りんご病は、頬の赤みや手足の網目状の発疹を起こすウイルス感染症です。通常、発疹が出た頃には感染力はほぼなくなっています。多くは自然に治りますが、妊娠中の方や、一部の血液疾患・免疫低下がある方は注意が必要です。
「子どもの頬が急に真っ赤になった」
「元気なのに、腕や脚の発疹が出たり消えたりする」
「妊娠中だけれど、上の子がりんご病と診断された」
りんご病は、発疹が目立つ一方で、本人は普段どおり元気なことも多い病気です。ただし、感染しやすい時期と発疹が出る時期にはずれがあり、妊娠中の方などには別の注意が必要になります。
りんご病(伝染性紅斑)とは
りんご病の正式な病名は「伝染性紅斑」です。ヒトパルボウイルスB19というウイルスが原因で、幼児から小学生に多くみられますが、大人も感染します。
主な感染経路は、咳やくしゃみによる飛沫感染と、鼻水や唾液などがついた手や物を介する接触感染です。感染しても、はっきりした症状が出ないことがあります。
うつりやすいのは、頬が赤くなる前
感染から特徴的な発疹が出るまでは、一般に10〜20日程度です。その7〜10日ほど前に、微熱、鼻水、頭痛、だるさなど、かぜに似た症状が出ることがあります。
人にうつしやすいのは、この発疹が出る前の時期です。通常、頬の赤みや手足の発疹が現れた頃には、感染力はほぼなくなっています。
つまり、「りんご病だと気づいてから休ませる」だけでは、周囲への感染を十分に防げない病気です。ただし、免疫機能が低下している方などでは感染が長引くことがあり、すべての人に「発疹が出たら絶対にうつらない」と言い切れるわけではありません。
発疹の特徴と経過
両頬が赤くなる
典型的には、左右の頬にまとまった赤みが現れます。「りんごのような頬」と表現される、この病気を代表する症状です。
ただし、頬の赤みが目立たない例もあり、特に大人では典型的な見た目にならないことがあります。
腕や脚に、レース状・網目状の発疹が広がる
頬の赤みに続いて、腕や太ももなどに赤い発疹が現れます。お腹、背中、おしりに広がることもあります。
赤みの中央が薄くなると、レースや網目のように見えるのが特徴です。軽いかゆみを伴うこともあります。
薄くなった発疹が、再び目立つことがある
発疹は1週間前後で薄くなることが多いものの、数週間にわたって出たり消えたりすることがあります。日光、体が温まること、衣服のこすれなどで、いったん薄くなった赤みが再び目立つ場合もあります。
赤みが濃くなっただけで、病気が悪化した、感染力が戻ったと判断する必要はありません。一方、新たな発熱や強いだるさなどがある場合は、発疹とは別に体調の変化を確認することが大切です。
大人では、関節の痛みが目立つことも
大人のりんご病では、頬の赤みよりも、手指、手首、膝、足などの関節の痛み・腫れ・こわばりが目立つことがあります。特に女性に多く、左右の関節に症状が出る場合があります。
発疹がはっきりせず、関節症状だけが現れることもあります。
多くは1〜3週間程度で改善しますが、数か月以上続くこともあります。痛みが強い、家事や仕事に支障がある、関節の腫れが長引く場合は、ほかの関節の病気との区別も含めて受診してください。
似た発疹との見分け方
頬や体が赤いからといって、必ずしもりんご病とは限りません。発疹の形だけでなく、発熱の経過、のどの症状、年齢、周囲の流行状況などを合わせて判断します。
| 病気 | 発疹の特徴 | 見分けるための手がかり |
|---|---|---|
| りんご病 | 両頬の赤み、手足のレース状・網目状の発疹 | 発疹が出る頃には、熱がなく元気なことが多い |
| 溶連菌感染症に伴う発疹(猩紅熱) | 細かく、触るとざらざらする発疹 | のどの痛み、発熱、いちごのように赤くなった舌など |
| 麻疹(はしか) | 顔や首から全身に広がる赤い発疹 | 高熱、咳、鼻水、目の充血など。強い全身症状を伴う |
| 風疹 | 顔から体へ広がる細かな赤い発疹 | 耳の後ろや首のリンパ節の腫れ。妊娠中の感染には特に注意 |
| 突発性発疹 | 胸やお腹、背中を中心とした発疹 | 主に乳幼児にみられ、高熱が下がる頃に発疹が出る |
| じんましん | 盛り上がった、かゆみのある発疹 | 短時間で形や場所が変わり、個々の発疹が消えていく |
この表だけで診断を確定することはできません。麻疹や風疹が疑われる場合は、ほかの患者さんへの感染を避けるため、直接待合室に入らず、受診前に医療機関へ電話で相談してください。
治療とホームケア
発疹を消すための薬が、必ずしも必要なわけではありません
健康な子どもや大人のりんご病は、多くの場合、自然に回復します。通常のりんご病に対する特効薬はなく、つらい症状を和らげる治療が中心です。
かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬などの飲み薬を使うことがあります。発熱や関節の痛みがつらいときも、年齢や体調に合った薬を検討します。妊娠中の方は、市販薬を自己判断で使わず、産科に確認してください。
赤みがあるという理由だけで、塗り薬を繰り返し追加する必要はありません。
入浴は体調に合わせて。赤みを気にして洗いすぎない
熱がなく元気であれば、通常は入浴できます。熱いお湯や長風呂で赤み・かゆみが増す場合は、ぬるめのお湯で短時間にしましょう。
日光やこすれで発疹が目立つことがあるため、強い日差しを避け、皮膚を強くこすらないようにします。こうした工夫は刺激を減らすためのもので、ウイルスを早く体から追い出す治療ではありません。
発熱やだるさがある間は無理をせず、水分と休息をとってください。
登園・登校は、赤みが消えるまで待たなくても大丈夫?
