帯状疱疹ワクチンは、発症と長く残る神経痛のリスクを下げる予防接種です。2種類あり、効果・回数・副反応・費用が異なります。主な接種対象は50歳以上ですが、公費で受けられる年齢や条件は別に定められています。
「帯状疱疹になった家族が、長く痛みに苦しんでいた」「ワクチンが2種類あって、どちらを選べばよいか分からない」「自分は助成の対象になるのか知りたい」。
帯状疱疹ワクチンを検討するときは、予防効果だけでなく、持病や治療中の薬、接種回数、費用も確認することが大切です。この記事では、2種類の違いと、接種前に知っておきたいポイントを整理します。
なぜ50歳から接種が勧められるのか
帯状疱疹は、過去に感染した水ぼうそうのウイルスが神経節に潜み、後に再び活動することで起こります。加齢や、病気・治療による免疫機能の低下などが発症に関わります。
典型的には、体の左右どちらかに痛みと赤み、水ぶくれが現れます。問題になるのは、皮膚の症状が治った後にも痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」です。痛みが数か月から年単位で残り、睡眠や日常生活に影響することがあります。
帯状疱疹は50歳以降に発症リスクが高くなるため、この年代から予防接種を検討します。ただし、50歳になった瞬間に免疫機能が急に低下するわけではありません。
また、組換えワクチンのシングリックスは、病気や治療などにより帯状疱疹の発症リスクが高い18歳以上の方も接種対象です。「若いから対象外」「50歳未満でも誰でも受けられる」という、どちらの理解も正確ではありません。
2種類のワクチンの違い
日本で帯状疱疹の予防に使用するワクチンには、生ワクチンと組換えワクチンがあります。
シングリックスは自治体などで「不活化ワクチン」と案内されることもありますが、正確にはウイルスの一部のたんぱく質を利用した組換えワクチンで、生きたウイルスは含まれていません。
| 項目 | 生ワクチン | 組換えワクチン |
|---|---|---|
| 製品名 | 乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」 | シングリックス |
| 帯状疱疹予防としての接種対象 | 50歳以上 | 50歳以上、または発症リスクが高い18歳以上 |
| 接種回数 | 1回 | 2回 |
| 接種方法 | 皮下注射 | 筋肉内注射 |
| 接種間隔 | 1回で完了 | 通常は2か月間隔。遅れる場合も、原則として1回目から6か月後までに2回目を接種 |
| 免疫機能が低下している場合 | 病気や治療によって免疫が低下している方には接種できない | 接種を検討できるが、病気や治療に応じて時期を調整する |
| 主な副反応 | 接種部位の赤み、腫れ、かゆみ、痛みなど | 接種部位の痛み、赤み、腫れ、発熱、筋肉痛、倦怠感など |
| 自費接種の費用の目安 | 1回8,000〜10,000円程度 | 1回20,000〜25,000円程度。2回で40,000〜50,000円程度 |
※費用は医療機関によって異なり、上記は当院の料金を示すものではありません。
※免疫機能が低下している、または低下する可能性がある方などでは、医師が必要と判断した場合、シングリックスの接種間隔を1か月まで短縮できます。自己判断で間隔を変更することは避けてください。
予防効果はどのくらい?効果と限界をどう理解するか
どちらのワクチンにも予防効果がありますが、効果の大きさと持続には違いがあります。
厚生労働省が示す、帯状疱疹の発症に対する予防効果の目安は次のとおりです。
| 接種からの経過期間 | 生ワクチン | 組換えワクチン |
|---|---|---|
| 接種後1年時点 | 約60% | 90%以上 |
| 接種後5年時点 | 約40% | 約90% |
| 接種後10年時点 | 数値の提示なし | 約70% |
※組換えワクチンは2回接種を前提とした目安です。研究の対象者や条件は一律ではなく、年齢や免疫状態などによっても効果は異なります。「数値の提示なし」は、効果がゼロという意味ではありません。
「予防効果90%」とは、接種しなかった場合と比べて発症リスクが約9割低下するという意味です。「接種した人の9割が一生かからなくなる」という意味ではありません。
帯状疱疹後神経痛に対しても予防効果があり、接種後3年時点では、生ワクチンで約60%、組換えワクチンで90%以上とされています。
一方、どちらも発症を完全に防ぐものではありません。接種後に片側の痛みや水ぶくれが出たときは、「ワクチンを打ったから帯状疱疹ではない」と決めつけず、受診してください。
