お尻のできもの・しこりの正体は?粉瘤・おでき・化膿性汗腺炎・毛巣洞・痔瘻の見分け方

お尻のできもの・しこりの正体は?粉瘤・おでき・化膿性汗腺炎・毛巣洞・痔瘻の見分け方
DERMATOLOGY GUIDE | DERMATOLOGIC SURGERY
更新日: 2026年10月2日執筆: あび皮膚科クリニック編集部監修: アマデアル亜琵医師(日本専門医機構認定 皮膚科専門医)医師紹介

お尻の丸みの部分にある皮下のしこりなら粉瘤、毛穴を中心に急に赤く腫れたならおでき、お尻の割れ目の真ん中なら毛巣洞、何度も痛いしこりや膿を繰り返すなら化膿性汗腺炎などを考えます。そして、肛門のすぐ近くにできて、腫れては膿が出ることを繰り返している場合は、痔瘻(じろう・あな痔)の可能性もあります。「お尻にできた」というだけで病名を決めず、どこにあるか・1個か複数か・同じ場所で繰り返しているかを見ることが大切です。

「お尻(おしり)にしこりがあるけれど、場所が場所だけに病院へ行きづらい」——こうして受診をためらっている方は少なくありません。しかし、お尻は粉瘤やおできだけでなく、毛巣洞、化膿性汗腺炎などさまざまな病気が起こる場所です。さらに肛門に近くなれば、皮膚の病気だけでなく肛門周囲膿瘍や痔瘻なども鑑別に入ります。見分けるときに特に重要なのが、「しこりがある位置」と「繰り返しているかどうか」です。

目次

お尻のできもの・しこりで考える主な病気

病気 できやすい場所 見分ける手がかり 治療の方向
粉瘤(アテローム) お尻の丸みの部分など、どこにでも 皮膚の下に丸いしこり。中央に黒い点があることも。以前から存在する 根本治療は袋ごとの摘出
せつ・皮膚膿瘍(おでき) 毛のある場所 急に赤く腫れて痛む。中心に膿がたまることがある 状態により抗菌薬、切開・排膿など
化膿性汗腺炎 お尻、鼠径部、わきなど 痛いしこりや膿瘍を何度も繰り返す。複数できる、傷あとや皮下のトンネルが残ることも 重症度に応じて外用・内服・生物学的製剤・手術など
毛巣洞 お尻の割れ目の上部、尾骨周囲 割れ目の真ん中に小さな穴。腫れて膿が出ることを繰り返す 繰り返す場合は手術を検討
肛門周囲膿瘍・痔瘻 肛門のすぐ近く 強い痛み・腫れ・発熱、あるいは同じ穴から膿や分泌物が繰り返し出る 肛門科・大腸肛門外科などで評価
脂肪腫などの皮下腫瘍 お尻を含む皮下 やわらかく、ゆっくり大きくなることが多い。通常は赤くない 大きさや症状に応じて経過観察または摘出

見た目だけでは区別が難しいものも少なくありません。

1. 以前からある丸いしこりなら「粉瘤」

お尻のしこりでよくみられるものの一つが粉瘤(アテローム)です。皮膚の下に袋状の構造ができ、そこに角質などがたまって徐々に大きくなります。特徴としては、

  • 皮膚の下に丸いしこりがある
  • 数か月〜数年かけて徐々に大きくなる
  • 中央に黒い点のような開口部があることがある
  • 押すと臭い内容物が出ることがある

などがあります。粉瘤自体は良性のできものですが、炎症を起こすと突然赤く腫れ、かなり強い痛みが出ることがあります。特にお尻は座るたびに圧迫や摩擦を受けるため、炎症を起こしてから気づく方もいます。

関連記事: 粉瘤(アテローム)とは?原因・症状・治療法を解説

炎症を起こして赤く腫れている場合はこちらも参考にしてください。関連記事: 粉瘤が腫れた・痛いときはどうする?炎症性粉瘤の対処法と受診の目安

2. 急に赤く腫れて痛くなったなら「おでき」

数日前までは何もなかったのに、「急に赤いできものができた」「どんどん痛くなってきた」「真ん中に膿がたまっている」という場合には、毛包炎から炎症が深くなったせつ(いわゆるおでき)や皮膚膿瘍などを考えます。粉瘤との違いは、炎症が起こる前からしこりが存在していたかどうかが一つの手がかりです。

