見分けるうえで特に重要なのは、次の点です。
- 白ニキビ・黒ニキビなどの面皰(コメド)があるか
- ブツブツの大きさがそろっているか
- かゆみがあるか
- ニキビ治療をしても改善しないか
ニキビもマラセチア毛包炎も、上背部や背中の中央付近に多くみられるため、分布だけで両者をはっきり見分けることはできません。マラセチア毛包炎では肩や上腕まで広がることもありますが、場所だけで診断するのは困難です。
そのため実際の鑑別では、分布よりも、「同じような大きさのブツブツがたくさんある+かゆい+面皰がない」という組み合わせの方が、マラセチア毛包炎を疑う重要なヒントになります。
「背中ニキビ」がなかなか治らないのはなぜ?
「顔のニキビは治ったのに背中だけ残っている」「ニキビの薬を塗っているのに、背中のブツブツだけ変わらない」「夏になると背中に同じような赤いブツブツが一気に増える」——このような場合、そもそもニキビではない病気が混ざっている可能性があります。その代表が、マラセチア毛包炎です。
ニキビもマラセチア毛包炎も毛穴を中心として赤いブツブツや膿疱ができるため、一見すると非常によく似ています。しかし、病気の仕組みは異なります。
ニキビ(尋常性ざ瘡)
ニキビは、毛穴の詰まり、皮脂、アクネ菌、炎症などが複雑に関係して起こります。最初は白ニキビや黒ニキビなどの面皰ができ、そこから赤いニキビや膿をもったニキビへ進むことがあります。
マラセチア毛包炎
マラセチアは、健康な人の皮膚にも存在する真菌(カビの仲間)です。何らかの条件で毛包内のマラセチアが増えると、毛穴を中心とした炎症が起こり、小さな赤い丘疹や膿疱が多数出現します。
汗をかきやすい環境、高温多湿、皮脂、皮膚の蒸れ、密閉などが発症に関係すると考えられています。抗菌薬やステロイドの使用、免疫抑制などが誘因になることもあります。
ニキビとマラセチア毛包炎の違い
| 特徴 | ニキビ(尋常性ざ瘡) | マラセチア毛包炎 |
|---|---|---|
| 病変 | 面皰、丘疹、膿疱、結節などが混在 | 小さな丘疹・膿疱が中心 |
| 大きさ | 大小さまざま | 比較的そろっている |
| 白ニキビ・黒ニキビ | ある | 基本的にない |
| かゆみ | 通常それほど強くない | よくみられる |
| 痛み | 炎症が強いと痛む | 痛みよりかゆみが目立つことが多い |
| 背中での分布 | 上背部、特に中央付近にも多い | 上背部、背中中央、肩などに多い |
| 肩・上腕 | 出ることがある | 出ることがある |
| ニキビ治療 | 改善が期待できる | 改善しないことがある |
| 抗真菌治療 | 通常行わない | 有効なことがある |
一つひとつの特徴だけで判断するのではなく、複数の特徴を組み合わせて考えることが重要です。
一番わかりやすい違いは「ブツブツのそろい方」
ニキビでは、白ニキビ・黒ニキビ・小さな赤ニキビ・膿をもったニキビ・大きく腫れたニキビなどが混在します。そのため、全体として見ると一つひとつの大きさや形がバラバラです。
一方、マラセチア毛包炎では、数mm程度の毛穴に一致した丘疹や膿疱が多数生じます。つまり、ほぼ同じ大きさの赤いブツブツが、びっしり並んでいるという見え方は、マラセチア毛包炎を疑うポイントです。
白ニキビ・黒ニキビがあるかを見る
もう一つ非常に重要なのが、面皰(コメド)の有無です。ニキビでは毛穴の出口が詰まるため、白ニキビ(閉鎖面皰)・黒ニキビ(開放面皰)がみられます。赤いニキビだけに見えても、その周囲をよく見ると小さな面皰が混在していることがあります。
これに対して、マラセチア毛包炎には基本的に面皰がありません。面皰がないことはニキビとマラセチア毛包炎を鑑別する重要なポイントとして挙げられます。
「かゆい背中ニキビ」はマラセチア毛包炎?
