「お腹の手術から1年以上たつのに、傷あとがニキビのように腫れて膿が出た」「傷から白い糸がのぞいている」。手術がうまくいかなかったのでは、と心配になる方も多いのですが、これは手術そのものの失敗ではなく、体と糸の相性の問題で起こることがあるものです。
縫合糸膿瘍とは(仕組み)
手術では、皮膚の表面だけでなく、その下の層も糸で縫い合わせます。皮膚の下に使う糸は、抜糸をせずにそのまま体の中に残すのが一般的です。時間とともに体に吸収される糸と、吸収されずに残る糸があります。
体はこの糸を「異物(体の外から入ったもの)」として認識し、まわりに小さな炎症を起こすことがあります。多くは何事もなく落ち着きますが、反応が強いと、糸のまわりに膿がたまったり(縫合糸膿瘍)、硬いしこりができたり(異物肉芽腫)します。そこに細菌がつくと、さらに赤く腫れて痛みます。
起こるのは、手術の直後とは限りません。数週間後のこともあれば、何年もたってから突然腫れることもあります。
症状・見分け
よくある経過の順に並べます。
- 傷あとの一部が赤く盛り上がる: ニキビのような小さなふくらみが、傷の線の上にできる
- 押すと痛む・膿が出る: 小さな穴があいて、膿や血の混じった液が少しずつ出てくる
- 糸が見える: 穴から白や青、黒の糸の端がのぞくことがある
- 治ったり、また腫れたりをくり返す: 糸が残っているかぎり、同じ場所がくり返し腫れることがある
| 考えられるもの | 時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 縫合糸膿瘍・異物肉芽腫 | 数週間〜数年後 | 傷の線上の一部が腫れる。膿や糸が出る。くり返す |
| 術後の傷の感染 | 手術後数日〜2週間ごろ | 傷全体が赤く腫れて熱をもつ。発熱を伴うことも |
| ケロイド・肥厚性瘢痕 | 数か月かけて | 傷あとが赤く盛り上がりかゆい。膿は出ない |
| 粉瘤 | いつでも | 傷とは関係なく、皮膚の下に袋ができる。臭いのある中身が出る |
手術から間もない時期に傷全体が赤く腫れる、熱が出るという場合は、縫合糸膿瘍ではなく傷の感染のことがあるため、早めに手術を受けた医療機関へ連絡してください。
治療・セルフケア
治療の基本は、原因になっている糸を取り除くことです。糸が見えていれば、診察室でそのまま抜き取れることが多く、数分で終わります。見えていない場合は、局所麻酔をして小さく切開し、膿を出して糸を探して取り除きます。
膿がたまって腫れが強いときは、まず切開して膿を出すだけで痛みは大きく和らぎます。細菌感染が強い場合には、抗菌薬の飲み薬や塗り薬を併用することがあります。ただし、抗菌薬だけでは糸が残るため、いったん治まっても再び腫れることがよくあります。
受診までの間は、次のことを守ってください。
- 糸を引っぱらない: 途中で切れて体の中に残ると、かえって見つけにくくなります
- 膿を強く押し出さない: 炎症が皮膚の深いところに広がることがあります
- シャワーでやさしく洗い、清潔なガーゼで覆う: 膿で下着や服が汚れるのを防げます。密閉性の高い絆創膏で長時間ふさぐと、中が蒸れて治りが悪くなることがあります
受診の目安
- 手術の傷あとが部分的に腫れる、膿が出る、糸が見える
- 同じ場所がくり返し腫れる
- 赤みが広がる、熱が出る、強く痛む(早めに)
- 手術から間もない時期に傷全体が腫れてきた(手術を受けた医療機関へ)
手術を受けた病院が遠い、すでに通院を終えているという場合は、皮膚科でも診察できます。受診の際は、いつ・どこで・何の手術を受けたかを伝えると、使われた糸の種類を推測する手がかりになります(関連記事: 抜糸の時期と抜糸後のケア)。
診察室でよく聞かれる質問
手術のやり方が悪かったのでしょうか?
多くの場合、そうではありません。糸に対する反応の出方には個人差があり、同じ手術・同じ糸でも、反応が出る方と出ない方がいます。体質による部分が大きいと考えられています。
糸を取ったら、傷が開いてしまいませんか?
糸が膿瘍を作るころには、まわりの組織はすでにしっかりくっついています。糸を取り除いても、傷が大きく開くことは基本的にありません。
ほかの場所の糸も同じようになりますか?
必ずそうなるわけではありません。ただ、一度反応が出た場所の近くに残っている別の糸が、あとから同じように腫れることはあります。同じ傷の別の場所が腫れてきたら、また相談してください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-15)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-15)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

