「透析を始めてから、背中やすねがかゆくて眠れない」「かいてもかいてもおさまらない」「主治医に言いそびれている」。このかゆみは、多くの透析患者さんが経験するといわれる症状で、生活の質を大きく下げるのに、相談されずに我慢されていることが多いのが特徴です。遠慮せずに伝えてください。
透析そう痒症とは(なぜ腎臓病でかゆくなるのか)
原因はひとつではなく、いくつかの要因が重なって起こると考えられています。
- 皮膚の乾燥 — 腎臓病では汗や皮脂が減り、皮膚が乾燥しやすくなる。乾燥した皮膚は、わずかな刺激でもかゆみを感じやすい
- 体にたまる物質 — 腎臓で十分に排出できない物質が、かゆみを起こしやすくする
- かゆみを伝える仕組みの乱れ — 体の中には、かゆみを強める仕組みと、弱める仕組みがある。腎臓病ではこのバランスが崩れ、かゆみが強く出やすくなる
- リンやカルシウムのバランス — 血液中のリンが高い状態も、かゆみに関係するといわれている
このため、保湿だけ、飲み薬だけ、では足りないことが多く、皮膚と体の両方から対策するのが基本になります。
症状と見分け方
- 背中・すね・腕に多いが、全身がかゆくなることもある
- 夜や透析のあとにかゆみが強くなることがある
- 発疹ははっきりしないことが多く、かき傷や、かき続けてできた硬いしこりだけが目立つことがある
- 皮膚が乾燥して、白く粉をふいていることが多い
| 考えられるもの | 特徴 | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| 透析そう痒症 | 発疹が目立たないのに、長くかゆい | 腎臓病・透析中で、乾燥をともなうことが多い |
| 乾燥肌(皮脂欠乏性湿疹) | すねの粉ふき・ひび割れ | 保湿でよくなりやすい(関連記事: 乾燥肌) |
| かき続けてできた痒疹 | 硬く盛り上がった、かゆいしこり | 透析そう痒症から続いて起こることもある(関連記事: 痒疹) |
| 疥癬 | 家族や同じ施設の人にもかゆみが出る。手首・指の間にブツブツ | ダニによる感染症で、治療が別になる(関連記事: 疥癬) |
| 薬によるかゆみ・発疹 | 新しい薬を始めてから出る | 飲んでいる薬を医師に伝えることが大切 |
治療と自分でできる対処
まずは保湿と、腎臓の治療の見直しから始めます。そのうえで、かゆみが残る場合は、このかゆみに使う薬を追加していきます。
- 保湿 — 入浴後すぐに、背中やすねを中心に保湿剤を塗る。乾燥がかゆみの土台になっているため、どの治療でも基本になる(関連記事: 保湿剤の種類と使い分け)
- 塗り薬 — かき傷や湿疹があるところには、ステロイドの塗り薬を短期間使う
- 透析そう痒症のための飲み薬 — かゆみを弱める仕組みに働きかける飲み薬(ナルフラフィン)がある。一般的なかゆみ止めで効果が不十分なときに使われる
- 透析のときに使う注射薬 — 血液透析を受けている方には、透析の回路から注射する薬(ジフェリケファリン)もある
- 透析の条件や、リンの管理の見直し — 腎臓の主治医が行う。かゆみが強いことを主治医にも伝えることが大切
- 紫外線療法 — 皮膚に弱い紫外線を当てる治療が行われることもある(関連記事: 紫外線療法)
市販のかゆみ止めの飲み薬を、自己判断で飲まないでください。かゆみ止めの飲み薬には、腎臓の働きに応じて量を減らす必要があるものや、使い方に注意が必要なものがあるためです。飲む場合は、腎臓の主治医か薬剤師に確認してください(関連記事: かゆみ止めの飲み薬の種類)。
生活の中では、熱いお風呂やシャワーを避け、ぬるめのお湯にする、寝室を乾燥させすぎない、爪を短く切るといった工夫が役立ちます。体が温まるとかゆみが強くなり、かき傷からさらにかゆみが強まる悪循環が起こりやすいためです。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| かゆいときはどうしたらいいですか? | 冷やすのがおすすめです | 保冷剤をタオルで包んで当てると、かゆみの感じ方が弱まるためです。かくと皮膚が傷つき、かゆみがさらに強まります |
| 透析の先生と皮膚科、どちらに相談すればいいですか? | まず透析の主治医に伝え、必要に応じて皮膚科も受診してください | かゆみの原因が体と皮膚の両方にあるためです。皮膚科を受診するときは、お薬手帳を持参してください |
| かゆいのは仕方がないと言われました | 治療で軽くできるかゆみです。遠慮せず相談してください | このかゆみのために使える薬があり、保湿の見直しだけで楽になる方もいるためです |
受診の目安
- 受診を — かゆみで夜眠れない、日中の生活に支障がある
- 受診を — かき傷がたくさんある、硬いしこりができている
- 早めの受診を — 家族や施設の人も同じようにかゆがっている(疥癬の可能性)
- 早めの受診を — 新しい薬を始めてから発疹やかゆみが出た
- 早めの受診を — かき傷が赤く腫れて熱をもつ、膿が出る(細菌感染の可能性)
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(確認日: 2026-09-26)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-26)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