通常のりんご病では、発疹が出た時点で感染力はほぼなくなっているため、熱がなく、全身状態がよければ登園・登校が可能です。赤みが完全に消えるまで休む必要は、通常ありません。
ただし、熱がある、食事や水分が十分にとれない、だるくて普段の活動が難しい場合は、回復を優先しましょう。血液の病気や免疫機能の低下がある方は、主治医の判断が必要です。
診断されたことは園や学校に伝え、必要な連絡や書類について確認してください。周囲に妊娠中の方がいる場合にも、接触した状況を伝えられると役立ちます。
妊娠中の方が注意したいこと
お母さんの症状が軽くても、胎児への確認が必要です
妊娠中に初めて感染すると、ウイルスが胎盤を通じて胎児に感染し、重い貧血や、全身に水分がたまる「胎児水腫」を起こすことがあります。流産・死産につながる場合もあります。
特に妊娠前半の感染は注意が必要ですが、妊娠後半なら絶対に安全というわけではありません。
一方で、りんご病の人と接触したからといって必ず感染するわけではなく、妊婦さんが感染しても、必ず胎児に問題が起こるわけではありません。必要以上に悲観せず、産科で状況を確認することが大切です。
子どもが診断されたら、症状がなくても産科へ連絡を
同居する子どもがりんご病と診断された、感染者と近くで接する機会があった、自分に発疹や関節痛が出た場合は、かかりつけの産科へ電話で相談してください。妊娠の可能性がある方も同様です。
発疹が出る前に感染している可能性があるため、「子どもはもううつす時期を過ぎたから、自分の確認も不要」とは考えないようにしましょう。
連絡するときは、妊娠週数、接触した時期、子どもの発疹が出た日、自分の症状を伝えると状況を整理しやすくなります。
必要に応じて抗体検査などを行い、感染が確認された場合には、超音波検査で胎児の貧血やむくみを継続して確認します。胎児への影響は遅れて現れることがあるため、その日の超音波検査が正常でも、経過観察が必要な場合があります。
血液の病気や、免疫機能の低下がある方へ
ヒトパルボウイルスB19は、赤血球のもとになる細胞に感染します。
遺伝性球状赤血球症など、赤血球が通常より早く壊れる「溶血性貧血」がある方では、赤血球が一時的に作られにくくなり、急激に強い貧血を起こすことがあります。
また、抗がん剤治療中、臓器移植後などで免疫機能が低下している方では、感染や貧血が長引くことがあります。こうした方は、発疹の有無だけで判断せず、感染者との接触や体調の変化を主治医に伝えてください。
家庭でできる感染対策
発疹が出る前に感染が広がるため、完全に防ぐことは簡単ではありません。それでも、石けんと流水での手洗い、咳エチケット、換気、よく触れる場所の清掃といった基本的な対策は大切です。
鼻水を拭いた後や食事の前には手を洗い、飲み物の回し飲みや食器の共用は避けましょう。妊娠中の方などは、かぜ症状のある人との密接な接触をできる範囲で減らし、必要に応じてマスクも活用してください。
りんご病を予防するためのワクチンや、接触後に飲んで感染を防ぐ薬はありません。
受診の目安
次のような場合は、医療機関に相談してください。
- 高熱が続く、ぐったりしている、水分がとれない、発疹の原因がはっきりしない。
- 顔色が明らかに悪い、息切れや動悸がある、強いだるさがある、関節痛で日常生活に支障がある。
- 妊娠中・妊娠の可能性がある、溶血性貧血などの血液疾患がある、免疫機能が低下しており、感染者との接触や症状がある。
息苦しさが強い、意識がはっきりしない、失神した場合は、通常の外来受診を待たず、救急受診を検討してください。
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しており、開業後は子どもから大人まで、発疹の診察に対応する予定です。
よくある質問
Q.子どもが見た目だけでりんご病と診断されました。採血をしなくても大丈夫ですか?
