陰部のかゆみやできものの多くは、湿疹・かぶれ・水虫・毛包炎など、皮膚科で日常的に診る病気です。ただし、治らない、大きくなっていく、繰り返す、といった場合は別の病気が隠れていることがあります。「陰部だから性病だろう」と決めつける必要もなく、皮膚そのものに症状がある場合はまず皮膚科で相談できます。
陰部のかゆみ=性病とは限りません
デリケートゾーンに症状が出ると、「性病では?」と心配される方が少なくありません。もちろん、性器ヘルペスや尖圭コンジローマ、梅毒などの性感染症が原因になることはあります。一方で実際には、
- 湿疹
- かぶれ
- 股部白癬
- カンジダ症
- 乾癬
- 硬化性苔癬
など、性感染症とは関係のない皮膚病も数多くあります。見た目だけでは区別しにくいものもあるため、「とりあえず市販のかゆみ止めを塗っておく」と自己判断するより、一度原因を確認してから治療することが大切です。
陰部がかゆいときに考える主な病気
| 病気 | 特徴 |
|---|---|
| かぶれ(接触皮膚炎) | 下着、ナプキン、洗浄剤、ウェットシート、外用薬などが原因。触れる範囲に赤み・かゆみが出やすい |
| 股部白癬(いんきんたむし) | 太ももの付け根から広がる赤み。周囲に鱗屑を伴うことがある |
| カンジダ症 | 赤みとかゆみ。女性では白いおりものを伴うこともある |
| 湿疹・慢性単純性苔癬 | かゆくて掻くことを繰り返し、皮膚が厚くゴワゴワしてくる |
| 陰部乾癬 | 境界の比較的はっきりした赤み。陰部では通常の乾癬ほど鱗屑が目立たないこともある |
| 硬化性苔癬 | 白っぽい皮膚変化、かゆみ、痛み、亀裂などがみられる |
| 疥癬・ケジラミ症 | 強いかゆみ。家族やパートナーにも症状がある場合は要注意 |
| 乳房外パジェット病(EMPD) | 湿疹に似た赤み・ただれ・かゆみが長期間続く皮膚がんの一種 |
接触皮膚炎では、皮膚を清潔にしようとして石けんやボディソープで何度も洗うことで、かえって悪化していることがあります。また、治療のために塗っていた外用薬そのものにかぶれることもあります。
「ずっと湿疹だと思っていた」が乳房外パジェット病のことも
陰部の治りにくい湿疹で、特に知っておいてほしいのが乳房外パジェット病です。乳房外パジェット病は皮膚がんの一種で、外陰部、肛門周囲、わきなどに発生します。特に外陰部に多く、男性では陰嚢周囲、女性では大陰唇周囲などにみられます。
初期には、
- 赤い
- かゆい
- ジクジクする
- 皮がむける
- 一部が白っぽくなる
など、湿疹やいんきんたむしによく似た見た目になることがあります。そのため、「湿疹だと思って外用薬を塗っているけれど、同じ場所が何週間〜何か月も治らない」という場合は、診断を一度見直すことが大切です。
特に、
- 左右どちらか一方に偏っている
- 赤みやただれが同じ場所に残り続ける
- 徐々に範囲が広がっている
- 白っぽい部分が混じっている
- 出血、びらん、硬い部分やしこりがある
場合には、皮膚科で確認してください。乳房外パジェット病が疑われる場合には、皮膚の一部を採取する皮膚生検を行って診断します。
もちろん、「治らない陰部湿疹=乳房外パジェット病」というわけではありません。頻度としては湿疹や感染症などのほうがはるかに多いのですが、重要なのは、治らないものを漫然と「湿疹」として扱い続けないことです。
陰部のできもの・しこりで考える病気
| 病気 | 特徴 |
|---|---|
| 毛包炎・せつ(おでき) | 毛穴を中心に赤く腫れる。剃毛や摩擦後にも起こる |
| 粉瘤(アテローム) | 皮膚の下に袋状のできものができる。炎症を起こすと赤く腫れて痛む |
| 化膿性汗腺炎 | 鼠径部・陰部・お尻などに痛いしこりや膿瘍を何度も繰り返す |
| フォアダイス | 白〜黄色の小さな粒。正常な脂腺であり治療不要のことが多い |
| 尖圭コンジローマ | 表面がザラザラしたイボが徐々に増える |
| 伝染性軟属腫(水いぼ) | 中央が少しくぼんだ、光沢のある小さな丘疹 |
| 性器ヘルペス | 痛みを伴う小さな水ぶくれやただれ |
| バルトリン腺嚢胞・膿瘍 | 女性の膣入口付近の片側が腫れる。感染すると強く痛む |
| 梅毒 | 痛みの少ない潰瘍やしこりなど、さまざまな皮疹をきたすことがある |
「おできが何度もできる」なら化膿性汗腺炎かも
鼠径部や陰部に「おでき」「粉瘤」が何度もできる方では、化膿性汗腺炎を考える必要があります。化膿性汗腺炎は、
- 鼠径部
- 外陰部
- お尻・肛門周囲
- わき
- 乳房の下
など、皮膚同士が擦れやすい場所に起こりやすい慢性炎症性皮膚疾患です。痛みを伴うしこりや膿瘍が繰り返され、進行すると皮膚の下にトンネル状の通り道ができたり、硬い傷あとが残ったりすることがあります。
病名に「汗腺炎」とついていますが、単純に汗腺へ細菌が感染して起こる病気ではなく、現在では毛包を起点とする慢性炎症性疾患と考えられています。
重要なのは、同じ場所やその周辺に、痛いおできが何度もできるという点です。そのたびに抗菌薬を飲んだり切開したりしているけれど再発する場合は、一度化膿性汗腺炎ではないか確認してみてください。
白くなってかゆい場合は「硬化性苔癬」にも注意