かゆみも重要な手がかりです。ニキビでも炎症に伴って多少の違和感を感じることはありますが、強いかゆみは典型的ではありません。
一方、マラセチア毛包炎ではかゆみを伴うことが多く、「汗をかくとかゆくなる」「服の上から背中をかいてしまう」「ブツブツが増える時期とかゆくなる時期が一致する」といった訴えがみられます。
ただし、「かゆい=必ずマラセチア」というわけではありません。湿疹や接触皮膚炎など、背中がかゆくなる病気は他にもあるため、あくまで鑑別材料の一つです。
ニキビとマラセチア毛包炎は「背中のどこ」にできる?
背中のブツブツを診るときは、皮疹の形だけでなく、どのあたりに多く分布しているかも参考になります。
ニキビは上背部〜背中の中央に多い
体幹部のニキビについてまとめた海外の総説では、病変は体幹の正中線付近に集まりやすいことが報告されています。部位としては上背部に多く、胸部、下背部、肩や上肢などにもみられます。そのため、背骨の周囲から肩甲骨の間にかけてニキビが目立つという分布は珍しくありません。
マラセチア毛包炎も上背部にできやすい
マラセチア毛包炎も、背中では上背部を中心にみられることが多い病気です。特に、上背部・胸部・肩・上腕・頸部・顔など、皮脂の多い部位に生じやすいことが知られています。背中では、肩甲骨の間など中央寄りにも多くみられます。一方で、肩や上腕まで広く皮疹がみられることもあります。報告によって対象や割合には差がありますが、マラセチア毛包炎では背部は代表的な好発部位の一つです。
分布だけでは両者を見分けにくい
このように、ニキビもマラセチア毛包炎も上背部や背中の中央付近に生じやすく、分布にはかなり重なりがあります。そのため、「背中のどの場所にあるか」だけで両者を判別するのは困難です。
分布は診断の参考にはなりますが、それ以上に、面皰があるか・ブツブツの大きさや形がそろっているか・かゆみがあるか・ニキビ治療を続けたときにどのように反応したか、といった特徴を合わせて判断することが重要です。
特に、上背部に同じような大きさの小さな丘疹や膿疱が多数あり、かゆみを伴い、面皰がほとんどみられない場合には、マラセチア毛包炎を考える手がかりになります。
実際にはニキビとマラセチア毛包炎が混ざることもある
ニキビとマラセチア毛包炎は「どちらか一方しか起こらない」病気ではありません。同じ人に両方が存在することがあります。
たとえば、白ニキビや黒ニキビがある・大小さまざまな赤ニキビもある・その間に同じ大きさのかゆい丘疹が多数ある、という場合です。そのため、「ニキビの薬で一部は治ったけれど、小さいブツブツだけ残る」という経過も診断のヒントになります。
「ニキビの薬が効かない」ことも重要な手がかり
マラセチア毛包炎が見逃されるきっかけとして多いのが、ニキビとして長期間治療されているケースです。「ニキビ治療をしているのに治らない」という経過そのものが、診断を見直す理由になります。
ただし、数日薬を使って改善しないからといって、すぐに診断が間違っているとは限りません。ニキビ治療には一定の期間が必要です。重要なのは、適切な期間治療しても、面皰がほとんどない・均一なブツブツだけ残る・かゆい・発汗時に悪化する、といった特徴が続いている場合です。
皮膚科ではどうやって診断する?
