乾癬というと皮膚の病気だと思われがちですが、皮膚症状のある方の一部で、関節にも炎症が起こります。そして困ったことに、関節の症状は「使いすぎ」「加齢」「腱鞘炎」と説明がついてしまうため、受診が遅れやすい。皮膚科で乾癬を診ている医師が関節の話を必ず聞くのは、このためです。
乾癬性関節炎とは — 免疫の炎症が関節にも及ぶ
乾癬は、免疫の働きが過剰になって皮膚に慢性の炎症が起きる病気です(関連記事: 乾癬とは)。この同じ仕組みが関節の内側や、腱が骨に付く部分(付着部)に起こったものが乾癬性関節炎です。
時間的な順序は決まっていませんが、皮膚症状が先に出て、数年〜十数年後に関節症状が出るという経過が多く見られます。ただし関節が先のこともあり、皮膚症状がごく軽い方もいます。
とくに注意していただきたいのが、爪に変化のある方です。爪の点状のくぼみや、爪が浮いてくる変化がある場合、関節症状を伴いやすいことが知られています(関連記事: 爪の乾癬)。爪は関節のすぐ近くにあり、付着部の炎症と関係が深いと考えられています。
「使いすぎ」との見分け
| 炎症による痛み(乾癬性関節炎など) | 使いすぎ・加齢による痛み | |
|---|---|---|
| 朝のこわばり | 30分以上続く。起き抜けがいちばんつらい | あっても数分で取れる |
| 動かすと | 動かしているうちに楽になる | 動かすほど痛くなる |
| 休むと | 休むとかえって固まる | 休むと楽になる |
| 腫れ方 | 指が1本まるごと腫れる(指趾炎・ソーセージ様) | 関節の一点が痛む |
| 場所 | 手足の指、かかと・アキレス腱の付け根、腰・お尻 | 使っている関節 |
| 左右 | 左右非対称のことが多い | 負担のかかる側 |
| 夜間 | 夜中や明け方に痛みで目が覚める | 日中の活動後に痛む |
この表のうち、実際の診察でもっとも手がかりになるのは「動かしているうちに楽になるかどうか」です。炎症による痛みは、体を動かすと血流が増えて和らぎます。「朝がいちばんつらくて、昼にはましになる」という訴えは、そのまま炎症を示唆します。
放っておくとどうなるか
関節の炎症が続くと、骨と軟骨が削られ、関節が変形します。いったん壊れた関節は、炎症を止めても元には戻りません。治療の目的が「痛みを取ること」だけでなく「関節を守ること」にあるのは、この不可逆性のためです。
また、乾癬のある方では、肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧といった代謝の問題を併せ持つことが多いことが知られています。皮膚と関節だけでなく、体全体として管理していく病気だと考えてください(関連記事: 糖尿病と皮膚)。
治療の進み方
乾癬性関節炎が疑われる場合、皮膚科と、リウマチを診る科が連携して診ていくのが一般的です。関節の評価には血液検査やレントゲン、超音波、MRIといった検査が用いられます。
- 痛みと炎症を抑える薬 — 非ステロイド性抗炎症薬などで症状を和らげます
- 病気の進行そのものに働く薬 — 免疫の過剰な働きを抑える内服薬が使われます
- 生物学的製剤・分子標的薬 — 炎症を起こす特定の物質を狙って抑える注射・内服の薬です。皮膚症状と関節症状の両方に効くものがあります(関連記事: 乾癬の飲み薬・注射)
- リハビリと運動 — 関節を固まらせないために重要です。痛いから動かさない、が最も避けたい選択です
費用の負担が心配で受診をためらう方もいますが、高額療養費制度などの仕組みがあり、治療を続けられる形を一緒に考えることができます。金額を理由に相談をやめてしまわないでください。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 乾癬があると必ず関節炎になる? | なりません。一部の方に起こるものです | ただし起こったときに早く気づけるかどうかで結果が変わるため、症状を知っておく意味があります |
| 皮膚がひどいほど関節も悪くなる? | 必ずしも比例しません | 皮膚症状が軽くても関節炎が進むことがあり、皮膚の具合だけで判断できないためです |
| 何科を受診すればいい? | まず通院中の皮膚科で構いません | 乾癬の経過を把握している医師が、必要に応じてリウマチを診る科へつなぐほうが早いためです(関連記事: 紹介状を渡されたら) |
| 運動していい? | 痛みが強い時期以外は、動かしてください | 関節を動かさないと固まってしまい、筋力も落ちるためです。水中運動など負担の少ないものから |
| お酒・たばこは関係ある? | 喫煙は乾癬の経過に悪く働くことが知られています | 治療の効きにも影響するとされており、禁煙は治療の一部と考えてください |
受診の目安
- 受診を — 乾癬があり、朝のこわばりが30分以上続く
- 受診を — 指が1本まるごと、赤く腫れて太くなった
- 受診を — かかとやアキレス腱の付け根が、歩き始めに痛む日が続く
- 受診を — 腰やお尻の痛みが、動くと楽になり、休むとつらい
- 受診を — 爪に点状のくぼみや浮きが出てきた(関節症状が出やすい型のことがあります)
- 早めに受診を — 関節の腫れと痛みで、物が握れない・歩きにくい
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン(確認日: 2026-09-20)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(確認日: 2026-09-20)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