以前から触れるしこりがあって急に腫れたのであれば炎症性粉瘤、何もなかった場所に急に赤い腫れが出たのであれば、おできの可能性が高くなります。ただし、実際には炎症が強い状態だけを見て完全に区別するのが難しいこともあります。

関連記事: 粉瘤とおでき(せつ・毛包炎)の違いは?前からしこりがあったかで見分ける方法

3. 「おでき」を何度も繰り返すなら化膿性汗腺炎

ここはぜひ知っておいてほしいポイントです。お尻に痛いおできができ、

  • 治ったと思ったらまた腫れる
  • 同じ場所やその周囲に何度もできる
  • 1個ではなく複数できる
  • 膿が出る穴がいくつもある
  • 硬い傷あとが残っている
  • わきや脚のつけ根にも似たできものがある

という場合は、単なる「おでき」ではなく化膿性汗腺炎の可能性があります。化膿性汗腺炎は名前に「汗腺」と入っていますが、単純な汗腺の感染症ではありません。毛包を中心として炎症を繰り返す慢性炎症性疾患です。

日本皮膚科学会の診療の手引きでも、臀部・鼠径部・腋窩・会陰などを好発部位とし、痛みを伴う結節や膿瘍、瘻孔、瘢痕を繰り返すことが特徴とされています。診断の目安の一つとして、半年間に2回以上炎症を繰り返すことも挙げられています。

炎症が進むと皮膚の下にトンネル状の通り道(瘻孔)ができ、別の場所から膿が出たり、硬い傷あとが残ったりすることがあります。毎回「おでき」として切開して膿を出すだけでは十分ではないこともあるため、繰り返していること自体を医師に伝えることが非常に重要です。

関連記事: ワキ・お尻・脚のつけ根に何度もおできができる|化膿性汗腺炎という病気の可能性

4. お尻の割れ目の真ん中なら「毛巣洞」

お尻の割れ目、特に尾骨付近の正中(ちょうど真ん中)に腫れや小さな穴がある場合には、毛巣洞(もうそうどう)を考えます。皮膚の中に毛が入り込み、それをきっかけとして炎症を起こす病気です。

  • お尻の割れ目の真ん中にできる
  • 小さな穴が開いている
  • 膿や血が出る
  • 一度切開して治っても、また同じ場所が腫れる

といった経過が典型的です。粉瘤と似ていますが、「お尻の割れ目の真ん中」という位置が大きな手がかりになります。

関連記事: おしりの割れ目が腫れて痛い|毛巣洞(毛巣洞症)と粉瘤の違い・切開だけでは繰り返す理由

5. 肛門のすぐ近くのおできは「痔瘻」のことがある

注意したいのが、肛門のすぐ近くにある“おでき”です。肛門周囲に細菌感染が起こって膿がたまったものを肛門周囲膿瘍といいます。典型的には、

  • 肛門周囲が急に腫れる
  • ズキズキと強く痛む
  • 座っていても痛い
  • 発熱する

などの症状が現れます。肛門周囲膿瘍から膿が排出されたあと、肛門の内側と皮膚をつなぐ管が残ることがあります。これが痔瘻(じろう・あな痔)です。

痔瘻になると、皮膚側にできた出口(二次口)が、肛門の近くに何度もできるおできのように見えることがあります。

  • 同じ場所が何度も腫れる
  • 腫れたあと膿が出ると楽になる
  • 小さな穴から膿や分泌物が出続ける
  • 一度治ったように見えて、また腫れる

という経過なら、粉瘤やおできだけでなく痔瘻も考える必要があります。痔瘻は一般的に自然治癒しにくく、根治には手術が必要となることがあります。肛門のすぐ近くにある病変や、肛門とのつながりが疑われる場合には、肛門科・大腸肛門外科での診察が必要になることがあります。

肛門の縁に突然できた「痛い血豆」なら別の病気も

肛門の出口そのものに突然、

  • 丸いしこりができた
  • 強く痛む
  • 紫〜暗赤色の血豆のように見える

という場合には、血栓性外痔核の可能性もあります。これは皮膚のおできとは異なり、肛門周囲の静脈に血栓ができて腫れたものです。日本大腸肛門病学会でも、突然の痛みと腫脹で発症することが特徴とされています。「肛門の近くにしこりがある=全部痔瘻」というわけではないため、位置や経過を合わせて判断します。

