粉瘤のにおいは、皮膚の中の袋にたまった角質を主体とする内容物から生じます。不潔にしているからではありません。絞っても袋が残ると再びたまるため、根本的な治療は袋ごとの摘出です。
「背中のしこりから白いものが出てきて、強くにおう」「耳の後ろのできものから、独特のにおいがする」——粉瘤のにおいは、痛みがなくても気になる一方、人に相談しづらい症状です。
においが出る仕組みを知り、悪化させない対処と、受診のタイミングを確認しましょう。
においはどこから出ているのか
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に角質などがたまるできものです。袋の内側は表皮と同じ性質を持ち、内側に向かって角質を作り続けます。中身の主体は角質で、単なる「脂肪の塊」ではありません。
この内容物には特有の強いにおいがあり、皮膚表面につながる小さな穴から出てくると、においに気づくことがあります。少量ずつ漏れ出して、押さなくてもにおう場合もあります。
においは、不潔にしていることのサインではありません。体を毎日洗っていても、袋の中の内容物までは洗い流せないためです。また、においがあるだけで細菌感染を起こしているとは限りません。
白い塊・どろっとしたものが出るのはなぜか
粉瘤の中央には、黒っぽい小さな点(開口部)が見えることがあります。袋と皮膚表面がつながっているため、ここから内容物が出てきます。
白〜黄色っぽい、ペースト状や粥のような塊
主に、袋の中にたまった角質です。見た目が膿に似ていても、必ずしも細菌感染による膿ではありません。
黒い点
開口部に角質などが詰まって見えている場合があります。洗えば取れる汚れとは異なるため、無理にほじらないでください。
血の混じった液や、膿のようなもの
炎症や、無理に押したことによる傷などが関係している可能性があります。排出物の色やにおいだけでは感染の有無を判断できないため、赤み・痛み・熱感なども合わせて確認します。
いつもより急ににおいが強くなったとき
急ににおいが強くなった場合、内容物が外に漏れる量が増えたり、炎症が起きたりしている可能性があります。においの強さだけでなく、しこりの変化に注目してください。
| 見る点 | 炎症のない粉瘤 | 炎症を起こした粉瘤 |
|---|---|---|
| におい | 内容物が出たときに感じることがある | 排出物が増えると、強く感じることがある |
| 色 | 皮膚の色〜やや白っぽい | 赤くなり、周囲まで赤みが広がることがある |
| 痛み | 多くは痛みがない | 押すと痛い、何もしなくても痛む |
| 熱感 | 通常はない | 触ると熱く感じることがある |
| 大きさ | ゆっくり大きくなる、またはしばらく変わらない | 数日で急に腫れることがある |
| 出てくるもの | 白〜黄色っぽい角質主体の内容物 | 角質に加え、膿のような内容物や血の混じった液など |
| 対応 | 症状や希望に応じて、手術の必要性・時期を相談 | 早めに受診し、切開排膿などの処置を検討 |
粉瘤の炎症は、袋が破れて内容物が周囲に漏れることでも起こります。「赤く腫れた=必ず細菌感染」というわけではありません。
自分で絞ってはいけない理由
においが気になると、押し出してすっきりさせたくなります。しかし、繰り返し絞ることで、かえって状態を悪くする場合があります。
中身を出しても袋は残る
一時的に小さくなっても、角質を作り続ける袋そのものは皮膚の下に残ります。そのため、再び内容物がたまり、においも繰り返すことがあります。
袋が破れると炎症が起こる
強く押すと、袋が皮膚の中で破れて内容物が周囲に漏れることがあります。体がこれを異物として認識すると、細菌感染がなくても赤く腫れ、強く痛むことがあります。
手術が難しくなることがある
炎症を繰り返すと、袋が周囲の組織と癒着し、取り出しにくくなることがあります。傷あとへの影響も考え、繰り返し絞ることは避けてください。
細菌感染のきっかけになる
爪や針などで皮膚を傷つけると、細菌が入り、感染につながるおそれがあります。
受診までにできること・してはいけないこと
やさしく洗い、こすらない
周囲の皮膚は石けんの泡でやさしく洗い、外に出て付着した内容物は流水で流してください。穴の中を洗おうとしたり、残りを押し出したりする必要はありません。
内容物が出ているときは、清潔なガーゼで保護する
服への付着が気になる場合は、清潔なガーゼなどを当てます。少なくとも毎日、濡れたり汚れたりしたときはその都度交換してください。
針・ピンセット・毛穴パックで取り除こうとしない
針で刺す、ピンセットでほじるといった処置は、炎症や感染のきっかけになります。毛穴パックや角栓を取るシートでも、皮膚の下にある袋は取り除けません。
