陰部やわきの湿疹が何年も治らない|乳房外パジェット病を疑うサインと、生検で確かめる理由

陰部やわきの湿疹が何年も治らない|乳房外パジェット病を疑うサインと、生検で確かめる理由
DERMATOLOGY GUIDE | GENERAL DERMATOLOGY
更新日: 2026年9月19日執筆: あび皮膚科クリニック編集部医師紹介

この病気でいちばん多い経過は、「かゆいので市販薬を塗る → 少し良くなる → やめると戻る」を何年も繰り返す、というものです。早い段階で見つかれば、治療は手術で切り取ることが中心になります。知っておいていただきたいのは病名そのものよりも、「治らない湿疹には期限を決める」という考え方です。

目次

乳房外パジェット病とは

汗を出す腺(アポクリン汗腺)が多い場所の表皮に、がん細胞がゆっくり広がっていく病気です。60代以降の方に多く、進行はとてもゆっくりです。

できる場所は、頻度の高い順に次のとおりです。

  • 外陰部・陰嚢・そけい部 — 大多数がここです
  • 肛門の周囲・おしり
  • わきの下

いずれももともと汗をかきやすく、蒸れやすく、かゆくなりやすい場所です。だから「あせもだろう」「かぶれだろう」「カンジダだろう」と解釈されやすく、そのまま時間が経ってしまいます(関連記事: 陰部のかゆみ・できもの)。

SKIN STRUCTURE — CROSS SECTION 表皮(バリアの層・約0.2mm) 真皮(弾力を支える層) 皮下組織(脂肪の層) 毛穴(毛包) 皮脂腺皮脂を分泌して肌を保護 汗腺汗をつくる 表皮の奥でつくられたメラニンが、表面にシミとして見える
表皮の中を横方向にゆっくり広がるため、見た目は「治らない湿疹」になります図: あび皮膚科メディア編集部作成(イメージ図であり、実際の構造を簡略化しています)

どんな見た目か — 湿疹との違い

乳房外パジェット病 湿疹・かぶれ 皮膚カンジダ症
色 赤〜褐色。白く抜けた部分が混じることがある 一様な赤み 赤く、周囲に小さな衛星状のブツブツ
境界 はっきりしていて、地図のような輪郭 ぼやけて周囲に移行 比較的はっきり
表面 じくじく、あるいは白くふやけた感じ かさつき・引っかき傷 白いカスが付く
経過 年単位でゆっくり広がる。自然に消える時期がない 良くなったり悪くなったりを繰り返す 抗真菌薬で2週間ほどで改善
薬の反応 ステロイドで一時的に軽くなるが、やめると必ず戻る 治療で治る 抗真菌薬で治る
左右 片側から始まることが多い 接触した範囲に一致 左右のしわの部分に

「ステロイドで軽くなるから湿疹だ」とは言えない、というのがこの病気の要注意点です。炎症を抑える薬なので、がんであっても赤みとかゆみは一時的に減ります。

確かめ方 — 生検は難しい検査ではない

診断は皮膚生検で確定します。局所麻酔をして数mmの皮膚を採り、顕微鏡で細胞を調べます。処置そのものは十数分で、糸で数針縫って終わることがほとんどです(関連記事: 皮膚生検とは)。

「がんかどうか調べます」と言われると身構えてしまいますが、皮膚科で生検をする目的の多くは、むしろ「違うことを確かめて安心して治療を続けるため」です。結果として湿疹だと分かれば、そこからは迷わず湿疹の治療に専念できます。

診察では、ダーモスコピーという拡大鏡での観察も併せて行います(関連記事: ダーモスコピー検査)。ただしこの病気に関しては、拡大して見るだけで結論を出すことはせず、疑ったら組織を確かめます。

治療の考え方

治療の基本は手術で切除することです。この病気は見えている赤みの外側にも細胞が広がっていることがあるため、境界を確かめながら範囲を決めます。そのために、手術の前に周囲の数か所から小さく皮膚を採って広がりを調べる方法がとられることがあります。

範囲や進み具合によっては、放射線治療や薬物療法が選ばれることもあります。治療方針は病変の広がりと全身の状態で変わるため、確定診断がついた段階で、手術を担当する施設と相談しながら決めていくことになります。

ここで強調したいのは、この病気は進行がゆっくりで、表皮の中にとどまっている段階で見つかれば、治療の見通しが大きく変わるということです。何年も湿疹として様子を見てしまうことが、いちばんの損失になります。

診察室でよく聞かれる質問

質問 答え 理由
市販薬で様子を見るなら、どのくらいまで? 2週間使って変化がなければ受診、1〜2か月治らないなら診断を確かめてください ふつうの湿疹やかぶれなら、その期間で明らかな改善が見えるはずだからです
恥ずかしくて受診しづらいのですが 診察は必要な範囲を短時間で確認します。タオルで覆いながら進めます 受診をためらう気持ちが診断の遅れにつながりやすい病気だからです
かゆみはありますか? かゆい方が多いですが、まったくない方もいます かゆみの有無では病気を区別できないためです
放っておくとどうなりますか? 範囲が広がり、治療の選択肢が減っていきます 表皮にとどまっているうちのほうが、切除の範囲も小さく済むためです
何科を受診すればいい? 皮膚科です 皮膚の生検と診断が出発点になるためです

受診の目安

  • 受診を — 陰部・そけい部・肛門周囲・わきの赤みが、塗り薬で治りきらないまま数か月以上続いている
  • 受診を — 境界のはっきりした赤みが、少しずつ広がってきている
  • 受診を — 湿疹として治療してきたが、薬をやめると必ず同じ場所に戻る
  • 受診を — じくじくして下着に汁がつく、出血する
  • 早めに受診を — しこりとして触れる部分が出てきた、そけい部のリンパ節が腫れている

あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。

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参考情報

本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

アマデアル亜琵医師(日本専門医機構認定 皮膚科専門医)

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