見分ける最大のヒントは「場所」

お尻のできものを自分で観察するときは、見た目以上に位置が参考になります。

位置 特に考える病気
お尻の丸みの部分 粉瘤、おでき、化膿性汗腺炎、脂肪腫など
お尻の割れ目の真ん中・尾骨付近 毛巣洞を特に疑います
お尻〜鼠径部に何か所も繰り返す 化膿性汗腺炎を考えます
肛門のすぐ近くで腫れ・排膿を繰り返す 肛門周囲膿瘍や痔瘻を考えます
肛門の縁に突然できた痛い血豆状のしこり 血栓性外痔核などを考えます

数cm場所が違うだけでも、考える病気は大きく変わります。

自分で潰すのはおすすめしません

「膿がたまっているなら、出してしまえば治るのでは?」と思うかもしれませんが、自分で針を刺したり強く絞ったりするのはおすすめしません。粉瘤であれば中身だけ出しても袋が残りますし、化膿性汗腺炎、毛巣洞、痔瘻では、そもそも皮膚の奥に原因となる構造が残っています。一度膿が出て小さくなったからといって、病気そのものが治ったとは限りません。

こんな場合は早めに受診してください

  • 赤く腫れて痛みが強くなっている
  • 急速に大きくなっている
  • 発熱を伴う
  • 膿がたまっている
  • 同じ場所で何度も腫れる
  • 複数のおできが繰り返しできる
  • お尻の割れ目の真ん中から膿が出る
  • 肛門のすぐ近くから膿や分泌物が繰り返し出る
  • 数週間以上しこりが消えない
  • 出血を繰り返す

特に肛門周囲の強い痛みや腫れに発熱を伴う場合は、肛門周囲膿瘍の可能性があるため、早めの診察が必要です。肛門周囲膿瘍では切開・排膿が必要となることがあります。

お尻の診察を恥ずかしがらなくて大丈夫です

お尻のできものは「恥ずかしいから」と受診を先延ばしにされやすい場所です。しかし、皮膚科や肛門科では日常的に診察する部位です。診察では病変を確認できればよいため、必要以上に広い範囲を見せる必要はありません。特にお尻のできものは位置そのものが診断の大きな手がかりになるため、症状がある場所を一度きちんと確認することが重要です。

よくある質問

Q. お尻を診てもらうとき、下半身を全部脱ぐ必要がありますか?

基本的には、病変を確認できる範囲だけを出せば診察できます。診察方法は医療機関によって異なりますが、必要以上に露出する必要はありません。恥ずかしさから受診を先延ばしにして症状が悪化してしまう方もいるため、気にしすぎずご相談ください。

Q. 膿が自然に出て、痛みもなくなりました。もう病院に行かなくてもいいですか?

一度だけのおできで、そのまま完全に治ることもあります。ただし、粉瘤では袋、毛巣洞では洞穴、痔瘻では瘻管、化膿性汗腺炎では皮下の炎症や瘻孔が残っていることがあります。同じ場所で以前にも腫れたことがある場合は、痛みがなくなったあとでも一度診断をつけておくことをおすすめします。

Q. 毎年同じところに「おでき」ができます。体質でしょうか?

単純なおできとは限りません。特に同じ部位で何度も繰り返す場合には、粉瘤、化膿性汗腺炎、毛巣洞、痔瘻など、繰り返す原因そのものが残っている病気を考えます。受診するときには、「今日は腫れている」ということだけでなく、過去に何回くらい同じ場所が腫れたかも伝えてください。

Q. お尻のできものは皮膚科と肛門科、どちらに行けばいいですか?

お尻の皮膚や皮下にあるしこりであれば、まず皮膚科でよいことが多いです。一方、肛門のすぐ近くにある、肛門周囲から膿が出る、排便に関連した症状がある、肛門周囲膿瘍や痔瘻が疑われる場合には、肛門科・大腸肛門外科が適しています。自分でどちらかわからない場合には、まず皮膚科で相談しても構いません。必要に応じて適切な診療科へつなぎます。

Q. スマートフォンで撮った写真だけでも診断できますか?

写真は、赤みや腫れが強かったときの状態を確認するうえで非常に参考になります。特に「普段は治っているけれど、数か月おきに腫れる」という場合には、腫れていたときの写真を残しておくと診断の助けになります。ただし、粉瘤の硬さや皮下の広がり、痔瘻や毛巣洞の位置関係などは写真だけでは判断できないことがあるため、最終的には実際の診察が必要です。

※特定の医療機関を指すものではありません。

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参考情報

本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

アマデアル亜琵医師(日本専門医機構認定 皮膚科専門医)

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