「通勤で自転車に乗るようになってから、お尻にできものができる」「ロングライドの後、股がこすれてヒリヒリする」「座る所にずっとしこりがある」。ロードバイクやクロスバイクの愛好家だけでなく、毎日の通勤・通学で長く乗る方にも多い悩みです。場所が場所だけに相談しにくく、放っておかれがちですが、原因を見分ければ対策ははっきりしています。
サドルでトラブルが起きる仕組み
自転車に乗っているとき、体重の多くはお尻の骨(坐骨)と、股の間の狭い範囲にかかります。そこにペダルをこぐ動きが加わり、同じ場所が押されながらこすれ続けます。
- こすれ…皮膚の表面がこすれて、赤み・ヒリヒリ・皮むけになります。
- 蒸れ…汗がこもって皮膚がふやけると、こすれに弱くなります。
- 毛穴の炎症…こすれで毛穴に小さな傷ができ、皮膚の常在菌(黄色ブドウ球菌など)が入り込むと、毛穴を中心に赤く腫れたブツブツ(毛包炎)や、大きく腫れて痛むおでき(せつ)になります。
- 圧迫の積み重ね…長期間同じ場所が押されると、皮膚の下が硬くなり、しこりのように触れることがあります。
また、もともとあった粉瘤(皮膚の下にできた袋に角質がたまったもの)が、サドルの圧迫で破れて炎症を起こし、急に腫れて痛むこともあります。
症状と見分け方
| 考えられるもの | 見た目・特徴 | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| 擦れ | 赤み、ヒリヒリ、皮むけ、ただれ | 乗った後に強くなり、休むとおさまる |
| 毛包炎 | 毛穴に一致した赤いブツブツ、先に小さな膿 | いくつか散らばって出る。数日で治ることが多い |
| おでき(せつ) | 大きく赤く腫れ、ズキズキ痛む。中心に膿 | 毛包炎より深く、熱をもつ |
| 粉瘤 | 皮膚の下に丸いしこり。中心に黒い点があることも | 同じ場所にずっとある。炎症を起こすと急に腫れる |
| 圧迫による硬いしこり | 痛みの少ない平たいしこり | サドルの当たる所に一致し、ゆっくりできる |
女性で、腟の入口の横が大きく腫れて痛む場合は、婦人科の病気(バルトリン腺の炎症など)のことがあるので、婦人科で相談してください。お尻の割れ目の上のほうがくり返し腫れる場合は、毛巣洞という別の病気のことがあります。
乗り続けるための対策
- サドルの高さ・角度・形を見直す。高すぎると腰が左右に揺れてこすれが増え、先端が上を向いていると股の前側が圧迫されます。自転車店で合わせてもらうのもよい方法です。
- パッド付きのウェアを正しく履く。サイクリング用のパッド付きパンツの多くは、下着を履かずに直接履く前提で作られています。下着を重ねると縫い目がこすれの原因になるためです。
- 乗った後は早く着替えてシャワー。汗で湿ったままの時間を短くすると、菌が増えにくくなります。
- ウェアは毎回洗う。汗と皮脂が残ったままだと、毛穴の炎症の原因になります。
- 擦れ防止のクリームを使う。こすれる場所に塗ると、摩擦を減らせます。
- 痛いときは休む。ただれやおできがあるうちに乗り続けると、悪化して治るまで長くかかります。
皮膚科での治療
擦れやただれには、皮膚を保護する塗り薬を使います。毛包炎には抗菌薬の塗り薬、おできが大きい場合は抗菌薬の飲み薬を使い、膿がたまっていれば小さく切って出す処置を行います。
粉瘤は、炎症が起きている間は膿を出して炎症を落ち着かせ、その後に袋ごと取り除く手術を検討します。袋が残ると同じ場所で再発しやすいためです。サドルが当たる場所の粉瘤は炎症をくり返しやすいので、腫れていない時期に相談するのがおすすめです。
診察室でよく聞かれる質問
Q. 自分で潰して膿を出してもいいですか?
A. 潰さないでください。指で押すと膿や細菌が皮膚の奥に広がり、腫れが大きくなったり、跡が残ったりします。粉瘤の場合は袋が破れて炎症がひどくなることもあります。
Q. 治るまで自転車に乗らないほうがいいですか?
A. 痛みが強いおできや、ただれがあるうちは休むのが早く治る近道です。軽い毛包炎なら、ウェアと乗った後のケアを見直しながら乗ってもかまいません。
Q. ロングライドの前に、気をつけることはありますか?
A. 新しいサドルやウェアは、いきなり長距離で使わず、短い距離で慣らしてからにしましょう。擦れ防止のクリームを出発前に塗っておくのも有効です。
受診の目安
- しこりが大きくなってきた、同じ場所に何度もできる
- 赤く腫れて熱をもち、ズキズキ痛む
- 膿やにおいのある液が出る
- 熱が出てきた、腫れがどんどん広がる
- ただれが1週間以上治らない
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「粉瘤」(確認日: 2026-10-21)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-21)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

