「おなかに赤い線が出て、毎日少しずつ伸びている」「かゆくて、線の先が移動している気がする」「旅行から帰ってきてから、足にうねうねした跡が出た」。皮膚爬行症はまれな病気ですが、特徴的な見た目と、思い当たるきっかけがあれば診断の手がかりになります。
皮膚爬行症とは(仕組み)
本来は人以外の動物に寄生する虫の幼虫が、人の体に入ってしまい、成虫になれないまま皮膚の中をさまよって移動する病気です。幼虫が通った道に沿って炎症が起こり、赤い線として見えます。
日本で知られている主なきっかけは、次の3つです。
| きっかけ | 原因となる虫 | 特徴 |
|---|---|---|
| ホタルイカの生食(内臓ごと) | 旋尾線虫の幼虫 | 食べてから2週間前後で、おなかなどに赤い線が出る。腹痛を伴うことも |
| ドジョウ・ライギョ・ヤマメなど淡水魚の生食 | 顎口虫の幼虫 | 赤い線のほか、場所を変えて出たり引いたりする腫れが出る |
| 海外(熱帯・亜熱帯)の砂浜を素足で歩く | 動物の鉤虫の幼虫 | 足やお尻など、砂に触れた場所に出る。強いかゆみ |
症状・見分け
- 幅数mmの赤い線が、曲がりくねりながら伸びる
- 線の先端が1日に数mm〜数cmずつ移動する
- かゆみが強いことが多い。線の周りが腫れることもある
似た見た目のものに、ミミズ腫れ(皮膚描記症)、かぶれ、虫刺され、帯状疱疹などがあります。線が日ごとに伸びて移動するのは皮膚爬行症の大きな特徴で、ほかの病気ではあまり見られません。線の写真を毎日同じ角度で撮っておくと、移動しているかどうかが分かり、診断に役立ちます。
治療
治療には大きく2つの方法があります。
- 幼虫を取り出す: 線の先端の少し先に幼虫がいると考えられるため、局所麻酔をしてその部分の皮膚を小さく切り取り、顕微鏡で幼虫を確認します。幼虫が取れれば、診断と治療を同時に行えます
- 駆虫薬(虫を退治する薬)の飲み薬: 幼虫の位置がはっきりしない場合などに使います。原因の虫によっては、適応外となる薬を使うことがあります
かゆみに対しては、かゆみ止めの飲み薬や塗り薬を併用します。ホタルイカによるものでは、まれに腸に幼虫がいて腸閉塞を起こすことがあるため、強い腹痛や嘔吐がある場合は内科・救急での診察が必要です。
予防
ホタルイカは、加熱するか、内臓を取り除いて食べるのが安全です。生で食べる場合は、十分に冷凍処理されたもの(マイナス30℃で4日間以上などの目安が示されています)を選んでください。ドジョウ・ライギョなどの淡水魚は、生では食べないようにします。海外のビーチでは、砂の上を素足で歩かない、直接寝転ばないことが予防になります。
受診の目安
- 赤い線が日ごとに伸びている、移動している
- 数週間以内に、ホタルイカや淡水魚を生で食べた
- 海外の砂浜に行ったあとに、足やお尻に赤い線が出た
- 強い腹痛・嘔吐がある(すぐに医療機関へ。迷うときは#7119)
診察室でよく聞かれる質問
人にうつりますか?
人から人へうつることはありません。家族が同じものを食べていた場合は、同じ症状が出ないか気をつけてください。
放っておくと治りますか?
幼虫は人の体の中では成虫になれないため、いずれ死んで症状が落ち着くこともあります。ただし、それまで数か月かかることもあり、まれに目や内臓に入り込むこともあるため、受診して治療を受けることをおすすめします。
食べたものを思い出せません
思い出せる範囲で構いません。お刺身・踊り食い・海外旅行など、生ものを食べた機会や旅行先を伝えていただくと、原因を絞る手がかりになります。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-09)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-09)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

