「扁桃炎と言われて抗菌薬を飲んだら、数日後に全身が真っ赤になった」。10代〜20代の方に多いこの経過の裏に、伝染性単核球症が隠れていることがあります。薬のアレルギーだと思い込んでしまうことも多いため、ここで仕組みと見分け方を整理します。
伝染性単核球症とは(仕組み)
多くは、EBウイルスというウイルスの感染で起こります。唾液を通してうつるため、思春期以降の若い方に多く、「キス病」と呼ばれることもあります。子どもの頃に感染した場合は、ふつうの風邪のように軽くすむことがほとんどです。
主な症状は次のとおりです。
- 発熱: 1〜2週間ほど続くことがあります
- 強いのどの痛み: 扁桃に白い膜がつき、扁桃炎とよく似ています
- 首のリンパ節の腫れ: 首の両側、とくに後ろ側が腫れやすいです
- だるさ: 熱が下がったあとも数週間続くことがあります
- まぶたのむくみ
- 肝臓や脾臓(ひぞう)が腫れる: 血液検査で肝臓の数値が上がることがあります
症状・見分け(発疹について)
伝染性単核球症そのものでも発疹が出ることはありますが、目立つのは抗菌薬を飲んだあとです。のどの症状が扁桃炎とそっくりなため、ペニシリン系などの抗菌薬が処方されることがあり、飲み始めて数日〜1週間ほどで、全身に赤い細かい発疹が広がることがあります。
| 項目 | 伝染性単核球症+抗菌薬の発疹 | ふつうの薬疹 | 溶連菌感染症の発疹 |
|---|---|---|---|
| 先に出る症状 | 長引く発熱、のどの痛み、首の腫れ | 薬を飲み始めた理由の病気による | 発熱、のどの痛み |
| 発疹の様子 | 全身に赤い細かい発疹〜大きく広がる赤み | さまざま | 細かい赤いブツブツ、舌が赤くブツブツ |
| 首のリンパ節 | 大きく腫れることが多い | 腫れないことが多い | 腫れることがある |
| 血液検査 | 白血球の中の特定の細胞が増える、肝臓の数値が上がる | 病気による | のどの検査で溶連菌が見つかる |
この発疹は、ウイルスの感染によって体の反応が一時的に強くなっているときに起こるもので、必ずしもその抗菌薬に一生アレルギーがあるという意味ではないと考えられています。ただし、本当の薬のアレルギーとの区別は簡単ではないため、自己判断で「次も飲んで大丈夫」とは決めないでください。
治療・セルフケア
伝染性単核球症のウイルスに直接効く薬はなく、体が自然に治すのを待つ治療になります。
- 抗菌薬で発疹が出た場合: その薬は中止します。かゆみには抗ヒスタミン薬(かゆみ止めの飲み薬)やステロイドの塗り薬を使います。発疹は多くの場合、1〜2週間ほどで引いていきます
- 発熱・のどの痛み: 解熱鎮痛薬で症状を和らげ、水分をとって休みます
- 激しい運動を控える: 腫れた脾臓は、強い衝撃で傷つくことがあります。サッカーや柔道、ラグビーなど体がぶつかる運動は、医師から許可が出るまで(目安として数週間)控えてください
受診の目安
- 抗菌薬を飲んでいる途中で、全身に発疹が出た(薬は飲まずに、処方した医療機関か皮膚科へ)
- 発熱とのどの痛みが1週間近く続き、首のリンパ節が腫れている
- 発疹に加えて、唇や口の中のただれ、目の充血、皮膚の水ぶくれがある: 重い薬疹の可能性があるため、その日のうちに受診してください
- 左のわき腹〜みぞおちの強い痛み、唾が飲み込めないほどのどが腫れる、息苦しい: すぐに救急を受診してください。迷うときは救急安心センター(#7119)へ
診察室でよく聞かれる質問
この抗菌薬は、今後もう使えませんか?
伝染性単核球症のときに出た発疹は、その薬への本当のアレルギーとは限らないとされています。ただし、どちらなのかを発疹の見た目だけで決めることはできません。お薬手帳には「伝染性単核球症のときに、この薬で発疹が出た」と経緯ごと書いておき、次に処方を受けるときに医師へ伝えてください。
学校や仕事は休んだほうがいいですか?
熱やだるさがある間は休むのが基本です。唾液でうつるため、熱が下がっても、しばらくはコップや食器の共用、キスは避けてください。出席や出勤の再開時期は、学校や職場の決まりと医師の判断で決めます。
発疹の跡は残りますか?
多くは跡を残さず引いていきます。かゆくて強くかき壊すと色素沈着が残ることがあるため、かゆみ止めを使ってかかないようにしてください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-14)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-14)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