典型的な発疹と経過があり、元気な子どもであれば、診察で判断できることが多く、全員に採血が必要なわけではありません。
一方、診断がはっきりしない場合、強い貧血が疑われる場合、血液の病気や免疫機能の低下がある場合などは、採血を検討します。妊婦さんへの影響を確認する必要があるときも、子どもの検査だけで判断せず、妊婦さん自身の産科への相談が大切です。
Q.一度かかったことがあれば、もうかかりませんか?
通常は感染後に長く続く免疫ができるため、繰り返しかかることはまれです。
ただし、「昔、頬が赤くなったことがある」という記憶だけでは、本当にりんご病だったかは分かりません。妊娠中に感染者と接触した場合などは、過去の記憶だけで安心せず、産科に相談してください。
Q.妊娠中です。接触直後の抗体検査が陰性なら、感染していないと考えてよいですか?
検査の時期によっては、感染していても抗体がまだ検出されないことがあります。また、「抗体が陰性」という結果が、今後の感染に対する免疫を持っていないことを意味する場合もあります。
一般に、IgG抗体は過去の感染や免疫、IgM抗体は最近の感染を判断する手がかりですが、結果は組み合わせて解釈します。接触時期や症状によって再検査が必要になることもあるため、1回の「陰性」だけで自己判断しないでください。
Q.鉄欠乏性貧血で鉄剤を飲んでいます。「血液の病気がある人」に当てはまりますか?
りんご病で特に急激な貧血が問題になりやすいのは、赤血球が壊れやすい溶血性貧血などです。鉄不足による鉄欠乏性貧血とは、病気の仕組みが異なります。
ただし、もともとの貧血が強い場合などには個別の確認が必要です。「貧血」と言われているものの原因が分からない場合や、感染後に息切れ・動悸・強いだるさが出た場合は、主治医に相談してください。
関連ページ
参考文献・参考情報
- 1.厚生労働省「伝染性紅斑」。感染経路、症状、妊娠中の注意点、治療・予防について。(厚生労働省)
- 2.国立健康危機管理研究機構「伝染性紅斑」および「伝染性紅斑とは」。潜伏期間、発疹と感染力の時系列、血液疾患・免疫低下がある方の合併症について。(感染症情報提供サイト)
- 3.日本医師会「健康ぷらざPlus Vol.13 伝染性紅斑(リンゴ病)」。2026年5月公開。感染後の免疫、発疹の再出現、かゆみへの治療、登園・登校について。(日本医師会)
- 4.米国疾病予防管理センター(CDC)「About Parvovirus B19」。成人の関節症状、重症化リスク、検査・治療について。(CDC)
- 5.CDC「Preventing Parvovirus B19」。感染性が続く例外、家庭での感染対策、ワクチンがないことについて。(CDC)
- 6.CDC「Parvovirus B19 in Pregnancy」。妊娠中の接触・感染時の相談、胎児への影響、検査と経過観察について。(CDC)
- 7.日本産婦人科医会「第十二回:伝染性紅斑の流行と妊婦健診」。2026年6月25日作成。母体感染の評価、遅れて現れる胎児への影響、超音波検査による経過観察について。(日本産婦人科医会)
- 8.Society for Maternal-Fetal Medicine(SMFM)「Human Parvovirus B19 in Pregnancy」。妊娠中の検査対象、IgG・IgM抗体の解釈、接触後の対応について。(Society for Maternal-Fetal Medicine)
- 9.英国国民保健サービス(NHS)「Slapped cheek syndrome」。家庭でのケア、症状の持続、重い貧血を疑う症状について。(nhs.uk)
- 10.NHS「Rashes in babies and children」「Rubella」「Roseola」。似た発疹との鑑別、麻疹・風疹が疑われる場合の受診前連絡について。(nhs.uk)
本記事は一般的な情報をまとめたものであり、個別の診断に代わるものではありません。症状や治療については、医療機関でご相談ください。

