「草刈りをした1週間後から熱が出た」「かぜだと思っていたら、胸やお腹に赤いブツブツが出てきた」「わき腹に、覚えのない黒いかさぶたがある」。このような経過のときに考えたいのがツツガムシ病です。ツツガムシというダニの仲間の幼虫に刺されて、リケッチア(ツツガムシ病オリエンチア)という細菌の仲間に感染することで起こります。茨城県を含む関東地方でも、秋から初冬にかけて報告がある病気です。
ツツガムシ病とは(どうやってうつるのか)
ツツガムシの幼虫は0.2〜0.3mmほどと非常に小さく、目で見つけることはほぼできません。土の中や草むらにいて、人が通りかかると皮膚に取り付き、数日かけて体液を吸ったあと、自然に離れていきます。そのため、皮膚に虫がくっついたまま見つかるマダニとは違い、受診したときには虫はもういないのがふつうです。
ツツガムシのうち病原体を持っているのは一部で、持っている幼虫に刺されると、5〜14日ほどの潜伏期間(うつってから症状が出るまでの期間)をへて発症します。人から人へはうつりません。
流行する時期は、地域とツツガムシの種類によって異なります。関東では秋から初冬が中心で、地域によっては春から初夏にも見られます。草刈り、畑仕事、山菜やきのこ採り、キャンプ、ハイキング、河川敷での作業や遊びなど、草むらや土に近づく活動のあとに起こりやすい病気です。
症状と見分け方
症状は、おおよそ次の順で出てきます。
- 発熱 — 38〜40℃ほどの高い熱が、寒気とともに急に出ることが多い
- 頭痛・だるさ・筋肉の痛み — かぜやインフルエンザとよく似ている
- 刺し口(黒いかさぶた) — 直径5〜10mmほどで、まわりが赤く、中央が黒いかさぶたになる。痛みやかゆみが少ないため、本人が気づいていないことがよくあります
- 発疹 — 熱が出て数日後に、胸・背中・お腹を中心に、赤い小さな斑点が出て手足に広がる。かゆみはあまりない
- リンパ節の腫れ — 刺し口に近い、わきの下や足の付け根のリンパ節が腫れて痛むことがある
刺し口は、わきの下、陰部、下着やベルトの当たる腰まわり、お腹、太ももの付け根、ひざの裏など、皮膚がやわらかく服に隠れる場所にできやすいです。熱と発疹があって心当たりがあるときは、鏡を使ったり家族に見てもらったりして探してみてください。見つからなくても、ツツガムシ病でないとは言い切れません。
| 考えられるもの | 虫は見つかるか | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| ツツガムシ病 | 見つからないのがふつう(刺した幼虫はすでに離れている) | 野外活動の1〜2週間後に、高熱・体の発疹・黒いかさぶた |
| マダニが運ぶ感染症(日本紅斑熱など) | 皮膚にマダニが付いたまま見つかることがある | 発熱・発疹・刺し口と、ツツガムシ病とよく似る。区別は医師が検査で行う(関連記事: マダニ) |
| ふつうの虫刺され | 蚊・ブユなど、刺された自覚があることが多い | かゆみ・腫れが中心で、高い熱や全身の発疹はほとんど出ない(関連記事: 虫刺され) |
| かぜ・インフルエンザ | — | 熱やだるさは似るが、黒いかさぶたや体に広がる発疹はない |
検査と治療
診断は、症状と刺し口、そして「いつ、どこで、どんな野外活動をしたか」を手がかりに行います。血液で抗体を調べる検査や、刺し口のかさぶたを使った遺伝子の検査で確かめますが、結果が出るまでに日数がかかるため、ツツガムシ病が強く疑われるときは結果を待たずに治療を始めることがよくあります。
治療は、テトラサイクリン系の抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)の飲み薬または点滴です。早く始めれば、多くの場合は数日のうちに熱が下がってきます。
注意したいのは、かぜなどでよく処方されるペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は、ツツガムシ病には効かないことです。熱が続いて受診するときは、野山や畑に入ったことを最初に伝えてください。その一言で、選ぶ薬が変わります。
治療が遅れると、肺や脳に炎症が広がったり、血液が固まりにくくなったりして、重症になることがあります。妊娠中の方や小さなお子さんでは薬の選び方が変わることがあるので、受診時に伝えてください。なお、ツツガムシ病は診断した医師が保健所へ届け出る病気(感染症法の4類感染症)です。
予防(野山・畑に入るとき)
- 肌を出さない — 長袖・長ズボンにし、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れる。首にはタオルを巻く
- 虫よけ剤を使う — ディートやイカリジン配合のものを、肌の出る部分や服の上から使う
- 地面に直接座らない・寝転ばない — 休憩のときはレジャーシートなどを敷く
- 帰ったらすぐ入浴する — 体をよく洗うことで、まだ吸い付いていない幼虫や、付いたばかりの幼虫を落とせる
- 着ていた服はすぐ洗濯する — 家の中に持ち込まないため
ツツガムシ病には予防のワクチンがありません。刺されないための工夫と、刺されたかもしれないときに早く気づくことが対策の中心になります。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 刺された覚えがないのですが、ツツガムシ病の可能性はありますか? | あります。刺された自覚がない方のほうが多いです | 幼虫が非常に小さく、刺されても痛みやかゆみがほとんどないためです。野外活動の心当たりを伝えてください |
| 家族にうつりますか? | 人から人へはうつりません | ツツガムシに刺されることでしか感染しません。ただし一緒に同じ場所で作業した家族は、同じように刺されている可能性があります |
| 黒いかさぶたは、はがしてもいいですか? | はがさずに、そのまま受診してください | 刺し口は診断のいちばんの手がかりで、検査に使うこともあるためです |
| 熱が下がったら、薬はやめていいですか? | 処方された日数は飲みきってください | 途中でやめると、熱がぶり返すことがあるためです |
| 一度かかれば、もうかかりませんか? | また、かかることがあります | 病原体にはいくつかの型があり、別の型にはかかりうるためです。毎年の予防を続けてください |
受診の目安
- すぐに受診を — 野山・畑・河川敷などに入って2週間ほどのうちに、高い熱と、体の発疹または黒いかさぶたが出た
- すぐに受診を — かぜ薬や、手元にあった抗菌薬を飲んでも熱が下がらない
- 夜間・休日で迷うとき — 救急安心センター(#7119)に電話で相談してください
- 救急車(119)を — 意識がぼんやりしている、呼吸が苦しい、けいれんがある、ぐったりして動けない
発熱が中心の病気なので、内科でも皮膚科でもかまいません。まずは早く診てもらえるところを受診してください。受診のときは、野外に出た日と場所、していた作業、熱が出た日をメモしておくと、診断がスムーズです。
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参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ダニ類による感染症(確認日: 2026-09-24)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-24)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

