、周りだけに塗る」と一律に決める必要はありません。同じ場所に重ねる場合の順番や間隔は、処方時の説明に従ってください。
かゆみをすべて乾燥のせいにする
かゆみの原因は乾燥だけではありません。湿疹、あせも、かぶれなどでもかゆくなります。
「かゆいから保湿を増やす」だけで改善しないときは、原因を確認することが大切です。塗るとしみる、赤くなる場合も、無理に同じ製品を使い続けないでください。
「ベビー用なら必ず合う」と考える
「ベビー用」という表示だけで、すべてのお子さんに刺激が出ないとは限りません。一方、大人向けとして売られている製品でも、子どもに使用できるものがあります。
対象年齢や成分を確認し、香料などの刺激になり得る成分が少なく、お子さんの肌に合うものを選びましょう。
受診の目安
次のような場合は、保湿だけで様子を見続けず、皮膚科で相談してください。
- 量や塗り方を見直しても、カサつきやかゆみが続く。
- 赤み、ジュクジュク、かき壊しがある、または湿疹を繰り返す。
- かゆみで眠れない、夜中に何度も起きる。
- 保湿剤を塗るたびに、強くしみる、赤くなる。
膿や黄色いかさぶた、発熱、急に広がる赤みなどがある場合には、感染症が関わっていることもあるため、早めに受診しましょう。
どの製品をどれだけ使えばよいか分からない場合も相談できます。使用中の保湿剤や、その容器の写真を持参すると、具体的に確認しやすくなります。
あび皮膚科クリニックは、2027年の開業を予定しています。
よくある質問
Q. 赤ちゃんのころから保湿すれば、アトピーや食物アレルギーを防げますか?
保湿によってアトピー性皮膚炎の発症が減った研究はありますが、効果が確認されなかった研究もあり、結果は一様ではありません。予防的な保湿を選択肢とするガイドラインもありますが、「毎日塗れば必ず防げる」とまではいえません。
また、アトピー性皮膚炎の発症予防と、食物アレルギーの予防は分けて考える必要があります。保湿だけで食物アレルギーを確実に防げるとはいえず、湿疹がある場合には、その炎症を適切に治療することが大切です。
保湿をしていても発症するお子さんはいます。発症したからといって、保護者の方の塗り方や努力が足りなかったということではありません。
Q. 子どもが保湿を嫌がって逃げてしまいます。どうしたらよいですか?
まず、塗ったときにしみていないか、べたつきや冷たい感触が嫌なのかを確認してみてください。痛みや刺激がある場合は、我慢させるのではなく、肌の状態や製品を見直しましょう。
痛みがなければ、「腕と脚、どちらから塗る?」「お腹は自分で塗ってみる?」と、お子さんが参加できる形を試してみるのも一案です。短い歌を歌いながら塗るなど、終わりが分かる工夫もできます。
毎回大きな負担になっている場合は、そのことも診察で伝えてください。使用感や塗る時間帯も含めて、続けられる方法を考えましょう。
Q. よだれや食べこぼしで口の周りが荒れます。保湿以外にできることはありますか?
食事や授乳の前に、口の周りの皮膚へ白色ワセリンなどの保護剤を塗ると、よだれや食べ物の刺激を減らす手助けになります。
食後は、ぬるま湯や湿らせた柔らかい布で、押さえるように汚れを取りましょう。何度も強く拭くと、その摩擦自体で荒れてしまいます。よだれで濡れたスタイも、こまめに交換してください。
すでに赤い湿疹が続いている場合は、保護だけでなく炎症を抑える治療が必要なことがあります。
Q. きょうだいや親と、同じ保湿剤を使ってもよいですか?
市販品で、子どもにも使用できる製品がそれぞれの肌に合っていれば、同じ製品を選んでもかまいません。ただし、家族に処方された薬を自己判断で使い回すことは避けましょう。
容器の衛生管理も大切です。ジャータイプは、清潔なスパチュラやスプーンで必要量を取り、皮膚に触れた指や道具をそのまま容器に戻さないようにします。ポンプ式やチューブ式も、出口を皮膚に直接つけないように扱ってください。
関連ページ
参考文献
- 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会.アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024.日本皮膚科学会雑誌.2024;134(11):2741–2843.保湿、洗浄、外用量の目安などを参照。(公益社団法人日本皮膚科学会)
- American Academy of Pediatrics. Treatment of Atopic Dermatitis. 保湿剤の選択、入浴後の保湿、季節による調整などを参照。(AAP)
- American Academy of Dermatology. How to treat eczema in babies. 乳児の洗い方、保湿、よだれによる刺激への対策、感染の徴候などを参照。(アメリカ皮膚科学会)
- NHS. Emollients. 保湿剤の使用方法、他の外用薬との併用、容器の衛生管理などを参照。(nhs.uk)
- Nikolovski J, et al. J Invest Dermatol. 2008;128(7):1728–1736. doi:10.1038/sj.jid.5701239. 乳児の角層のバリア機能と水分保持に関する研究。(PubMed)
- Chalmers JR, et al. Daily emollient during infancy for prevention of eczema: the BEEP randomised controlled trial. Lancet. 2020;395(10228):962–972. doi:10.1016/S0140-6736(19)32984-8.(PubMed)
- Simpson EL, et al. Emollients to Prevent Pediatric Eczema: A Randomized Clinical Trial. JAMA Dermatol. 2025. doi:10.1001/jamadermatol.2025.2357.(JAMA Network)
- American Academy of Dermatology. 小児アトピー性皮膚炎の予防・治療ガイドラインに関する発表資料.2026年4月7日.予防的保湿の条件付き推奨について参照。(アメリカ皮膚科学会)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

