「耳たぶにコリコリしたしこりがある」「耳の上のほうが急に腫れた」「ピアスの穴のまわりに硬いできものができた」など、できる場所や症状によって考える病気が変わります。特に、赤く腫れて強く痛む、膿が出る、急に大きくなる、出血を繰り返す場合は、自己判断で潰したりせず皮膚科で確認しましょう。
耳のできもの・しこりで考えられる主な病気
| 病名 | よくみられる場所・特徴 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 粉瘤(アテローム) | 耳たぶ・耳の後ろなど。皮膚の下にコリコリしたしこりができ、中央に小さな穴がみえることも | 根治には袋を含めた摘出手術 |
| 炎症性粉瘤 | 急に赤く腫れ、痛くなる。膿や臭いのある内容物が出ることも | 炎症の程度に応じて抗菌薬・切開排膿・後日の摘出など |
| ケロイド・肥厚性瘢痕 | ピアス穴などの傷あとが硬く盛り上がる | ステロイド外用・テープ・注射、圧迫、手術などを組み合わせる |
| ピアス周囲の感染・肉芽 | 赤い、腫れる、痛い、じゅくじゅくする | 感染の有無を確認して治療 |
| 金属アレルギー | ピアス周囲が赤くかゆい。湿疹を繰り返す | 原因となる金属を避け、必要に応じてパッチテスト |
| 耳介偽嚢腫(偽性耳介嚢腫) | 耳の上部など軟骨部分がぷくっと腫れる。比較的痛みが少ないことも | 穿刺、圧迫、局所治療など |
| 耳瘻孔の感染 | 耳の前上方に小さな穴があり、その周囲が腫れる | 感染治療。繰り返す場合は瘻孔の摘出を検討 |
| 耳介軟骨膜炎 | 耳の軟骨部分が赤く強く腫れて痛む。軟骨ピアス後など | 早期の抗菌薬治療などが必要。膿瘍では切開排膿することも |
| 耳輪結節性軟骨皮膚炎 | 耳のふちに小さく硬い、押すと痛いできもの。寝ると痛むことも | 圧迫を避ける、外用・局所治療・手術など |
| 稗粒腫(はいりゅうしゅ) | 1〜2mm程度の白い粒 | 必ずしも治療不要。気になる場合は摘出 |
| その他の皮膚腫瘍 | 徐々に大きくなる、出血する、治らないかさぶたなど | ダーモスコピーや生検・切除で診断 |
同じ「耳のできもの」でも、原因によって治療は大きく異なります。
耳たぶにできるコリコリしたしこり|粉瘤が代表的
耳たぶや耳の後ろにできる皮膚の下のしこりでよくみられるのが、粉瘤(アテローム)です。粉瘤は、皮膚の内側に袋状の構造ができ、その中に角質などがたまっていく病気です。
- 皮膚の下に丸いしこりを触れる
- 少しずつ大きくなる
- 中央に黒い点や小さな穴がある
- 押すと臭いのある内容物が出ることがある
といった特徴があります。炎症を起こすと、突然赤く腫れて強く痛むことがあります。
粉瘤は中身を押し出しただけでは袋が残るため、再び大きくなることがあります。根本的に治療する場合は、袋を含めて摘出する手術を行います。
粉瘤は自分で潰さない
耳の粉瘤は触りやすいため、自分で押したり針を刺したりしてしまう方もいます。しかし、強く圧迫すると炎症が悪化したり、細菌感染を起こしたりすることがあります。また、繰り返し炎症を起こすと周囲との癒着が強くなり、手術がやや複雑になることもあります。
ピアスの穴にできた硬いしこり|ケロイド・肥厚性瘢痕
ピアスを開けたあとに耳たぶが硬く盛り上がってきた場合は、肥厚性瘢痕やケロイドが考えられます。肥厚性瘢痕は基本的に元の傷の範囲内で盛り上がりますが、ケロイドは元のピアス穴や傷の範囲を越えて徐々に広がっていくのが特徴です。
ケロイドでは、
- 硬く盛り上がる
- 赤みがある
- 徐々に大きくなる
- かゆい
- 押すと痛い
などの症状がみられます。治療には、ステロイドのテープや局所注射、圧迫療法、内服薬、手術などがあります。ケロイドは単純に切除しただけでは再発することがあるため、病変の大きさや状態に応じて治療方法を選ぶことが重要です。
軟骨ピアスが赤く腫れて痛い|耳介軟骨膜炎に注意
耳たぶではなく、耳の上部など軟骨を貫くピアスの周囲が赤く腫れて強く痛む場合は注意が必要です。単なるピアス穴の炎症ではなく、耳介軟骨膜炎を起こしていることがあります。
耳の軟骨は血流が比較的乏しいため、感染が悪化すると治療に時間がかかることがあります。膿瘍を形成すると、抗菌薬だけでなく切開して膿を出す処置が必要になることもあります。重症化すると軟骨が障害され、耳の形が変形してしまうこともあるため、
- 軟骨ピアス周囲が急に腫れた
- 強くズキズキ痛む
- 耳全体が赤くなってきた
- 膿が出る
といった場合は早めの受診をおすすめします。「とりあえず家にある抗菌薬を塗って様子を見る」と長期間放置するのはおすすめできません。
耳の上の軟骨部分がぷくっと腫れた|耳介偽嚢腫
耳の軟骨部分が突然ぷくっと膨らんでいる場合には、耳介偽嚢腫(偽性耳介嚢腫)という病気があります。柔道やラグビーなどの接触のあるスポーツをしている方にできやすい、いわゆる餃子耳とはこのことです。
耳介の軟骨内に液体がたまり、表面から見ると滑らかに腫れてみえます。粉瘤のような皮膚の袋ではなく、病態が異なります。比較的痛みが少ないこともあり、患者さん自身では「何かしこりができた」と感じることがあります。
