「朝起きたら、赤ちゃんの頬に何本もひっかき傷ができていた」「爪を切っても、すぐに顔をかいて血が出る」「傷跡が残らないか心配」。生後間もない時期から多い相談です。ひっかき傷の手当てと跡の心配、爪の切り方、受診したほうがよいサインを整理します。
赤ちゃんが顔をひっかく理由(仕組み)
赤ちゃんの顔のひっかき傷には、大きく2つの理由があります。
- 手の動きがまだうまくコントロールできない…生後数か月の赤ちゃんは、手足をばたつかせたり、手を顔に持っていったりする動きが多く、そのときに爪が当たって傷になります。かゆいわけではなく、自然な動きです。
- かゆみがある…乳児湿疹や乾燥、あせもなどでかゆいと、同じ場所を何度もこすったりかいたりします。頬、耳の周り、首などに多く見られます。
赤ちゃんの爪は薄くて鋭く、伸びるのも早いため、少し伸びただけで傷になりやすいのも理由のひとつです。
症状と見分け方
| 状態 | 見た目・特徴 | 考え方 |
|---|---|---|
| 手の動きによる傷 | 細い線状の傷が数本。周りの皮膚はきれい | 手当てだけで数日で治る |
| かゆみ(湿疹)によるかき傷 | 赤くカサカサ・ジュクジュクした所に傷が重なる | 湿疹の治療が必要 |
| 傷からの感染(とびひ) | 黄色いかさぶた、ジュクジュク、周りに広がる | 受診が必要 |
頬や耳の周りの赤くカサカサした湿疹が2か月以上続き、良くなったり悪くなったりをくり返す場合は、アトピー性皮膚炎のこともあります。かゆみを抑えて肌を整えることで、ひっかき傷そのものが減ります。
傷の手当てとセルフケア
- ぬるま湯でやさしく洗う。お風呂のときに、泡立てた石けんでなでるように洗い、よく流します。消毒薬は基本的に必要ありません。
- ワセリンで傷を守る。洗った後、傷とその周りにワセリンを薄く塗ります。乾燥を防ぎ、傷の治りを助けます。
- 爪を短く、角を整える。赤ちゃん用の爪切りやはさみで、白い部分を少し残す程度に切り、角は丸く整えます。爪がやわらかくなる入浴後や、ぐっすり眠っている間が切りやすいタイミングです。切った後に爪やすりで整えると、引っかかりが減ります。
- 爪はこまめにチェック。赤ちゃんの爪は伸びるのが早いため、数日に1回は確認します。
ミトンは使ったほうがいい?
傷がひどいときや、湿疹を治療している間の夜など、一時的にミトンを使うのはかまいません。ただし、赤ちゃんは手で触ったり口に入れたりして、自分の体や周りのものを知っていきます。ずっとミトンをつけたままにするより、爪のケアを基本にし、ミトンは必要な場面に限って使うのがおすすめです。ミトンの糸がほつれて指に巻きつくことがあるため、使うときは内側の糸も確認してください。
皮膚科での治療
ひっかき傷だけであれば、特別な治療はほとんど必要ありません。かゆみの元に湿疹がある場合は、赤ちゃんに使える強さの炎症を抑える塗り薬(ステロイド外用薬)と保湿剤で肌を整えます。ステロイドは強い薬というイメージがあるかもしれませんが、強さと量、期間を決めて使えば、赤ちゃんにも安全に使える薬です。傷からとびひになった場合は、抗菌薬の塗り薬や飲み薬で治療します。
診察室でよく聞かれる質問
Q. ひっかき傷の跡は残りますか?
A. 浅いひっかき傷は、ほとんど跡を残さずに治ります。赤ちゃんの皮膚は治る力が強いためです。一時的に赤みや茶色っぽさが残ることがありますが、数週間〜数か月で目立たなくなることが多いです。同じ場所を何度もかき続けると跡が残りやすくなるので、かゆみの元がある場合は治療しましょう。
Q. 傷に絆創膏を貼ってもいいですか?
A. 顔の小さな傷には、絆創膏は基本的に必要ありません。赤ちゃんがはがして口に入れてしまうおそれもあります。ワセリンで保護するだけで十分です。
Q. 爪を切るとき、深爪をしてしまいそうで怖いです。
A. 爪の白い部分を少し残すくらいで十分です。はさみを使うのが不安な場合は、赤ちゃん用の爪やすりで削る方法もあります。誤って皮膚を切ってしまったときは、清潔なガーゼで軽く押さえて血を止めてください。
受診の目安
- 赤くカサカサ・ジュクジュクした湿疹があり、かゆがって何度もかく
- 黄色いかさぶたやジュクジュクが広がる(とびひの可能性)
- 傷の周りが赤く腫れて熱をもつ、発熱がある
- 保湿や爪のケアをしても、2週間以上傷が絶えない
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「アトピー性皮膚炎」(確認日: 2026-10-23)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「とびひ」(確認日: 2026-10-23)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

