「二の腕がずっとザラザラしていて、半袖になるのが気になる」「お風呂でゴシゴシ洗っても取れない」「ニキビだと思ってニキビ用の薬を塗ったが変わらない」——思春期ごろから気づく方が多く、家族にも同じ肌質の人がいることの多いこの症状は、毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)と呼ばれます。「毛孔性角化症」「サメ肌」と表現されることもあります。
毛孔性苔癬とはどういう状態か
毛穴の出口では、古くなった角質がはがれて外へ排出されていきます。毛孔性苔癬では、この角質のはがれ方がうまくいかず、毛穴の出口に角質が栓のようにたまります。その栓が小さく盛り上がって、指で触るとザラザラ、目で見ると1〜3mmの粒がびっしり並んで見える、という状態になります。
栓の中に毛が閉じ込められると、粒の中に黒い点や、丸まった毛が透けて見えることがあります。周囲が赤みを帯びるタイプもあります。
なぜできるのか
- 体質(遺伝的な要素) — 家族に同じ症状の方がいることが多く、もっとも大きな要因です
- 年齢 — 10代で目立ちはじめ、20代でピークを迎え、30代以降は徐々に軽くなる経過をたどることが多いとされています
- 乾燥 — 角質の代謝が乱れやすく、冬に悪化して夏にやや軽くなる傾向があります
- 肥満・ホルモンの変化 — 思春期や妊娠期に目立ちやすくなることがあります
- アトピー素因 — 乾燥しやすい肌質の方に併存することがあります
不潔だからできるものでも、感染するものでもありません。洗い方の問題ではないという点は、最初にお伝えしておきたいところです。
できやすい場所と、紛らわしいもの
典型的には二の腕の外側、次いで太ももの外側・前面、お尻、頬に出ます。左右対称に広がるのが特徴です。
| 状態 | 見た目・手ざわり | 見分けの手がかり |
|---|---|---|
| 毛孔性苔癬 | 粒のそろった硬いザラつき。肌色〜赤み | 左右対称。膿を持たない。かゆみはないか軽い |
| ニキビ | 大きさがまちまち。白い芯や膿 | 顔・胸・背中中心。炎症で赤く腫れる |
| マラセチア毛包炎 | 粒のそろった赤いブツブツ | かゆみを伴う。汗をかく季節に悪化。真菌が原因 |
| 乾燥による粉ふき | 白く粉をふく。ザラつきは弱い | 保湿で数日〜数週で改善する |
| あせも | 小さな水ぶくれ状 | 汗をかいた後に急に出て、涼しくすると引く |
かゆみを伴い、汗をかく時期に増える場合はマラセチア毛包炎が混ざっている可能性があります。こちらは抗真菌薬が必要で、対処がまったく異なります。膿を持つブツブツが目立つならニキビの視点も必要です。
やってはいけないこと
この症状でもっとも多い失敗は、物理的に取ろうとすることです。
- ナイロンタオル・ボディブラシでこする — 角栓は取れず、皮膚の炎症だけが起こります。結果として茶色い色素沈着が残り、ブツブツより目立つようになることがあります
- スクラブの多用 — 一時的に滑らかになっても、刺激で角化が進み、元より硬くなることがあります
- 毛抜きでつまむ・爪でかき出す — 毛包の炎症を起こし、しこりや跡につながります
- 強い薬を自己判断で使い続ける — 赤みやヒリつきが出たまま続けると、かえって治りにくくなります
毛孔性苔癬は「削って取れる汚れ」ではなく、皮膚のつくられ方の傾向です。この前提が変わると、ケアの方向も自然に変わります。
自宅でできるケア
- 保湿を毎日続ける — 入浴後5〜10分以内に、たっぷり塗ります。乾燥が減るだけでザラつきの感じ方はかなり変わります
- 尿素配合の外用剤 — 角質を柔らかくする働きがあります。ただし赤みやヒリつきが出る方もいるため、少量から試します
- サリチル酸・乳酸など角質に働く成分 — 週数回から始め、刺激が出ないペースを探します
- 洗い方を変える — 手で泡を転がすように洗い、38〜40度のぬるめのお湯にとどめます
- 衣類の摩擦を減らす — 締めつけの強い袖や、チクチクする素材を避けます
- 数か月単位で見る — 1〜2週間では判断できません。3か月ほど続けて変化を確認します
皮膚科での治療
毛孔性苔癬そのものは治療が必須の病気ではありません。そのうえで、赤みが強い・ざらつきが気になる・色素沈着が残っているといった状況に応じて、次のような選択肢があります。
- 角質を整える外用薬 — 尿素製剤、ビタミンD3外用薬、レチノイド系の外用薬などが検討されます
- 炎症への対応 — 赤みが強い時期に、短期間の抗炎症外用薬を用いることがあります
- マラセチア毛包炎の併存を確認 — かゆみがある場合は顕微鏡検査で確認し、抗真菌薬に切り替えます
質感や色調の改善を目的としたケミカルピーリング・レーザーなどの施術は、保険が適用されないことが一般的です。費用は1回あたり数千円〜2万円程度が目安ですが、範囲・回数・医療機関によって異なります。施術に伴い、赤み・ヒリつき・一時的な色素沈着といったリスクがあり、複数回を要することが多く、完全に平らになるとは限りません。
※質感や色調の改善のみを目的とした施術は自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。
受診の目安
- 保湿と角質ケアを3か月続けても変化がない
- かゆみがある(マラセチア毛包炎などの併存を確認する必要があります)
- 膿を持ったブツブツが混ざっている
- 赤みが強い、こすったあとの茶色い跡が残っている
- 急に増えた、あるいは今までなかった場所に広がった
- 市販の角質ケア製品でヒリヒリして続けられない
広範囲に急に増えた場合や、発熱・全身のだるさを伴う場合は別の原因を考える必要があります。判断に迷う時間帯であれば、救急安心センター事業(#7119)などの相談窓口を利用してください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(一覧)(確認日: 2026-08-30)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「アトピー性皮膚炎」(確認日: 2026-08-30)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン・指針一覧(確認日: 2026-08-30)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

