「股のつけ根が茶色くなって、いんきんたむしの市販薬を塗っているのに消えない」「足の指の間がずっと白くふやけている」「ワキの下が薄茶色にくすんでいる」。こうした相談の中に、カビ(真菌)ではなく細菌が原因の紅色陰癬が混じっています。かゆみが少ないため放置されやすく、見た目の変化で気づく方が多い病気です。
紅色陰癬とは(仕組み)
紅色陰癬は、もともと皮膚の表面にいるコリネバクテリウムという細菌の仲間が、汗や湿気のこもる場所で増えすぎて起こる病気です。皮膚のいちばん浅いところ(角層)で増えるため、腫れたり膿んだりはせず、平らな色の変化として現れます。
できやすい場所は、皮膚と皮膚が触れ合って蒸れる場所です。
- 足の指の間(とくに薬指と小指の間): いちばん多い場所です。白くふやけて皮がむけ、水虫とそっくりに見えます
- 股のつけ根: 茶色〜赤茶色の斑が太ももの内側に広がります
- ワキの下、乳房の下、お腹のしわ
汗をかきやすい方、肥満傾向の方、糖尿病のある方、高温多湿の環境で働く方にできやすいことが知られています。人から人へうつることは、日常生活ではほとんど問題になりません。
症状・見分け方(水虫・いんきんたむしとの違い)
紅色陰癬の斑は、表面が細かく粉をふいたように見え、縁がはっきりしているのに、縁だけが赤く盛り上がることは少ないのが特徴です。かゆみはないか、あっても軽いことがほとんどです。
| 病気 | 原因 | 見た目の特徴 | かゆみ |
|---|---|---|---|
| いんきんたむし(股部白癬) | カビ(白癬菌) | 縁が赤く盛り上がり、中心が治りかけて輪のように見える | 強いことが多い |
| 紅色陰癬 | 細菌(コリネバクテリウム) | 茶色〜赤茶色の平らな斑。縁ははっきりしているが、盛り上がりは目立たない | ない〜軽い |
| カンジダ症 | カビ(カンジダ) | 赤くじくじくし、周りに小さな赤いブツブツが飛び散る | ヒリヒリ・かゆみ |
| 間擦疹(すれ・蒸れ) | 摩擦と湿気 | しわに沿った赤み。範囲はしわの形に一致する | ヒリヒリ |
見た目だけでは見分けがつかないことも多く、水虫と紅色陰癬が同じ場所に一緒にいることもあります。皮膚科では、皮膚の表面を少し取ってカビがいるかを顕微鏡で調べる検査(真菌検査)や、ウッド灯という暗い紫色の光を当てる検査を行います。紅色陰癬は、この光を当てると赤〜サンゴ色に光って見えるため、その場で見当をつけることができます。
治療・セルフケア
治療は塗り薬が基本で、範囲が狭ければ数週間でほぼ消えていきます。
- 抗菌薬の塗り薬: 原因の細菌に直接効きます
- 一部の抗真菌薬の塗り薬: カビの薬の中には、この細菌にも効く成分があります。水虫が同時にいる場合に使い分けます
- 抗菌薬の飲み薬: 範囲が広い場合や、塗り薬で治りにくい場合に検討します
「市販の水虫薬が効かなかった」という方の中には、成分がこの細菌に効きにくかった方と、実は水虫だったが塗り方が足りなかった方の両方がいます。同じ薬を漫然と塗り続けず、一度検査で原因をはっきりさせるのが近道です。
治ったあとも、蒸れが続くと再発しやすい病気です。次のことを続けてください。
- 汗をかいたら早めに拭く・着替える: 細菌が増える条件(湿気)を断つためです
- 入浴後は指の間や股をしっかり乾かす: タオルで押さえるように拭き、必要ならドライヤーの冷風を使います
- 通気性のよい下着・靴下を選ぶ: 綿や吸湿性のある素材が向いています
- 石けんでこすりすぎない: 皮膚のバリアが弱ると、かえって治りにくくなります
受診の目安
- 股・ワキ・足の指の間の色の変化が、2週間以上続いている
- 市販の水虫薬・いんきんたむしの薬を使っても良くならない
- 治ってもすぐに同じ場所に繰り返す
- 糖尿病があり、足の指の間がただれている(細菌感染が深くなる前に受診してください)
足の指の間が赤く腫れて熱をもつ、痛みが強い、熱が出た、という場合は、別の細菌感染(蜂窩織炎など)が起きている可能性があるため、早めに受診してください。
よくある質問
家族にうつりますか?お風呂は別にしたほうがいいですか?
原因の細菌は誰の皮膚にもいる常在菌で、蒸れなどの条件がそろったときに増えるものです。お風呂やタオルを分ける必要は基本的にありません。ただ、水虫が一緒にいる場合はバスマットなどからうつることがあるため、検査で水虫の有無を確かめておくと安心です。
色はすぐに元に戻りますか?
治療で細菌が減ると、粉をふいたような表面はわりと早く落ち着きます。茶色っぽさは少し遅れて薄くなっていくため、見た目が完全に戻るまでには数週間かかることがあります。
受診前に市販薬を塗っていても大丈夫ですか?
塗っていても受診はできますが、カビの検査は薬の影響で結果が出にくくなることがあります。可能であれば、受診前の数日は塗るのを控えてください。何を塗っていたか分かるように、薬の箱や名前のメモを持参するとスムーズです。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 白癬(みずむし・たむし)(確認日: 2026-10-02)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-02)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

