「点滴の途中で腕がパンパンに腫れて、針を刺し直した」「退院してから、点滴の跡が赤く硬くなって痛い」「点滴の跡が紫色になって、なかなか消えない」。入院や救急外来、外来の点滴の後に、こうした相談を受けることがあります。点滴漏れの仕組みと、家でできる手当て、受診したほうがよいサインを整理します。
点滴漏れとは(仕組み)
点滴は、細い管を静脈に入れて薬や水分を送ります。体を動かしたときや、血管がもろいときに、管の先が血管の外に出たり、血管の壁から液がしみ出したりすると、液が皮膚の下にたまります。これが点滴漏れ(血管外漏出)です。
漏れた液の量と種類によって、皮膚への影響が大きく変わります。
- ふつうの点滴液(生理食塩水やブドウ糖液など)…腫れても数日で吸収され、多くは跡を残さずに治ります。
- 皮膚を傷めやすい薬…一部の抗がん剤、濃い電解質液、血管を縮める薬、造影剤などは、漏れると皮膚や皮下に炎症を起こし、まれに潰瘍(皮膚がえぐれた傷)になることがあります。
症状と見分け方
点滴の後に腕に起きる変化は、点滴漏れのほかにもいくつかあります。
| 考えられるもの | 見た目・特徴 | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| 内出血 | 針の跡の周りの紫〜青いあざ | 痛みは少ない。1〜2週間で黄色くなって消える |
| 点滴漏れ(ふつうの液) | 針の周りがむくんだように腫れる、冷たく感じる | 点滴中〜直後に起き、数日で引く |
| 点滴漏れ(皮膚を傷めやすい薬) | 強い痛み、赤み、水ぶくれ、皮膚の色が黒っぽく変わる | 数日たってから悪くなることもある |
| 静脈炎 | 血管に沿って赤い線、硬いすじ、痛み | 点滴の数日後に出ることが多い |
| テープかぶれ | テープの形の赤み、かゆみ | 固定テープの貼っていた所だけに出る |
家でできる手当て
- 腕を心臓より少し高くする。クッションの上に腕をのせると、たまった液が戻りやすくなり、腫れが早く引きます。
- 冷やすか温めるかは、漏れた薬で変わる。一般的な点滴液の腫れや痛みには冷やすことが多いですが、薬によっては温めるほうがよいものもあります。自己判断が難しいため、点滴を受けた医療機関で指示された方法に従ってください。
- もんだり、こすったりしない。漏れた液や血が周りに広がり、かえって長引きます。
- 水ぶくれは破らない。清潔なガーゼで保護します。
- 腫れ・赤み・痛みの経過を写真に残す。毎日同じ角度で撮っておくと、悪くなっているかどうかを受診時に伝えやすくなります。
皮膚科での治療
ふつうの点滴液の漏れや内出血であれば、特別な治療をせずに経過を見ることがほとんどです。赤みや痛みが強い場合は、炎症を抑える塗り薬(ステロイド外用薬)を使うことがあります。
皮膚を傷めやすい薬が漏れた場合は、点滴を行った診療科が薬に応じた処置を行います。その後、水ぶくれや皮膚がえぐれた傷が残った場合は、皮膚科で傷の治療を行います。傷が深い場合は、治るまでに時間がかかることがあります。
診察室でよく聞かれる質問
Q. 腫れが引いた後、硬いしこりが残っています。
A. 点滴の後の静脈炎や、皮膚の下の炎症の名残で、硬いすじやしこりが数週間残ることがあります。痛みがなく、少しずつ小さくなっているなら様子を見てかまいません。赤みや痛みが強くなる、熱をもつ場合は受診してください。
Q. 次に点滴を受けるとき、気をつけることはありますか?
A. 点滴中に刺した所が痛む、腫れる、冷たく感じるときは、我慢せずにすぐ看護師に伝えてください。早く気づくほど、漏れる量が少なくて済みます。以前に漏れたことがあれば、そのことも伝えておくと安心です。
Q. 跡が茶色く残ってしまいました。
A. 内出血や炎症の後の色素沈着で、数か月かけてゆっくり薄くなることが多いです。こすらない、日焼けしないことが大切です。
受診の目安
- 抗がん剤などの点滴中・点滴後に、刺した所が痛む・腫れる・赤い(点滴を受けた医療機関へすぐ連絡)
- 水ぶくれができた、皮膚が黒っぽく変わった
- 腫れ・赤み・痛みが日ごとに強くなる
- 熱をもって腫れ、発熱がある(感染の可能性があり、早めに受診)
- 手や指がしびれる、指が動かしにくい、腕がパンパンに張って強く痛む(すぐに受診。夜間・休日で迷う場合は #7119 に相談)
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-23)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-23)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

