「生まれたときから、頭のここだけ髪が生えない」。乳児健診や、髪が伸びてきた時期に気づかれて来られる方が多い病気です。親御さんが最も心配されるのは「悪いものではないか」「今すぐ取るべきか」の2点なので、そこを中心に説明します。
脂腺母斑とは — 皮脂腺が過剰に集まった生まれつきのあざ
脂腺母斑は、皮脂腺(皮脂を出す腺)が普通より多く集まってできた、生まれつきのあざです。頭皮に最も多く、次いで顔やこめかみにできます。境界のはっきりした、円形や帯状の斑で、その部分だけ毛が生えないのが特徴です。多くは数センチ以内ですが、大きいものもあります。
なぜ毛が生えないかというと、その場所では毛をつくる組織が正常に育っておらず、代わりに皮脂腺の組織が増えているからです。ですから「あとから生えてくる」ことは期待できません。
年齢によって見た目が変わります
| 時期 | 見た目 | 理由 |
|---|---|---|
| 乳幼児期 | 平たく、薄い黄色〜肌色。毛が生えない | この時期は皮脂腺がまだ働いておらず、目立ちにくい |
| 学童期 | ほぼ変わらない。髪が伸びると目立つことがある | 周囲の毛が伸びるぶん、無毛の部分が分かりやすくなる |
| 思春期 | 厚みが出て、表面がイボ状にゴツゴツしてくる | ホルモンの影響で皮脂腺が発達するため |
| 成人期以降 | そのまま経過するが、まれに二次的な腫瘍ができることがある | 多くは良性の腫瘍。悪性のものはまれと考えられている |
治療 — 取るかどうか、いつ取るか
脂腺母斑を治す薬はなく、取るとすれば手術になります。皮膚を切り取って縫い合わせる方法が基本です。レーザーで削る方法は、組織が残らず、深い部分の脂腺母斑を取りきれないため、根本的な対処にはなりません。
時期については、次の考え方で相談します。
- 思春期前(就学前〜小学生)に取る — 皮膚が柔らかく伸びやすいため縫いやすく、厚くなる前なので傷が小さく済みます。一方で、年齢によっては全身麻酔が必要になります
- 局所麻酔に耐えられる年齢まで待つ — 中学生以降であれば局所麻酔で行えることが多く、体への負担は小さくなります。ただし厚みが出ている分、切る範囲は大きくなります
- 取らずに経過を見る — 小さく、目立たず、変化がない場合は選択肢になります。この場合は、変化が出たときに気づけるよう、定期的に診てもらうことが前提です
「今すぐ取らないと危ない」という病気ではありません。ただし、思春期以降に厚くなってからでは手術の規模が大きくなりがちで、頭皮は伸びにくいため、範囲が広いと一度で閉じられないこともあります。だからこそ、取ると決めているなら早めの時期のほうが有利です、という説明になります。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 髪はあとから生えてきますか? | 生えてきません | その部分では毛をつくる組織そのものが育っていないためです |
| 放置すると必ずがんになりますか? | なりません。二次的な腫瘍ができることがある、という話で、多くは良性です | 不安を煽る説明が広まりやすい病気ですが、確率としてはまれです。ただし変化には気づける状態にしておきます |
| 普通にシャンプーしていい? | 構いません | 刺激で悪化する病気ではないためです。ただし爪を立ててこすらないでください |
| 手術の傷は目立ちますか? | 頭皮の場合、髪で隠れることが多いです | ただし縫った線の上には毛が生えないため、細い線が残ります。範囲が広いほど線は長くなります |
| 何科にかかればいいですか? | 皮膚科、または形成外科です | 診断は皮膚科で可能で、手術の規模や年齢によって適した科を相談します(関連記事: 皮膚科と形成外科の違い) |
受診の目安
- 受診を — 生まれつき頭や顔に、毛の生えない黄色っぽい斑がある(まず何かを確かめてください)
- 受診を — 手術を考えており、時期を相談したい
- 受診を — 経過を見ていたが、髪が伸びて目立つようになった
- 早めの受診を — 思春期以降に厚みが出て、表面がゴツゴツしてきた
- 早めの受診を — 一部だけ急に盛り上がってきた、色が変わってきた
- 早めの受診を — ただれて出血する、かさぶたが治らない
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
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参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-22)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン(確認日: 2026-09-22)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

