「ステロイドの飲み薬が出ました。塗り薬でも不安なのに、飲んで大丈夫でしょうか」——診察室でよく聞かれます。ステロイドは強い薬です。ただ、強い薬であることと、危ない薬であることは同じではありません。この記事では、どんなときに飲み薬を使うのか、何に気をつければよいのかを説明します。
どんなときに飲み薬を使うのか
皮膚科でステロイドの飲み薬を考えるのは、塗り薬では間に合わない場面です。目安は次の3つです。
- 範囲が広い — 全身に近い範囲に出ていると、塗り薬だけで抑えるのは現実的ではありません
- 進行が速い — 一日単位で悪くなっているときは、追いつく速さが必要です
- 塗り薬が届かない — 粘膜や、皮膚の深いところで起きている炎症には、外から塗る薬は届きません
| 場面 | 飲み薬を考える理由 |
|---|---|
| 広範囲のかぶれ(接触皮膚炎) | 顔や体の広い範囲に出て、水ぶくれを伴うようなとき。数日で抑えきると、その後の色素沈着も残りにくくなります(関連記事: 植物でかぶれた) |
| 重い蕁麻疹・まぶたや唇の腫れ | 抗ヒスタミン薬だけで抑えきれないときに、短期間だけ追加します(関連記事: 蕁麻疹) |
| 薬疹(薬による発疹) | 原因の薬をやめたうえで、炎症を抑えます。粘膜症状や発熱を伴うタイプでは入院が必要なこともあります(関連記事: 薬疹) |
| 水ぶくれができる自己免疫の病気 | 皮膚を自分の免疫が攻撃している状態のため、免疫の側を抑える必要があります |
| 湿疹・皮膚炎の急な悪化 | 掻き壊しと眠れないほどのかゆみの悪循環を、いったん断ち切る目的で使うことがあります |
逆に、慢性の湿疹やアトピー性皮膚炎に対して、飲み薬を長く続けることは、いまは基本的に行いません。長期に続けたときの負担が大きく、塗り薬や、より負担の少ない別の治療の選択肢があるためです(関連記事: アトピー性皮膚炎の新しい治療)。
塗り薬とは何が違うのか
塗り薬は、塗ったところの皮膚に効きます。血液に入る量はごくわずかで、だからこそ全身への影響は小さく、その代わり広い範囲には手が回りません。
飲み薬は、血液に乗って全身に届きます。広い範囲に一度に効くという長所と、皮膚以外の臓器にも作用するという短所が、同じ理由から生まれます。皮膚科が「まずは塗り薬で」と言うのは、必要のない範囲まで薬を届けたくないからです。
副作用は「短期」と「長期」で分けて考える
ステロイドの副作用として語られるものの多くは、数か月以上続けた場合の話です。数日から1〜2週間の使用で起きうるものとは、内容も重さも違います。
| 短期間(数日〜1〜2週間) | 長期間(数か月以上) | |
|---|---|---|
| よくあるもの | 眠りが浅くなる、食欲が増す、顔のほてり、胃のもたれ、気分が高ぶる | 顔が丸くなる、体重増加、皮膚が薄くなる、あざができやすい |
| 注意するもの | 血糖値の上昇、血圧の上昇、感染症が悪化しやすくなる | 骨がもろくなる、白内障・緑内障、糖尿病、自分でホルモンを作る力が落ちる |
| やめかた | 短期間なら、そのまま終了できることもあります | 急にやめると体調を崩すため、時間をかけて減らします |
とくに知っておいていただきたいのが、持病によって注意点が変わるということです。糖尿病のある方は血糖が上がりやすく、胃潰瘍の既往がある方は胃薬を一緒に出すことがあります。B型肝炎にかかったことがある方、結核の既往がある方は、免疫を抑えることで再び活動しはじめることがあるため、事前の確認が必要です。お薬手帳と、これまでかかった病気を伝えてください。
飲んでいる間に気をつけること
- 指示された日数を最後まで飲む — 途中でやめると、抑えかけた炎症がぶり返し、結果としてもっと長く薬を使うことになります。とくに薬疹やかぶれは、中途半端にやめると再燃しやすい病気です
- 朝にまとめて飲むことが多い — 体のホルモンの出かたに合わせるためと、夜に飲むと眠りにくくなるためです
- 感染のサインに気をつける — 発熱、のどの痛み、咳が出たら早めに相談してください。免疫を抑えている間は、感染症が重くなりやすく、また熱が出にくくなって気づくのが遅れることがあります
- むくみ・血圧が気になるときは塩分を控えめに — 水分と塩分をため込みやすくなるためです
- 生ワクチンは事前に相談を — 飲んでいる量と期間によっては、接種の時期をずらしたほうがよいことがあります
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| お酒は飲んでいい? | 控えめにしてください | 胃への負担が重なるためです。かゆみのある病気では、飲酒そのものがかゆみを強めることもあります |
| 1週間だけでも顔は丸くなる? | 短期間で顔つきが変わることは、まずありません | 顔が丸くなる変化は、月単位で続けたときに出てくるものだからです |
| 途中で治ったらやめていい? | 自己判断でやめないでください | 見た目が良くなっても、炎症が完全に収まっていないことが多く、やめた数日後にぶり返すことがあるためです |
| 癖になりませんか? | 短期間の使用で依存が生じることはありません | 問題になるのは、長期間使って自分でホルモンを作る力が落ちた状態から、急にやめた場合です |
| 飲み忘れたら? | 気づいた時点でその日のぶんを飲み、2回分をまとめて飲まないでください | まとめて飲むと、その日の量が一度に増えてしまうためです。判断に迷えば処方元にご相談ください |
| 妊娠中・授乳中は? | 使えることもありますが、必ず妊娠・授乳中であることを伝えてください | 薬の種類と量の選び方が変わるためです(関連記事: 妊娠中・授乳中の皮膚の薬) |
受診の目安
- 相談を — 飲み始めてから眠れない、気分が高ぶる、胃が痛む
- 相談を — もともと糖尿病があり、血糖の値が普段より高くなってきた
- 早めに受診を — 発熱、のどの痛み、咳、傷口が膿んできた(感染症のサインです)
- 早めに受診を — 飲み終わってから数日で、症状が元に戻ってきた
- すぐに受診を — 黒い便が出た、激しい腹痛がある
- すぐに受診を — 発疹に加えて、口の中のただれ・目の充血・高熱がある(重い薬疹の可能性があります。判断に迷うときは#7119)
ステロイドは、使いどころを選べば短期間で症状を立て直せる薬です。怖い薬というより、使う期間を決めて付き合う強い薬と考えていただくのがよいと思います。不安があるときは、飲み始める前に「何日間の予定か」「終わったらどうするか」を確認しておくと、見通しが立ちやすくなります。
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-18)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-18)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

