「爪水虫と言われて薬を飲んだが、まったく変わらない」「爪が分厚く濁ってボロボロになる」「皮膚には何も出ていないのに爪だけおかしい」——こうした経過のなかに、爪乾癬(つめかんせん)が紛れていることがあります。爪の変化を起こす病気のなかで、爪白癬(爪水虫)の次に見落とされやすいものです。
爪乾癬とは: 乾癬が爪に出た状態
乾癬は、皮膚が本来より速いペースで作られ、厚く積み上がってフケのようにはがれる病気です。原因は感染ではなく、免疫の働き方の偏りと考えられています。人にうつるものではありません(関連記事: 乾癬とは)。
爪も皮膚が変化してできた組織です。爪を作っている根元の部分(爪母)や、爪の下の皮膚(爪床)に乾癬の変化が起こると、そこで作られた爪が正常な形になりません。これが爪乾癬です。
知っておいていただきたいのは、皮膚に乾癬の発疹が出ていなくても、爪だけに先に出ることがあるという点です。「皮膚はきれいだから乾癬ではない」とは言えません。また、爪に症状がある乾癬の方は、関節の症状を伴うことがあることも知られており、指の痛みや腫れがあるときは伝えてください。
爪水虫との見分け
| 爪乾癬 | 爪白癬(爪水虫) | |
|---|---|---|
| 特徴的な所見 | 点状陥凹(針でつついたような小さなくぼみ) | なし |
| 色の変化 | 油じみのような黄色〜サーモン色の斑 | 白〜黄白色に濁る |
| 始まる場所 | 爪の根元からのことが多い | 爪の先・脇から根元へ進むことが多い |
| 手足 | 手の爪にも多い | 足の爪が圧倒的に多い |
| 本数 | 複数の爪に同時に出やすい | 1〜数本から始まることが多い |
| 足の皮膚 | 関係しない | 足に水虫があることがほとんど |
| まわりの皮膚 | ひじ・ひざ・頭に厚い紅斑が出ることがある | 特になし |
| 顕微鏡検査 | 菌は見えない | 菌が見える |
表の最後の行が決め手です。爪の変形は原因が違っても似た見た目になるため、見ただけでは確実な区別ができません。爪の一部を削って顕微鏡で観察し、必要に応じて培養も行います。
ここで注意点が一つあります。爪乾癬と爪白癬は同時に存在することもあります。乾癬で変形した爪には菌も入り込みやすいためです。この場合、両方への対応が必要になります。
爪の変化を起こすほかの原因
- 爪甲剥離症 — 爪が先のほうから浮いて白く見える状態(関連記事: 爪が浮く・剥がれる)
- 外傷・靴による圧迫 — 足の親指に多く、繰り返す刺激で厚く変形します
- 爪囲炎・カンジダ — 爪のまわりの腫れを伴います
- 扁平苔癬 — 爪が薄くなり、縦の線や欠損が出ます
- 甲状腺や貧血などの全身の状態 — 複数の爪に同じ変化が出ることがあります
治療: 爪は時間がかかる。それを前提に組み立てる
爪乾癬の治療は、すぐに見た目が変わるものではありません。これは治療が効かないという意味ではなく、すでにできあがってしまった爪は元に戻らず、新しく伸びてくる部分から改善するためです。手の爪で半年前後、足の爪ではそれ以上かかることを最初に共有しておく必要があります。
- 外用薬 — ステロイドや活性型ビタミンD3の外用薬を、爪の根元とまわりの皮膚に塗ります。爪の中には浸透しにくいため、根元から届かせる意識で使います
- 局所注射 — 爪の根元にステロイドを注射する方法があります。痛みを伴うため、適応を選んで行われます
- 光線療法・内服・生物学的製剤 — 皮膚や関節の症状を伴う場合、全身の治療で爪も改善することがあります(関連記事: 光線療法(紫外線治療)とは)
- 刺激を減らす — 深爪を避ける、爪を短く整える、爪の下を掃除しすぎない。いじるほど悪化しやすいという性質があります
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 人にうつる? | うつりません | 感染症ではなく、免疫の働き方による変化のため |
| マニキュアで隠していい? | 基本的にはよい。ただし落とすときに注意 | 見た目の負担を減らす意味はある。除光液の刺激と、爪をこすることが悪化因子になるため |
| 爪水虫の薬を飲み続けている | 一度、診断を確かめ直してください | 菌がいなければ効きようがなく、内服には肝機能などの負担があるため |
| ジェルネイルは? | 避けたほうが無難 | 付け外しの刺激が爪母への負担になるため |
| 治りますか? | 改善は期待できます。時間はかかります | 新しく伸びる爪が入れ替わるのを待つ必要があるため |
| 指が痛い・腫れる | 必ず伝えてください | 関節の症状を伴うことがあり、治療の組み立てが変わるため |
受診の目安
- 複数の爪に、点状のくぼみや黄色い斑が出ている
- 爪水虫の治療を続けても改善しない — 診断の確認が必要です
- 爪の変化に加えて、ひじ・ひざ・頭皮に厚い赤い斑がある
- 指や足の関節が痛む・腫れる・朝こわばる — 早めに受診してください
- 爪のまわりが赤く腫れてずきずき痛む、膿が出る — 感染の可能性があります。早めに受診してください
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 爪の病気(確認日: 2026-09-12)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-12)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

