「保湿剤とステロイドを両方もらったけれど、どっちが先?」「続けて塗っていいの?少し時間をあけるべき?」「どのくらいの量を塗ればいいか分からない」。診察室で本当によく聞かれる質問です。順番そのものより、それぞれを「どこに」「どれだけ」塗るかの方が、治りに大きく影響します。
2つの薬の役割の違い(なぜ順番が気になるのか)
保湿剤とステロイド外用薬は、役割も、塗る範囲も違う薬です。
- 保湿剤 — 皮膚の表面にうるおいの膜をつくり、乾燥から守る「バリアの補修役」。乾燥している場所全体に、広く塗ります
- ステロイド外用薬 — 皮膚の中で起きている炎症(赤み・かゆみ)を抑える「火消し役」。湿疹がある場所にだけ塗ります
順番が気になるのは、「あとから塗った薬が、先に塗った薬を広げたり薄めたりしないか」という心配からです。実際には、どちらが先でも薬の効き目に大きな差は出にくいとされています。ただし、塗る範囲の違いを考えると、実用上は保湿剤を先にした方が失敗しにくくなります。
おすすめの順番とその理由
基本は「保湿剤を広く → ステロイドを湿疹部に」です。理由は3つあります。
- ステロイドを健康な皮膚に広げない — ステロイドを先に塗ってから保湿剤を全身に伸ばすと、手や動きでステロイドが湿疹のない場所、特に顔や首など皮膚の薄い場所にまで広がりやすくなります
- 塗り忘れが減る — 「全身に保湿 → 気になる場所にステロイド」の流れは、毎日の手順として覚えやすいです
- 保湿剤で肌がなめらかになり、ステロイドをムラなく伸ばしやすい
| 順番 | よい点 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 保湿剤が先(おすすめ) | ステロイドが健康な皮膚に広がりにくい。手順が覚えやすい | 保湿剤をたっぷり塗りすぎると、ステロイドがすべって伸ばしにくいことがある |
| ステロイドが先 | 湿疹部に確実に薬を届けたいときに向く | そのあと保湿剤を塗るときは、湿疹部の上を強くこすって広げないようにする |
なお、医師がどちらかの順番を指定している場合は、その理由(薬の種類や部位)があります。指示に従ってください。
間隔はあけなくていい?
長い時間をあける必要はありません。先に塗ったものが肌になじんだら、続けて重ねて大丈夫です。時間をあけすぎると、そのあいだに服を着たり寝てしまったりして、2つ目を塗り忘れる原因になります。お風呂上がりは皮膚がうるおっていて薬がなじみやすいので、体をふいたら早めに塗るのがおすすめです。
保湿だけでいい肌と、ステロイドが要る肌の見分け方
「どこにステロイドを塗ればいいか分からない」という方は、次の目安で分けてください。
| 皮膚の状態 | 塗るもの |
|---|---|
| カサカサ・粉をふいているが、赤みやかゆみはない | 保湿剤だけ |
| 赤み・かゆみがある、ブツブツしている | 保湿剤 + ステロイド |
| じくじく・かき壊しがある | ステロイドが中心(塗り方は医師の指示で) |
| 赤みが引いて、かゆみも落ち着いた | 保湿剤は続ける。ステロイドは医師と相談して減らす |
見た目で分かりにくいときは、「触ってザラザラ・ゴワゴワしている」「かゆくて無意識にかいている」場所も、炎症が残っているサインです(関連記事: ステロイドの正しい使い方)。
量の目安(FTU)と実際の塗り方
塗る量の目安にはFTU(フィンガーチップユニット)という考え方があります。大人の人差し指の先から第一関節まで、チューブから出した量(約0.5g)が、大人の手のひら2枚分の広さに塗る量です。
ただし、これは口の太い25gチューブで出した場合の話です。実際には、チューブの口の太さで出てくる量はかなり変わります。5gなどの小さいチューブは口が細いため、同じ長さを出しても量は少なめになります。ですから、目安はあくまで目安として、塗ったあとに皮膚が少しテカッと光り、ティッシュをのせると軽くくっつく程度を目指してください。足りないと感じたら、追加で塗って大丈夫です。ローションタイプは、1円玉くらいの大きさが手のひら2枚分の目安です。
- すりこまない — 手のひらで薬をのせ、やさしく広げます。強くこすると刺激になり、かゆみが増すことがあります
- 保湿剤は「乾燥しているところ全部」に — 湿疹のまわりだけでなく、カサカサしている範囲全体に塗ります(関連記事: 保湿剤の使い分け)
- 軟膏・クリーム・ローションで塗り心地が違う — 季節や部位で使いやすいものを選べます(関連記事: 軟膏とクリームの違い)
最初から混ぜて処方されることもある
医療機関によっては、保湿剤とステロイドをあらかじめ混ぜた薬を処方することがあります。1回で塗れるので手間が減り、塗り忘れを防げるのが利点です。一方で、薬の組み合わせによっては、混ぜることで効き方や薬の安定性が変わるものもあります。処方された薬を自分で混ぜ合わせるのはやめましょう。混ぜて使いたい場合は、医師や薬剤師に相談してください。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 湿疹が治ったら、保湿もやめていい? | 保湿は続けてください | 乾燥が湿疹のぶり返しのきっかけになるからです。ステロイドを減らしても、保湿は土台として続けます |
| 顔も同じ順番で塗る? | 基本は同じです。ただし顔用に弱い薬が出ていることが多いので、体の薬を顔に使わないでください | 顔の皮膚は薄く、薬が吸収されやすいためです |
| 朝と夜、どちらも塗るべき? | 処方どおりの回数を守ってください。保湿剤は乾燥が気になれば回数を増やして大丈夫です | ステロイドは回数と期間が治療計画の一部です。保湿剤は多めでも問題になりにくい薬です |
| 塗ったあと、すぐに服を着ていい? | 肌になじんでベタつきが落ち着いたら着て大丈夫です | すぐに着ると、薬が服に移ってしまうことがあります |
受診の目安
- 受診を — 処方どおりに塗っても、1〜2週間たって赤み・かゆみが良くならない
- 受診を — 薬を塗ると、しみる・赤みが増すなど、薬そのものが合わない感じがある
- 受診を — 湿疹の範囲が広がってきた、塗る量が足りなくなった
- 早めの受診を — じくじくして黄色いかさぶたがつく、熱をもって腫れる(細菌感染の可能性)
- 相談を — ステロイドをいつまで塗るか、どう減らすか分からない
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A アトピー性皮膚炎(確認日: 2026-09-24)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-24)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン(確認日: 2026-09-24)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

