「風邪薬を飲んだら、熱が下がらないうえに目が真っ赤になってきた」「唇がただれて食事がとれない」「体に赤い斑点が広がってきた」。薬による発疹(薬疹)の多くは、薬をやめれば落ち着く軽いものです。しかし、まれに命に関わる重いタイプがあり、その代表がスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死症(TEN)です。早く気づいて原因の薬を止めることが、何より大切です。
SJS・TENとは(仕組み)
薬などをきっかけに、体の免疫が自分の皮膚や粘膜(目・口・陰部などの、湿った膜)を強く攻撃してしまう病気です。皮膚の表面(表皮)が傷んで、水ぶくれになったり、はがれたりします。
皮膚がはがれる範囲が体の表面の10%未満のものをSJS、10%以上に広がったものをTENと呼びます。TENはSJSがさらに進んだ状態と考えると分かりやすいです。どちらも国の指定難病(重症多形滲出性紅斑)に含まれる、まれですが重い病気です。
原因として多いのは、抗てんかん薬、痛風の薬、解熱鎮痛薬、抗菌薬などです。市販の風邪薬や解熱鎮痛薬でも起こることがあります。一部はマイコプラズマなどの感染症がきっかけになります。
症状・見分け
多くは、原因の薬を飲み始めてから数日〜2週間程度で始まります(それより後のこともあります)。最初は風邪のような症状に見えるため、見逃されやすいのが特徴です。
- 38℃以上の発熱、だるさ、のどの痛み
- 目の充血、目やに、まぶたの腫れ、まぶしさ
- 唇や口の中のただれ、出血、かさぶた。食事や飲み込みがつらい
- 陰部のただれ、排尿時の痛み
- 全身に広がる赤い斑点、水ぶくれ、こすると皮膚がむける
| 見るところ | よくある軽い薬疹 | SJS・TENを疑うサイン |
|---|---|---|
| 熱 | ないか、あっても軽い | 38℃以上が続く |
| 目・口・陰部 | 変化なし | 充血・ただれ・出血がある |
| 皮膚 | 赤い細かいブツブツ。かゆみが中心 | 中心が暗い赤の斑点、水ぶくれ、皮膚がむける。痛みが強い |
| 全身の具合 | 元気 | ぐったりしている、食べられない |
「皮膚の症状」より先に「目と口の症状」が出ることがある点が大切です。薬を飲んでいる最中に目と唇の症状が同時に出たら、皮膚がきれいでも受診してください。
治療
疑わしい場合は、原因と考えられる薬をすぐに止め、入院して治療します。皮膚科を中心に、眼科などと連携して全身を管理します。
- ステロイドの点滴・内服: 免疫の過剰な反応を抑える治療の中心です
- 免疫グロブリン製剤、血漿交換療法: 重症の場合や、ステロイドで十分に抑えられない場合に検討します
- 皮膚・粘膜のケア: やけどの治療に近い考え方で、はがれた皮膚を保護し、感染を防ぎます
- 目の治療: 目の後遺症(視力の低下、ひどいドライアイ)を残さないために、早い段階から眼科で治療します
治ったあとは、原因となった薬の名前をお薬手帳に必ず記録し、今後は同じ薬・似た成分の薬を使わないようにします。薬の副作用で入院が必要になった場合、医薬品副作用被害救済制度の対象となることがあります。
受診の目安
次のどれかに当てはまる場合は、夜間・休日でも様子を見ずに受診してください。迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。意識がぼんやりしている、水分がとれない場合は119番を検討してください。
- 薬を飲んでいる最中に、高熱と目の充血・唇のただれが出た
- 皮膚に水ぶくれができた、皮膚がむけてきた
- 発疹が短い時間で広がっている
受診するときは、最近2か月ほどの間に飲んだ薬(市販薬・サプリメントも含む)が分かるもの(お薬手帳や薬の箱)を持参してください。原因を絞り込む大切な手がかりになります。
診察室でよく聞かれる質問
何年も飲んでいる薬でも起こりますか?
多くは飲み始めて間もない時期に起こります。長く問題なく飲んでいる薬が原因になることは少ないですが、ゼロではありません。新しく始めた薬がないかを、まず確認します。
自己判断で薬をやめてもいいですか?
重い症状が出ているときは、新しく始めた薬をいったん止めて受診するのが基本です。ただし、てんかんや心臓の薬など、急にやめると危険な薬もあります。受診先で、どの薬を止めるかを一緒に決めます。
家族も同じ薬に気をつけた方がいいですか?
体質(遺伝的な型)が関わる薬もあることが知られていますが、家族が必ず同じ反応を起こすわけではありません。ご家族が同じ薬を使うときは、主治医に経緯を伝えておくと安心です。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-09)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-09)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