治療では、たまった液体を抜く処置や圧迫、局所治療などが行われますが、単純に液体を抜くだけでは再びたまることがあります。
耳の前に小さな穴があり、そこが腫れた|耳瘻孔
生まれつき、耳の前あたりに針穴のような小さな穴がある方がいます。これは耳前瘻孔(じろうこう)と呼ばれる先天的な構造です。普段は何の症状もないことも多いのですが、内部で感染すると、
- 赤く腫れる
- 痛くなる
- 膿が出る
- 同じ場所で何度も腫れる
といった症状が出ることがあります。感染を繰り返す場合には、炎症が落ち着いたあとに瘻孔そのものを摘出することがあります。
「粉瘤を何度取っても同じ場所が腫れる」と思っていたら、実は耳前瘻孔だったというケースもあるため、耳の前上方に小さな穴がないかは診断上重要なポイントです。
耳のふちに小さく硬い、痛いできもの|耳輪結節性軟骨皮膚炎
耳のふち、特に耳輪や対耳輪に、数mm程度の硬いできものがあり、触るとかなり痛いという場合には、耳輪結節性軟骨皮膚炎の可能性があります。寝るときにいつも同じ耳を下にしているなど、長時間圧迫されることが発症に関係すると考えられています。
典型的には、
- 耳のふちに小さな硬い結節がある
- 押すと痛い
- 横向きで寝ると痛い
- 表面にかさぶたができる
などの症状があります。一見すると皮膚腫瘍と似ることもあるため、必要に応じて切除や病理検査を行います。
耳の後ろのしこりは、すべて粉瘤とは限らない
耳の後ろは粉瘤ができやすい部位ですが、しこりのすべてが粉瘤というわけではありません。たとえば、
- リンパ節の腫れ
- 脂肪腫
- 皮膚の良性腫瘍
- 炎症や感染による腫れ
などでも、耳の後ろにしこりを触れることがあります。特に、風邪や頭皮・耳周囲の炎症に伴ってリンパ節が一時的に腫れることもあります。皮膚と一緒に動くのか、皮膚のさらに奥にあるのかなども診断の手がかりになります。
「耳のできもの=良性」とは限らない
耳のできものの多くは良性ですが、まれに皮膚がんなどが隠れていることもあります。特に、
- 徐々に大きくなる
- 何度も出血する
- かさぶたになっても治らない
- 潰瘍になっている
- 左右非対称で形がいびつ
- 数か月以上治らない
といった場合は、一度皮膚科で確認しておくことをおすすめします。見た目だけで診断が難しい場合には、ダーモスコピーや皮膚生検、切除後の病理検査などを行います。
耳のできものは何科を受診する?
耳たぶや耳介、耳の後ろなど、耳の皮膚表面のできものやしこりは皮膚科で診察できます。粉瘤、皮膚腫瘍、ケロイド、ピアストラブルなどは皮膚科の代表的な診療領域です。
一方、
- 耳の穴の奥が痛い
- 耳だれがある
- 聞こえにくい
- 耳のかなり深い部分にしこりがある
といった場合には、外耳・中耳や耳下腺などの病気も考えるため、耳鼻咽喉科が適していることがあります。
こんな耳のできものは早めに受診してください
- 赤く腫れて強く痛む
- 膿が出ている
- 急に大きくなった
- ピアスの周囲が大きく腫れている
- 何度も同じ場所が腫れる
- 出血や潰瘍を繰り返す
- 数か月たっても治らない
- ピアス穴のしこりが徐々に大きくなっている
特に軟骨部分の強い腫れや痛みは、耳介軟骨膜炎などを考えて早めに診察することが重要です。
よくある質問
Q. 耳のしこりは自分で潰してもいいですか?
おすすめしません。粉瘤の場合、中身を出して一時的に小さくなっても袋が残っていれば再発します。また、無理に潰すことで炎症や感染を起こし、かえって大きく腫れることがあります。針を刺したり、強く絞ったりせず診断をつけてから治療するのがおすすめです。
Q. ピアスの穴が腫れたら、すぐピアスを外したほうがいいですか?
必ずしも一律ではありません。軽いかぶれ、細菌感染、肉芽、ケロイド、軟骨膜炎などで対応が異なります。腫れている状態で無理にピアスを外したり動かしたりすると、かえって傷つけることもあります。特に軟骨ピアスが強く腫れている場合は、自己判断で処置せず早めに受診してください。
Q. 耳のできものを手術すると耳の形は変わりますか?
小さな粉瘤や皮膚腫瘍であれば、耳の形をできるだけ保ちながら切除できることが多いです。ただし、大きな腫瘍やケロイド、軟骨まで及ぶ病変では、切除範囲や再建方法を考える必要があります。耳は人から見えやすい場所なので、病変を取ることだけでなく、傷あとや耳の形まで考えて治療方法を選ぶことが重要です。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「アテローム(粉瘤)」(確認日: 2026-10-01)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ケロイド」(確認日: 2026-10-01)
- DermNet: Chondrodermatitis nodularis(確認日: 2026-10-01)
- StatPearls: Pinna Perichondritis
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