費用・定期接種・自治体の助成について
接種できる年齢と、公費の対象年齢は別です
2025年4月から、帯状疱疹ワクチンの定期接種が始まりました。対象は次の方です。
- その年度に65歳になる方
- 60〜64歳で、HIVによる免疫機能の障害があり、日常生活がほとんど不可能な程度の方
- 2025〜2029年度の経過措置として、その年度に70・75・80・85・90・95・100歳になる方
「50歳以上なら全員が定期接種の対象」「65歳以上なら毎年いつでも公費で受けられる」という制度ではありません。また、60〜64歳の方も、免疫を抑える治療を受けているという理由だけで定期接種の対象になるわけではありません。
対象者の自己負担額や手続きは自治体によって異なります。定期接種の対象外でも、自治体独自の任意接種助成を利用できる場合があるため、住民登録のある自治体の案内を確認しましょう。
つくば市の助成について〔2026年度〕
つくば市では、接種日に市内に住民登録があり、2026年度の定期接種対象に該当する方について、次の助成が案内されています。
| ワクチン | 助成額 |
|---|---|
| 生ワクチン | 4,000円 |
| 組換えワクチン | 1回10,000円、2回まで |
助成期間は、2026年4月1日から2027年3月31日までです。助成を受けられるのは、どちらか一方のワクチンです。
ここに記載した金額は「自己負担額」ではなく「助成額」です。実際の自己負担は、医療機関の接種料金から助成額を差し引いた金額になります。
シングリックスは2回接種が必要です。1回目を年度内に受けても、年度をまたいだ2回目まで同じ条件で助成されるとは限りません。予約時に、2回目まで含めた日程と助成の期限を確認してください。
制度は年度ごとに変わる可能性があるため、接種前には最新の案内をご確認ください。
副反応と、接種後の過ごし方
生ワクチンでは、接種部位の赤みや腫れ、かゆみなどがみられます。
シングリックスでは、接種部位の痛みに加え、発熱、筋肉痛、倦怠感などが比較的起こりやすくなります。多くは2〜3日程度で落ち着きますが、仕事や家事に支障が出ることもあります。大切な予定の直前を避け、接種後に休める余裕を持った日程を組むとよいでしょう。接種当日は、激しい運動を避けてください。
どちらのワクチンにも、アナフィラキシーなどの重大な副反応が起こる可能性があります。また、シングリックスの添付文書には、ギラン・バレー症候群も頻度不明の重大な副反応として記載されています。
息苦しさや喉の腫れ、意識が遠のくような症状が出た場合は、119番などで緊急に対応してください。手足の力が入りにくい、歩きにくさが進むなどの症状も、速やかな受診が必要です。
発熱や痛みが長引く場合、症状が強い場合も、「ワクチンの副反応だから大丈夫」と自己判断せず、接種した医療機関に相談しましょう。
受ける前に確認しておくこと
治療中の病気と、使用している薬
免疫を抑える治療を受けている場合は、選べるワクチンや適切な接種時期が変わります。ステロイド内服、免疫抑制薬、JAK阻害薬、抗がん剤、一部の生物学的製剤などを使用している方は、お薬手帳を持参してください。
これから免疫を抑える治療を始める予定がある方も、治療開始前に相談しておくと接種計画を立てやすくなります。ただし、ワクチンのために薬を自己判断で中止してはいけません。
また、シングリックスは筋肉内注射のため、抗凝固薬を使用している方や出血しやすい病気がある方も、事前に伝えてください。
妊娠の可能性、過去のアレルギー、当日の体調
妊娠中は生ワクチンを接種できません。シングリックスも、妊娠中に一律に接種を勧めるものではなく、必要性を個別に判断します。
過去にワクチンや薬で強いアレルギー反応が出たことがある方は、その内容を伝えてください。接種するワクチンの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある場合は、接種できません。
明らかな発熱や重い急性の病気があるときは、接種を延期します。
他のワクチンの接種予定
別の日に注射の生ワクチン同士を接種する場合には、原則として27日以上の間隔が必要です。
一方、すべてのワクチンで一律に4週間空ける必要があるわけではありません。同時接種が可能な場合もあるため、最近受けたワクチンと、これからの接種予定を医師に伝えましょう。
受診の目安|帯状疱疹が疑われるとき
体の片側にピリピリ・ズキズキする痛みがあり、赤みや水ぶくれが出てきた場合は、できるだけ早く受診してください。帯状疱疹は、抗ウイルス薬による治療を早期に始めることが重要です。