消毒液を塗らない
表面を消毒しても、粉瘤の袋をなくすことはできません。においを消すために消毒液を塗る必要はなく、刺激やかぶれの原因になることもあります。
治療の考え方
粉瘤を根本的に治すには、内容物だけでなく、袋の壁ごと取り除く必要があります。ただし、小さく、痛みや炎症がなく、生活上も困っていない場合は、診断を確認したうえで経過をみることもできます。
手術は通常、局所麻酔で行います。大きさ・部位・炎症や癒着の程度などに応じて、小さな穴から袋を取り出す方法(くり抜き法)と、しこりの上を切開して取り出す方法(切開法)などを選びます。
強い炎症がある場合は、まず切開して内容物や膿を出し、炎症を落ち着かせてから、後日あらためて袋を摘出することがあります。腫れている最中は、袋がもろくなったり周囲との境目が分かりにくくなったりして、取り残しやすいためです。
抗菌薬は、細菌感染が疑われる場合などに使用します。においがある、赤く腫れているという理由だけで、必ず必要になるわけではありません。
粉瘤の治療は、一般に健康保険の対象です。あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しており、開業後は粉瘤の日帰り手術に対応する予定です。
受診の目安
次のような場合は、皮膚科などで相談してください。
・においが続く、内容物が繰り返し出てくる
・同じ場所が何度も腫れては引くことを繰り返している
・しこりがだんだん大きくなってきた
・目立つ場所にあり、傷あとも含めて治療を相談したい
赤く腫れて痛む、熱を持つ、急に大きくなる場合は、早めに受診してください。発熱や強いだるさ、赤みの急速な広がりを伴う場合は、その日のうちの受診が必要です。
夜間・休日に受診を迷うときは、地域の救急電話相談(#7119など)も利用できます。対応地域や受付時間は地域によって異なります。
よくある質問
Q. 粉瘤のにおいや、出てきたものから家族にうつりますか?
粉瘤そのものは、人から人へうつる病気ではありません。においを感じたり、普段どおり一緒に生活したりすることで、家族に粉瘤ができることはありません。ただし、排出物に触れたときは手を洗い、内容物が出ている部分は清潔なガーゼなどで保護してください。
Q. 診察の日ににおいが出ていなくても、診てもらえますか?
はい。受診のために絞ったり、においが出る状態にしたりする必要はありません。
「いつからしこりがあるか」「どのくらいの頻度で内容物が出るか」「腫れや痛みを繰り返しているか」を伝えてください。腫れていたときの写真があれば、診察の参考になります。
Q. 相談に行くと、その日に必ず手術になるのでしょうか?
必ずその日に手術になるわけではありません。
まず診察で粉瘤かどうか、炎症の有無、処置を急ぐ必要があるかを確認します。急を要さない場合は、手術の必要性や方法、時期を相談して決めます。仕事や運動などの予定、傷あとへの心配も、診察時に伝えてください。
関連ページ
参考文献・参考情報
- 1.日本皮膚科学会.皮膚科Q&A「アテローム(粉瘤)」Q1「アテロームとはどんなものですか?」.粉瘤の構造、開口部、においを伴う内容物について。
- 2.日本皮膚科学会.皮膚科Q&A「アテローム(粉瘤)」Q9「治療はどうしますか?」.経過観察、摘出手術、くり抜き法、炎症時の処置について。
- 3.British Association of Dermatologists.Cysts – epidermoid and pilar.2025年更新.内容物の主成分、衛生状態との関係、他人にうつらないこと、治療について。
- 4.American Academy of Dermatology.Choosing Wisely: Recommendations about treatments, tests, and procedures.炎症性粉瘤と細菌感染の区別、抗菌薬の適正使用について。
- 5.Stevens DL, et al.Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Skin and Soft Tissue Infections: 2014 Update by the Infectious Diseases Society of America.Clinical Infectious Diseases.2014;59(2):e10–e52.
- 6.NHS.Skin cyst.自己処置で絞ることのリスク、受診と治療について。
- 7.総務省消防庁.救急安心センター事業(#7119).
本記事は一般的な医療情報をまとめたものです。個別の診断や治療については、医療機関でご相談ください。

