「背中にできものができて、赤く腫れて痛い。これって粉瘤?それともおでき?」。皮膚科の外来でとても多い相談です。どちらも赤く腫れて膿がたまり、見た目はよく似ています。けれども、できる仕組みが違うため、治療の進め方や「治ったあと」の考え方も違います。いちばんの手がかりは、腫れる前からそこにしこりがあったかどうかです。この記事では、見分け方と、腫れてしまったときにどうすればよいかを整理します。
粉瘤とおできとは(できる仕組みの違い)
粉瘤(ふんりゅう)は、皮膚の下に袋ができ、その中に本来はがれ落ちるはずの角質(垢)や皮脂がたまっていく良性のできものです。袋は自然には消えないため、ゆっくり大きくなったり、小さくなったりを繰り返しながら残り続けます。表面に黒い点(へそ)が見えることがあり、押すと臭いのある白いカスが出ることもあります。背中・顔・首・お尻・耳のまわりなど、全身どこにでもできます。
おできは、毛穴(毛包)に細菌が入り込んで起こる感染症です。毛穴の入口だけの浅い炎症を毛包炎(もうほうえん)、毛穴の奥まで膿がたまって大きく腫れたものをせつ(癤)と呼びます。原因菌は多くが黄色ブドウ球菌という、皮膚にふだんからいる菌です。ひげ剃りや摩擦、汗、小さな傷がきっかけになります。こちらは袋がないため、治れば基本的にしこりは残りません。
症状・見分け方(粉瘤とおできの比較)
| 比べるポイント | 炎症を起こした粉瘤 | おでき(せつ・毛包炎) |
|---|---|---|
| 腫れる前 | 数か月〜数年前から、しこりがあったことが多い | 何もなかった、または小さなニキビのようなブツブツだった |
| 腫れ方 | しこりが急に大きく、赤く、痛くなる | 数日のうちに赤く腫れ、中心に膿の点ができる |
| 中心の様子 | 黒い点(へそ)が見えることがある | 毛が1本生えていることが多い |
| 出てくるもの | 臭いのある白〜黄色のカスと膿 | 黄色い膿 |
| できやすい場所 | 背中、顔、首、お尻、耳のまわり | ひげ・わき・お尻・太ももなど毛が多くこすれる場所 |
| 治ったあと | 袋が残るため、しこりが残り、再び腫れることがある | しこりは基本的に残らない |
ただし、腫れが強いときは皮膚の上から触っても区別がつかないことがよくあります。皮膚科では、腫れる前の経過を聞き、触った硬さや、必要に応じて超音波(エコー)検査で皮膚の下の袋の有無を確かめます。受診のときは「いつからしこりがあったか」を伝えていただくと、見分ける大きな手がかりになります。
炎症性粉瘤は「細菌感染」より「袋が破れる」ことが主な原因
粉瘤が赤く腫れる原因は、細菌感染よりも、皮膚の下で袋が破れることによる方がずっと多いと考えられています。袋が破れると、中にたまっていた角質が周りの組織に漏れ出し、体がそれを異物として攻撃するため、強い炎症が起きます。その後、二次的に細菌がかかわることもあります。
つまり、炎症性粉瘤は「ばい菌をやっつければ治る」とは限りません。抗菌薬(抗生物質)だけでは腫れが引かないことが多いのはこのためで、治療の中心は痛みを抑えることと、たまった膿や内容物を外に出すことになります。
なぜ自分で潰してはいけないのか
膿がたまって先が白くなっていると、つい押し出したくなります。しかし、自分で潰すのはおすすめしません。理由は次の3つです。
- 炎症が深く広がる: 押す力で、中身や膿が皮膚の奥へ押し込まれ、腫れが大きくなることがあります。
- 袋が残る: 粉瘤の場合、中身を押し出しても袋は残るため、また同じ場所にたまります。
- 傷あとが目立ちやすくなる: 炎症を繰り返すと周りの組織が硬くなり、将来手術をするときに傷が大きくなりやすくなります。
針を刺したり、爪で押したりするのも同じです。気になっても触らず、清潔に保って受診してください。
治療・セルフケア
炎症を起こした粉瘤の場合
腫れて痛い時期は、まず痛み止めの飲み薬で痛みを抑えます。膿がたまってぶよぶよしている場合は、局所麻酔をして小さく切り、中の膿や内容物を出す切開排膿(せっかいはいのう)を行います。たまっているものが外に出ると、痛みは早く楽になります。細菌感染が強く疑われるときには抗菌薬を併用することもあります。
腫れが引いて落ち着いたら、再発を防ぐために袋ごと取り除く手術を検討します。炎症の真っ最中は袋がもろく周りと癒着しているため、きれいに取り切れないことがあり、一般的には炎症が治まってから手術を行います。炎症を起こす前の小さいうちに取ると、傷も小さく済みやすくなります。
おでき(せつ・毛包炎)の場合
細菌感染が原因なので、抗菌薬の塗り薬や飲み薬が治療の中心です。膿が大きくたまっている場合は、切開して膿を出すと治りが早くなります。浅い毛包炎なら、清潔を保つだけで数日で落ち着くこともあります。何度も繰り返す場合は、ひげ剃りの方法や、糖尿病などの持病がないかも一緒に確認します。
受診までのセルフケア
- 触らない・押さない・潰さない
- シャワーで周りをやさしく洗い、清潔に保つ
- 膿が出てきたらガーゼで軽く覆う。密閉性の高い絆創膏で長時間ふさぐと、蒸れて治りがかえって悪くなることがあります
- 痛みが強いときは、患部を冷やすと楽になることがあります
受診の目安
- 赤み・腫れ・痛みがあり、数日たっても引かない、または大きくなっている
- 以前からあるしこりが、急に腫れて痛くなった
- 同じ場所で何度も腫れを繰り返している
- 顔の中心(鼻や上くちびるのまわり)のおでき
- 糖尿病がある、免疫を抑える薬を使っている
赤みが広い範囲へ急に広がる、38度以上の熱が出る、ぐったりしている、といった場合は、皮膚の深いところまで感染が広がっている可能性があります。早めに医療機関を受診してください。夜間や休日で受診先に迷うときは、救急安心センター事業(#7119)に相談できます。意識がもうろうとしているなど緊急性が高いと感じたら、ためらわず119番に連絡してください。
よくある質問
腫れた粉瘤は、待っていれば治りますか?
腫れや痛みは、時間がたつと自然に引いてくることもあります。ただ、袋が残っている限り、再び腫れる可能性があります。痛みが強い場合は痛み止めや切開排膿で早く楽になれるので、我慢せずに受診してください。落ち着いた後に袋ごと取るかどうかは、大きさや再発の回数、生活への支障を見ながら医師と相談して決めます。
腫れているときに、すぐ袋ごと取ることはできますか?
基本的には、炎症が治まってからの手術をおすすめしています。炎症の最中は袋が破れて周りとくっついており、取り残しが起きやすく、傷も大きくなりやすいためです。ただし、状態によっては早い時期に手術を検討することもあります。
切開したあと、お風呂に入ってもいいですか?
多くの場合、シャワーは翌日から可能で、傷をやさしく洗って清潔を保つ方が治りやすくなります。湯船につかるのは、出血や膿が落ち着くまで控えるのが一般的です。具体的な時期は処置の内容で変わるため、処置のときに確認してください。
おできがうつることはありますか?
膿には細菌が含まれるため、タオルやかみそりの共用は避けましょう。家族内で繰り返す場合は、一緒に相談してください。粉瘤そのものは、人にうつるものではありません。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 粉瘤(確認日: 2026-09-29)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-29)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