特に、次のような場合は早急な診察が必要です。
- 顔や目の周囲に発疹がある、目が痛い、見え方がおかしい
- 耳の痛みや水ぶくれに加え、顔の動かしにくさ、めまい、聞こえにくさがある
- 発疹が全身に広がっている、強い発熱やぐったりした状態がある、免疫を抑える治療中に発症した
皮膚の症状が治っても痛みが続く場合には、神経痛に対する治療が必要になることがあります。ワクチンの接種歴にかかわらず、相談してください。
よくある質問
Q. 一度帯状疱疹になった人は、もうワクチンを受けなくてもよいですか?
一度かかっても、再び帯状疱疹になることがあります。過去に発症したことがある方も、接種を検討できます。
ただし、帯状疱疹を発症している最中に、治療目的でワクチンを打つものではありません。急性期が落ち着いてから、年齢、免疫状態、発症からの期間などを踏まえて接種時期を相談します。今ある帯状疱疹後神経痛を治す効果も期待できません。
Q. シングリックスの2回目が遅れ、6か月以上空いてしまいました。最初からやり直しですか?
国内の添付文書では、遅れる場合も1回目から6か月後までに2回目を接種するとされています。ただし、6か月を過ぎたからといって、1回目が無効になるという意味ではありません。
米国CDCの指針では、接種を最初からやり直さず、できるだけ早く2回目を受けるとされています。自己判断で中断せず、接種した医療機関に相談してください。医学的な接種の扱いと、自治体の助成を受けられる期限は別に確認する必要があります。
Q. 1回目で高熱が出たり、腕がかなり痛くなったりしました。2回目はやめた方がよいですか?
発熱や腕の痛みが強かったという理由だけで、必ず2回目を中止するわけではありません。アナフィラキシーではない副反応の場合、2回目までの接種が勧められることがあります。
ただし、「熱が出た」と「息苦しくなった・喉が腫れた」では判断が異なります。症状が出た時期、体温、持続時間、日常生活への影響を記録して、次回接種前に医師へ伝えてください。
Q. 以前に生ワクチンを打っています。シングリックスを追加で受けられますか?
過去に生ワクチンを接種していても、その後にシングリックスを接種することは検討できます。年齢や前回の接種時期、持病などから、追加する必要性と時期を判断します。
ただし、以前の生ワクチンを「シングリックスの1回目」として数えることはできません。シングリックスを選ぶ場合は、原則として2回接種が必要です。助成対象になるかは、接種記録をもとに自治体へ確認してください。
Q. 子どもの頃に水ぼうそうにかかったか覚えていません。抗体検査が必要ですか?
「覚えていない」ことと、「感染したことがない」ことは同じではありません。免疫機能に問題のない50歳以上の方では、水ぼうそうの記憶がないという理由だけで、全員に抗体検査が必要になるわけではありません。
一方、抗体検査で免疫がないと分かっている方や、免疫機能が低下している方は、別途判断が必要です。シングリックスは水ぼうそうの予防を目的としたワクチンではないため、水ぼうそうの予防接種と混同しないようにしましょう。
Q. シングリックスを2回受けたら、10年後にまた打つ必要がありますか?
現時点では、2回接種を完了した方に対して「10年ごとに必ず追加接種する」という標準的な接種計画は定められていません。
「10年後にも効果が確認されている」ことと、「10年で効果が切れる」ことは別です。今後の研究や推奨が変わる可能性はありますが、自己判断で追加するのではなく、その時点の情報をもとに相談してください。
関連ページ
参考文献・参考情報
制度・添付文書等の確認日:2026年10月6日
- 厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」:定期接種の対象、接種方法、予防効果、安全性。(厚生労働省)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「シングリックス筋注用」電子添文、2026年6月改訂:国内の接種対象、接種間隔、注意事項、副反応。(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
- つくば市「高齢者帯状疱疹ワクチン予防接種費用の助成について」2026年度:対象者、助成額、助成期間。(つくば市公式ウェブサイト)
- 勝浦市「令和8年度 帯状疱疹ワクチン接種費用助成について」:自費接種料金の参考。(勝浦市公式サイト)
- Centers for Disease Control and Prevention(CDC). Clinical Overview of Shingles:発症リスク、再発、合併症、早期治療。(疾病管理予防センター)
- CDC. Shingles Vaccine Recommendations:既往歴がある場合の接種、2回目の遅延、水痘の罹患歴が不明な場合の考え方。(疾病管理予防センター)
- CDC. Clinical Considerations for Shingrix Use in Immunocompromised Adults Aged ≥19 Years:免疫抑制治療との調整、副反応後の接種継続、追加接種に関する考え方。なお、日本の接種対象年齢は国内の添付文書に基づき記載。(疾病管理予防センター)
- CDC. Shingles (Herpes Zoster) Vaccine Safety:接種後の主な症状と持続期間。(疾病管理予防センター)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

