「口内炎がずっと治らなくて歯医者さんに行ったけれど、原因がわからなかった」「体にできた水ぶくれがすぐ破れて、ただれが広がっていく」。天疱瘡は、最初は口内炎や湿疹と思われて見過ごされやすい病気です。まれな病気ですが、知っておくと早く気づけます。
天疱瘡とは(仕組み)
皮膚の表面の層(表皮)は、細胞どうしが「デスモグレイン」というたんぱく質の留め具でしっかりつながっています。天疱瘡は、自分の体がこの留め具を攻撃する抗体(自己抗体)を作ってしまう病気です。留め具が外れると細胞どうしがはがれ、表皮の中に水ぶくれができます。
水ぶくれの屋根になる皮膚がとても薄いため、すぐに破れてただれ(びらん)になるのが特徴です。人にうつる病気ではありません。国の指定難病の一つで、中高年に多いとされていますが、若い方にも起こります。
主なタイプは次の2つです。
- 尋常性(じんじょうせい)天疱瘡 — 口の中のただれから始まることが多いタイプ。のちに皮膚にも水ぶくれが広がることがあります
- 落葉状(らくようじょう)天疱瘡 — 口の中にはできにくく、頭・顔・胸・背中に、うろこ状のかさぶたやただれが出るタイプ
症状と見分け方
高齢の方に多い水ぶくれの病気として「水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)」があり、名前が似ていますが、水ぶくれのでき方が違います。
| 病気 | 水ぶくれ | 口の中 | 見分けのポイント |
|---|---|---|---|
| 天疱瘡 | 薄くて破れやすく、ただれが目立つ | 尋常性ではただれが長く続く | こすると健康に見える皮膚までずれることがある |
| 水疱性類天疱瘡 | ぱんぱんに張った破れにくい水ぶくれ。強いかゆみ | できにくい | 高齢の方に多い(関連記事: 水疱性類天疱瘡) |
| ふつうの口内炎(アフタ) | — | 丸い小さな潰瘍。1〜2週間で治る | 皮膚に水ぶくれは出ない |
| ヘルペス | 小さな水ぶくれが集まる | 唇・口のまわり | ピリピリ感のあとに出て、1〜2週間で治る |
診断は、皮膚の一部を取って調べる検査(皮膚生検)と、血液で自己抗体を測る検査を組み合わせて行います。見た目だけでは決めず、検査で確かめる病気です。
治療
治療の基本は、ステロイドの飲み薬で自己抗体による攻撃を抑えることです。最初はある程度の量で症状を落ち着かせ、ただれが治ってきたら、様子を見ながら少しずつ量を減らしていきます。
ステロイドだけで抑えにくい場合や、減らすと悪化する場合には、免疫抑制薬、免疫グロブリン大量療法(点滴)、血液中の抗体を取り除く血漿交換療法、抗体製剤などを組み合わせます。症状が広い場合は、入院で治療を始めることが多い病気です。
長く薬を使うため、骨がもろくなる・血糖が上がる・感染症にかかりやすくなるといった副作用への対策も一緒に行います。自己判断で薬を減らしたりやめたりすると、急に悪化することがあるため、必ず主治医と相談しながら減らします。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 家族にうつりますか? | うつりません | 自分の免疫が起こす病気で、細菌やウイルスの感染ではないためです |
| 一生薬を飲み続けるのですか? | 症状が落ち着けば、薬をかなり少ない量まで減らせる方が多いです | 治療で抗体の働きが弱まれば、少ない量で安定を保てることがあるためです。中にはやめられる方もいます |
| 口が痛くて食べられません | やわらかく、刺激の少ない食事にしてください | 辛いもの・熱いもの・かたいものはただれを傷つけ、痛みを強めるためです。痛みを和らげるうがい薬なども相談できます |
| 水ぶくれは潰していいですか? | 自分では潰さないでください | ただれが広がり、細菌が入りやすくなるためです。処置は医療機関で行います |
受診の目安
- 受診を — 口内炎・口の中のただれが2週間以上治らない、くり返し広がる
- 早めの受診を — 皮膚に破れやすい水ぶくれやただれが次々にできる
- 早めの受診を — 頭・顔・胸・背中に、かさぶたとただれがなかなか治らない
- すぐ受診を — ただれが広い範囲に広がる、熱が出る、痛みで食事や水分がとれない(夜間で迷うときは #7119)
口の中の症状は歯科や耳鼻咽喉科で最初に相談されることも多いですが、皮膚にも水ぶくれやただれがある場合は皮膚科に相談してください。あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しており、専門的な検査・入院治療が必要な場合は、連携する医療機関へご紹介します。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
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参考情報
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン(確認日: 2026-09-24)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(確認日: 2026-09-24)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

