「あごや背中のブツブツ、ニキビだと思って薬を塗っているのに良くならない」。皮膚科ではよくある相談です。ニキビと毛嚢炎(毛包炎・もうほうえん)は、どちらも毛穴に起こる赤いブツブツで、見た目がよく似ています。けれども原因が違うため、治療薬も違います。ひげ剃りや医療脱毛の後に出るブツブツ、背中や胸に広がるかゆいブツブツ(マラセチア毛包炎)もこの仲間です。この記事では、見分け方と治療の違い、受診の目安を順に説明します。
ニキビと毛嚢炎とは(起こる仕組みの違い)
ニキビ(尋常性ざ瘡)は、皮脂が多く出るうえに毛穴の出口の角質が厚くなって、毛穴がふさがることから始まります。このつまった状態を面皰(めんぽう)・コメドと呼び、白く見えるもの(白ニキビ)と、出口が開いて黒く見えるもの(黒ニキビ)があります。そこで皮膚の常在菌であるアクネ菌が増えると、赤く腫れた炎症(赤ニキビ)や膿をもったニキビになります。思春期から若い世代に多く、顔・胸・背中など皮脂の多い場所に出ます。
毛嚢炎(毛包炎)は、毛穴に細菌が入り込んで起こる浅い感染症です。原因菌の多くは黄色ブドウ球菌という、皮膚にふだんからいる菌です。ひげ剃りや毛抜き、脱毛、摩擦、汗による蒸れで毛穴に小さな傷ができたところから入り込みます。ニキビと違って、まず毛穴のつまりから始まるわけではありません。
もうひとつ、マラセチア毛包炎は、皮膚にいるカビ(真菌)の一種であるマラセチアが毛穴で増えて起こります。汗をかきやすい夏や、スポーツをする人、ステロイドや抗菌薬を使っている人に出やすく、背中・胸・肩に多く見られます。
症状・見分け方(ニキビ・毛嚢炎・マラセチア毛包炎の比較)
| 比べるポイント | ニキビ | 毛嚢炎(細菌性) | マラセチア毛包炎 |
|---|---|---|---|
| コメド(白・黒の小さなつまり) | ある | ない | ない |
| ブツブツの様子 | 大きさがまちまち。白・黒・赤・膿が混在する | 毛穴の中心に膿の粒。1本の毛を中心に赤くなる | 小さく赤いブツブツがそろって多発。光沢がある |
| できやすい場所 | 顔(額・頬・あご)、胸、背中 | ひげ・ワキ・お尻・太もも・脱毛した部位 | 背中、胸、肩、二の腕 |
| かゆみ・痛み | 赤ニキビは押すと痛い。かゆみは少ない | 軽い痛みやヒリヒリ感 | かゆみがあることが多い |
| きっかけ | 皮脂の多さ、ホルモン、睡眠不足、ストレス | ひげ剃り、毛抜き、脱毛、摩擦、蒸れ | 汗、高温多湿、スポーツ、ステロイドの使用 |
いちばんの見分けポイントは、コメドがあるかどうかです。赤いブツブツの周りをよく見ると、ニキビでは白や黒の小さなつまりが混ざっていますが、毛嚢炎やマラセチア毛包炎では見当たりません。とくに背中や胸では、ニキビだと思っていたものがマラセチア毛包炎だったということがよくあります。皮膚科では、膿や皮膚の表面を少しとって顕微鏡でカビの有無を確認し、必要に応じて細菌の検査を行って見分けます。
治療・セルフケア
原因が違うため、治療薬も違います。
- ニキビ: コメドの段階から治療することが大切で、保険適用の塗り薬が中心です。毛穴のつまりを取るアダパレン、アクネ菌を減らしつまりも改善する過酸化ベンゾイル、この2つや抗菌薬を組み合わせた配合薬などを使います。赤ニキビが多い場合は、抗菌薬の塗り薬や飲み薬を短期間併用します。
- 毛嚢炎(細菌性): 軽いものは清潔にしているだけで数日で治まることも多く、広がる・繰り返す場合は抗菌薬の塗り薬を使います。範囲が広い場合や腫れが強い場合は、抗菌薬の飲み薬を使います。
- マラセチア毛包炎: 抗真菌薬(カビを抑える薬)の塗り薬を使います。範囲が広い場合は抗真菌薬の飲み薬を使うこともあります。抗菌薬ではカビには効かないため、ニキビの薬や抗菌薬を塗り続けても良くならないことがあります。
「ニキビ用の市販薬を使っているのに治らない」という場合は、そもそもニキビではない可能性があります。自己判断で薬を変え続けるより、一度皮膚科で原因を確かめる方が近道です。
ひげ剃り・脱毛後のブツブツを防ぐコツ
- ひげ剃りは、蒸しタオルやシェービング剤で肌をやわらかくしてから、毛の流れに沿って剃る。逆剃りは肌を傷つけやすいため控えめに
- 刃は切れ味の落ちる前に交換し、使った後は乾かして清潔に保つ
- 毛抜きで抜くと毛穴が傷つきやすいので、なるべく避ける
- 医療脱毛の後は、照射部位をこすらない・汗をかいたら早めに流す。照射後に毛嚢炎が出ることはあるため、気になる場合は照射を受けた医療機関に相談する
背中や胸のブツブツには、汗をかいたら早めにシャワーを浴びる、汗で湿った服をそのままにしない、通気性のよい服を選ぶ、といった工夫が役立ちます。ニキビも毛嚢炎も、潰したりつまんだりすると炎症が深くなり、跡が残りやすくなるので触らないようにしましょう。
受診の目安
- ニキビ用の市販薬を2週間ほど使っても良くならない
- 背中や胸に、かゆみのある小さな赤いブツブツが一面に広がっている
- ひげ剃りや脱毛のたびに同じ場所で繰り返す
- 赤く大きく腫れて痛い、膿がたまっている
- ニキビ跡(赤み・色素沈着・へこみ)が残り始めている
ブツブツが急に大きなしこりのように腫れて赤みが周りへ広がる、発熱がある、といった場合は、感染が深いところまで広がっているおそれがあります。早めに医療機関を受診してください。夜間・休日で受診先に迷うときは救急安心センター事業(#7119)に相談でき、ぐったりしているなど緊急性が高いと感じたら119番に連絡してください。
よくある質問
毛嚢炎があるとき、ひげ剃りやメイクはしてもいいですか?
ブツブツが多い時期は、できれば剃る回数を減らすか、肌への負担が少ない電気シェーバーを使いましょう。刃が炎症部分を傷つけると、菌がさらに広がることがあるためです。メイクは、厚塗りを避け、帰宅後にやさしく落とせば基本的に問題ありません。
ニキビと毛嚢炎が同時にあることはありますか?
あります。とくに背中や胸では、ニキビとマラセチア毛包炎が混ざっていることがよくあります。その場合は両方の薬を組み合わせて治療するため、見た目だけで判断せず、一度診察で確かめるのがおすすめです。
治ったのに、また同じ場所に出ます。どうすればいいですか?
ニキビは、赤みが引いた後もコメドの段階から予防の塗り薬を続けると、再発しにくくなります。毛嚢炎は、ひげ剃りや摩擦、蒸れといったきっかけを見直すことが大切です。マラセチア毛包炎は汗の多い季節に再発しやすいため、夏前から汗のケアを意識しておくと安心です。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A にきび(確認日: 2026-09-29)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-29)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