外陰部の皮膚が白っぽくなり、かゆみや痛みが続く場合には、硬化性苔癬(硬化性萎縮性苔癬)という病気があります。特に女性の外陰部に多く、
- 強いかゆみ
- 白色の皮膚
- 亀裂
- びらん
- 痛み
- 慢性化した場合の瘢痕化や変形
などをきたすことがあります。単なる乾燥や湿疹として長期間治療されていることもあるため、白っぽい皮膚変化がはっきりしている場合は、一度皮膚科で診断を受けることをおすすめします。
性感染症にもさまざまな見た目があります
陰部に症状を起こす性感染症としては、
- 尖圭コンジローマ
- 性器ヘルペス
- 梅毒
- ケジラミ症
などがあります。また、伝染性軟属腫や疥癬なども、性的接触をきっかけに陰部へ生じることがあります。「かゆいからカンジダ」「イボだからコンジローマ」など、症状だけで自己診断するのは難しい場合があります。
特に、
- 新しい性交渉のあとに皮疹が出た
- 潰瘍や水ぶくれができた
- イボが増えている
- パートナーにも症状がある
場合などは、早めに診察を受けましょう。
皮膚がん・前がん病変にも注意
陰部にも皮膚がんができることがあります。乳房外パジェット病のほか、
- Bowen病
- 有棘細胞癌
- 悪性黒色腫(メラノーマ)
などが生じることがあります。これらは湿疹、イボ、色素斑、ただれなどに見えることもあり、見た目だけでは判断できない場合があります。特に、
- 治らない
- 徐々に大きくなる
- 出血する
- 潰瘍になる
- 硬くなる
- 色や形が変化してきた
といった変化がある場合は、一度確認することが大切です。
何科に行けばいい?
皮膚そのものに症状があるなら、皮膚科で診察できます。かゆみ、赤み、ただれ、イボ、しこり、できもの、膿などは皮膚科の診療範囲です。一方で、
- おりもの・膣内の症状 → 婦人科
- 排尿痛・尿道からの分泌物・精巣などの症状 → 泌尿器科
- 皮膚の赤み・かゆみ・できもの → 皮膚科
を一つの目安にしてください。診察後、必要に応じて婦人科や泌尿器科をご紹介することもあります。
こんな症状は一度皮膚科へ
次のような場合は、自己判断で外用を続けるより、一度診察を受けることをおすすめします。
- 同じ場所の赤み・湿疹が数週間以上治らない
- 処方された外用薬を使っても繰り返す
- 赤みやただれが徐々に広がっている
- 白っぽい部分や硬い部分が混じってきた
- 出血・びらん・潰瘍が続く
- 痛いしこりや膿が同じ場所に何度もできる
- イボが増えてきた
- 水ぶくれや強い痛みがある
- 色や形が変化するできものがある
- 性感染症の可能性が心配
特に、ずっと湿疹だと思って薬を塗っているのに治らないという場合は、一度診断そのものを見直すことが大切です。
よくある質問
Q. 陰部がかゆいのですが、性病でしょうか?
性病とは限りません。かぶれ、湿疹、股部白癬、カンジダ症、乾癬など、性感染症とは関係のない病気も数多くあります。皮疹の形や場所、経過、必要に応じた検査から判断します。
Q. ステロイドを塗っても治りません。乳房外パジェット病でしょうか?
ステロイドで治らないからといって、乳房外パジェット病とは限りません。白癬などの感染症、接触皮膚炎、硬化性苔癬などでも症状が長引くことがあります。ただし、同じ場所の赤みやただれが長期間残っている場合には、乳房外パジェット病を含めて診断を見直す必要があります。必要に応じて皮膚生検を行います。
Q. 陰部におできが何度もできます。体質でしょうか?
毛包炎や粉瘤を繰り返すこともありますが、鼠径部・陰部・お尻などに痛いしこりや膿瘍を何度も繰り返す場合には、化膿性汗腺炎の可能性があります。「同じ場所に何度もできる」「傷あとが増えてきた」「しこり同士がつながっている」といった場合は、一度ご相談ください。
Q. 陰部の診察が恥ずかしいのですが、皮膚科に行っても大丈夫ですか?
もちろん大丈夫です。陰部の湿疹、感染症、イボ、粉瘤、化膿性汗腺炎、皮膚腫瘍などは、皮膚科で日常的に診察する病気です。症状がある必要な範囲を確認しながら診察しますので、恥ずかしさから長期間我慢する必要はありません。
Q. 市販のかゆみ止めを使ってもいいですか?
軽い湿疹などで一時的に改善することはありますが、陰部では自己判断で長期間使い続けることはおすすめしません。例えば、白癬にステロイドを塗ることで症状が分かりにくくなったり、悪化したりすることがあります。また、「湿疹」と思っていたものが別の病気であることもあります。治らない場合は薬を次々に変えるより、まず診断を確認したほうが近道です。
※特定の医療機関を指すものではありません。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 ガイドライン・指針一覧(皮膚がん診療ガイドライン第4版 乳房外パジェット病2025/硬化性萎縮性苔癬/化膿性汗腺炎の診療の手引き)(確認日: 2026-10-05)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(性感染症・かぶれ)(確認日: 2026-10-05)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

