「くるぶしの上をぶつけた小さな傷が、2か月たっても治らない」「すねの皮膚が茶色くなって、そこに傷ができてジュクジュクしている」。脚の傷が治りにくいのには理由があります。原因に合った治療をしないと、何か月も同じ状態が続くことがあります。
下腿潰瘍とは(仕組み)
潰瘍(かいよう)とは、皮膚の表面だけでなく、その下の層まで欠けてしまった深い傷のことです。下腿(かたい)は膝から足首までを指します。
傷が治るには、血液が酸素や栄養を運び、いらなくなったものを回収する必要があります。脚は心臓からいちばん遠く、立っているとき血液が下にたまりやすい場所です。そのため血の流れに問題があると、ほかの場所より傷が治りにくくなります。
症状・見分け
原因を、診察室で多い順に並べます。
| タイプ | できやすい場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 静脈のタイプ(うっ滞性潰瘍) | くるぶしの内側の上あたり | 脚のむくみ、血管のこぶ(静脈瘤)、まわりの皮膚の茶色い色素沈着や硬さ。痛みは比較的軽い |
| 動脈のタイプ | 足の指、かかと、すねの前 | 足が冷たい、歩くとふくらはぎが痛む。傷の痛みが強く、夜に悪化することも |
| 糖尿病に関係するもの | 足の裏、指、靴が当たる場所 | 感覚がにぶく、痛みを感じにくいため気づくのが遅れやすい |
| その他(血管の炎症、皮膚の病気など) | さまざま | 急に広がる、まわりが紫色になる、傷のふちが盛り上がるなど |
立ち仕事が長い方、妊娠・出産を経験した方、脚に血管のこぶがある方は、静脈のタイプが起こりやすいとされています。むくみやかゆみ、皮膚の色の変化(うっ滞性皮膚炎)が先に出ていることも多いです(関連記事: うっ滞性皮膚炎)。
一方、足が冷たく、少し歩くとふくらはぎが痛んで休みたくなる場合は、動脈の流れが悪いことを疑います。このタイプは、次に紹介する「圧迫」をすると悪化することがあるため、自己判断で弾性ストッキングを使う前に必ず確かめる必要があります。
治療・セルフケア
治療は、傷の手当てと、原因の血の流れへの対処を組み合わせます。
- 圧迫療法(静脈のタイプ): 弾性包帯や弾性ストッキングで脚を圧迫し、下にたまった血液を心臓へ押し戻します。静脈のタイプでは治療の柱になります
- 傷の手当て: 傷を洗って清潔にし、傷の状態に合った塗り薬や被覆材(傷を覆う専用のシート)を使います。乾かしすぎず、ジュクジュクしすぎない状態を保つと治りやすくなります
- 原因の血管の治療: 静脈瘤が原因なら血管外科での治療、動脈の流れが悪い場合も血管の専門の診療科での治療を検討します
- 感染の治療: 傷のまわりが赤く腫れて熱をもつ場合は、抗菌薬を使います
家でできることは次のとおりです。
- 脚を高くして休む: 座るときや寝るときに、脚をクッションなどで心臓より少し高くすると、むくみが減ります(静脈のタイプ)
- 長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを避ける: ときどき足首を曲げ伸ばしして、ふくらはぎの筋肉で血液を押し上げます
- 傷のまわりの皮膚を保湿する: 乾燥やかゆみで掻くと、傷が広がる原因になります
- 消毒液を毎日つけ続けない: 治ろうとしている皮膚の細胞まで傷めることがあります。基本は水道水やシャワーでよく洗い流すことです
受診の目安
- すねや足の傷が2〜4週間たっても小さくならない
- 脚のむくみ、茶色い変色、血管のこぶがある場所に傷ができた
- 足が冷たい、歩くとふくらはぎが痛む
- 糖尿病があり、足に傷ができた(痛みがなくても早めに)
- 傷のまわりが赤く腫れて広がる、熱が出る(早めに)
- 傷のふちが盛り上がってくる、出血しやすい(まれに皮膚がんのことがあるため)
治らない傷は、まれに皮膚がんが隠れていることもあります。長く治らない場合は、皮膚の一部を取って調べる検査をすることがあります(関連記事: 治らない傷・ただれ)。
診察室でよく聞かれる質問
治るまでどのくらいかかりますか?
傷の大きさや原因によって大きく変わり、数週間で治る場合もあれば、数か月かかる場合もあります。静脈のタイプでは、圧迫をきちんと続けられるかどうかが治る早さを左右します。
弾性ストッキングは市販のもので大丈夫ですか?
圧迫の強さやサイズが合っていないと、効果が出なかったり、かえって皮膚を傷めたりします。また、動脈の流れが悪い方には使えないことがあります。使う前に医師に相談し、合ったものを選んでください。
治ったあと、また同じところにできますか?
血の流れの問題が残っていると、再発しやすいのがこの病気の特徴です。治ったあとも、圧迫や脚を高くする習慣を続けることで、再発を減らせます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-15)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-15)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

