「バラの手入れでとげが刺さったところが、何週間も治らない」「腕に沿ってしこりが増えてきた」「子どもの頬にできたおできが、なかなか引かない」。スポロトリコーシスは頻度の高い病気ではありませんが、日本では比較的よく知られている深い真菌症です。
スポロトリコーシスとは(仕組み)
スポロトリコーシスは、土や植物(枯れ草・木の枝・バラのとげ・わら等)にいるカビ(真菌)が、小さな傷から皮膚の深いところに入り込んで起こる感染症です。水虫のように皮膚の表面にいるカビとは違い、皮膚の奥でしこりをつくります。
- 庭仕事、農作業、園芸、林業など、土や植物に触れる機会が多い方に起こりやすい
- 子どもは顔、大人は手・腕にできやすい
- 人から人へうつることは、ほとんどありません
感染してから症状が出るまで、数週間かかることが多く、「何がきっかけだったか覚えていない」こともよくあります。
症状・見分け方
大きく2つの現れ方があります。
- リンパ管型: 最初に傷の場所に赤いしこりができ、その後リンパ管に沿って、手から肘の方向へ点々としこりが並ぶように増えていきます。大人の手・腕に多いタイプです
- 限局型(げんきょくがた): 1か所にとどまり、赤いしこりや、ジクジクした潰瘍、かさぶたのついた盛り上がりになります。子どもの顔に多いタイプです
痛みやかゆみは強くないことが多く、熱も出ないため、気づかれにくいのが特徴です。
| 病気 | 原因 | 見分けの手がかり |
|---|---|---|
| スポロトリコーシス | 土・植物のカビ | 数週間〜数か月治らない。腕に沿ってしこりが並ぶ。抗菌薬が効かない |
| せつ(おでき)・毛包炎 | 細菌 | 赤く腫れて痛む。数日〜1、2週間で膿が出て治る |
| 非結核性抗酸菌症 | 水辺の菌 | 熱帯魚の水槽や釣りのあとに似たしこりが並ぶ |
| 皮膚がん | 腫瘍 | 高齢者の顔などで、ゆっくり大きくなる |
見た目だけで区別するのは難しいため、皮膚科ではしこりの一部を取って、カビを培養する検査と顕微鏡の検査を行います。培養には数週間かかることがあります。
治療
治療は、カビ(真菌)に効く飲み薬が中心です。日本ではヨウ化カリウムやイトラコナゾールなどが使われてきました。症状が消えてからも、しばらく飲み続けて再発を防ぎます。治療期間は数か月になることが多いです。
このカビは熱に弱い性質があるため、患部を温める治療(温熱療法)を飲み薬と組み合わせることもあります。使い捨てカイロなどを使い、やけどに注意しながら行います。
どの飲み薬を選ぶかは、年齢、妊娠の有無、ほかに飲んでいる薬との飲み合わせによって変わります。イトラコナゾールは飲み合わせに注意が必要な薬が多いため、お薬手帳を必ず持参してください。
受診の目安
- 小さな傷やとげの跡が、2〜3週間たっても治らずしこりになった
- 手から腕に沿って、しこりが点々と増えてきた
- 抗菌薬や市販薬を使っても変わらない
- 子どもの顔のおできが、何週間も引かない
免疫を抑える薬を使っている方、糖尿病などで体の抵抗力が落ちている方は、広がりやすいことがあるため早めに受診してください。
予防のポイント
土や植物を扱うときは、厚手の手袋と長袖で、とげや枝による小さな傷を防ぐことが基本です。作業のあとは手をよく洗い、傷ができていたら流水で洗ってから絆創膏などで保護してください。
よくある質問
家族やペットにうつりますか?
人から人へうつることは、ほとんどありません。海外では猫からうつる例が報告されていますが、日本でうつる経路の多くは土や植物です。
治療中も庭仕事をしていいですか?
手袋をして、患部に土が触れないようにすれば構いません。新しい傷をつくらないことが、再感染を防ぐうえで大切です。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-03)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-03)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