典型的な場合には、皮疹の形・面皰の有無・かゆみ・分布・これまでの治療歴から臨床的に診断できることがあります。判断が難しい場合には、毛包の内容物などを採取して顕微鏡で確認することもあります。
ただし、マラセチアはそもそも正常な皮膚にも存在する常在菌です。そのため、「マラセチアが見つかった=マラセチア毛包炎」と単純に判断するのではなく、皮疹の形や症状と合わせて診断する必要があります。
背中ニキビの治療
ニキビの場合は、毛穴の詰まりと炎症を治療します。日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、アダパレンや過酸化ベンゾイル(BPO)などを中心とした治療が推奨されています。炎症の程度によっては抗菌薬などを組み合わせます。
背中のニキビは範囲が広いため、薬を一つひとつの赤いニキビだけに塗るのではなく、ニキビのできやすい範囲を含めて治療することが重要になる場合があります。また、背中は手が届きにくいため、顔のニキビ以上に「薬をきちんと塗り続けられるか」が治療効果に影響します。
マラセチア毛包炎の治療
マラセチア毛包炎では、抗真菌薬による治療を行います。症状の範囲や重症度などに応じて外用薬や内服薬が検討されます。特に広範囲の場合や治療抵抗性の場合には、内服薬を使った全身治療が検討されることもあります。
ただし、抗真菌薬なら何でもよいわけではなく、日本国内での適応や患者さんの状態も考慮する必要があります。自己判断で「背中ニキビはカビかもしれない」と抗真菌薬を塗り続けるより、まず診断を確認することをおすすめします。
背中のブツブツを悪化させないために
ニキビとマラセチア毛包炎では治療そのものは異なりますが、日常生活では共通して気をつけたいことがあります。
汗をかいた服を長時間着続けない
汗そのものがすべての原因ではありませんが、高温多湿や蒸れはマラセチア毛包炎の誘因になります。運動後などは、可能であれば早めに着替えましょう。
背中をゴシゴシ洗わない
「毛穴の汚れを落とそう」とナイロンタオルなどで強くこする必要はありません。炎症のある皮膚を繰り返し刺激すると、赤みや色素沈着が悪化することがあります。
摩擦・密閉を減らす
ぴったりした衣類、スポーツ用品、リュックなどが長時間接触する環境では、汗・摩擦・密閉が重なります。特定の場所だけ繰り返し悪化する場合には、その部分に何が触れているかも確認してみましょう。
背中のブツブツはニキビとマラセチアだけではない
背中にできる毛穴周囲のブツブツには、ほかにも、汗疹・毛孔性苔癬・接触皮膚炎・薬剤によるざ瘡様発疹・好酸球性膿疱性毛包炎などがあります。一つだけ大きく腫れて痛む場合には、粉瘤など別の病気も考えます。
特に、「典型的なニキビ治療をしているのに全く改善しない」場合には、薬を増やす前に一度診断を見直すことが大切です。
こんなときは皮膚科にご相談ください
- 背中のブツブツが長期間続いている
- 同じ大きさの赤いブツブツが大量にある
- かゆみが強い
- ニキビ治療を続けても改善しない
- 夏や運動後に急激に悪化する
- 膿疱が広範囲にある
- 大きな赤いしこりや痛みがある
- 凹み・盛り上がり・色素沈着などの跡が増えてきた
背中は自分では観察しにくい部位です。受診前に、スマートフォンで背中全体の写真を撮っておくと、以前との変化や分布がわかりやすくなります。
よくある質問
Q1. 背中ニキビやマラセチア毛包炎は家族などにうつりますか?
通常は、人から人へ「感染する病気」と考える必要はありません。アクネ菌もマラセチアも、健康な人の皮膚にも存在する微生物です。誰かから菌をもらったから発症するというより、皮脂、毛穴の状態、発汗、蒸れなど、その人の皮膚環境が関係します。そのため、背中にブツブツがあるからといって、タオルや寝具を完全に分ける必要がある病気ではありません。
Q2. 顔にはニキビがないのに、背中だけニキビができることはありますか?
あります。体幹の皮膚は顔とは皮脂量、角層の厚さ、摩擦や衣類による密閉などの環境が異なります。そのため、顔がきれいでも背中や胸だけにニキビができることがあります。逆に、顔にはほとんど症状がなく、背中の小さな丘疹だけが目立つ場合には、マラセチア毛包炎など別の病気も鑑別します。
Q3. マラセチア毛包炎は一度治ればもう再発しませんか?
再発することがあります。マラセチアは皮膚から完全に排除する菌ではなく、正常な皮膚にも存在しています。そのため、発汗・高温多湿・密閉などの条件が再びそろうと、症状が再燃する場合があります。繰り返す人では維持治療が検討される場合があります。
Q4. 背中のブツブツを自分でつぶしてもいいですか?
おすすめしません。背中は自分では見えにくく、無理につぶすと必要以上に皮膚を傷つけやすい部位です。炎症後色素沈着だけでなく、深い炎症では凹んだ瘢痕や盛り上がった瘢痕が残ることもあります。「膿があるから出した方が早く治る」とは限らないため、繰り返しつぶすのは避けましょう。
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参考情報
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- 体幹部ざ瘡・マラセチア毛包炎に関する海外総説(PubMed Central 収載文献)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状の診断・治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は皮膚科の受診をご検討ください。

