「すねに500円玉くらいの湿疹ができて、夜になるとかゆくて眠れない」「一つだったのが、いつの間にか腕にも増えた」「市販薬を塗ったら少し良くなったが、やめると戻る」——貨幣状湿疹は、見た目が特徴的なわりに名前が知られておらず、水虫やたむしと思って抗真菌薬を塗り、かえって悪化してから受診されることがよくあります。
貨幣状湿疹とは
貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)は、その名のとおりコイン状(円形〜楕円形)の湿疹です。直径1〜5cm程度で、周囲との境目がはっきりしています。表面は赤く、小さなブツブツや水疱がびっしり集まり、かくと液がにじんでかさぶたになります。
できやすいのは、すね(下腿)、太もも、腕、手の甲、背中など。乾燥しやすく、こすれやすい場所です。中年以降、特に高齢の方に多く見られますが、若い方にも起こります。冬から春にかけて増える傾向があります。
きっかけとして次のようなものが重なります。
- 皮膚の乾燥 — 暖房、入浴時のこすり洗い、加齢による皮脂の減少
- 虫刺されやかき傷 — 一か所のかき壊しから始まることがあります
- もともとのアトピー素因
- 細菌の関与 — かき壊した皮膚で細菌が増え、炎症が長引くことがあります
- 下肢のむくみ・血行の問題 — すねにできる場合の背景になることがあります
似た見た目の病気との見分け
| 病気 | 形の特徴 | 見分けの手がかり |
|---|---|---|
| 貨幣状湿疹 | 円形。全体が均一に赤く、ブツブツ・浸出液・かさぶた | 強いかゆみ。乾燥した部位に多発する |
| 体部白癬(たむし) | 円形だが中心が治って周りだけ盛り上がる | 顕微鏡検査で真菌が確認できる。ステロイドだけでは広がる |
| 乾癬 | 厚く盛り上がり、銀白色のかさぶたが付く | はがすと点状の出血。ひじ・ひざ・頭皮・爪にも変化 |
| ジベル薔薇色粃糠疹 | 楕円形の淡い紅斑が体幹に多数 | 皮膚の割線に沿って並ぶ。かゆみは軽いことが多い |
| 接触皮膚炎(かぶれ) | 触れた形に一致する | 時計・湿布・ベルトなど接触物の形と重なる |
自己判断で抗真菌薬を使わないことが重要です。貨幣状湿疹に抗真菌薬を塗ると刺激になって悪化することがあり、逆に白癬にステロイドを塗ると病変が広がります。円形の発疹は、顕微鏡での確認が最も確実な切り分けになります。
治療とセルフケア
治療の中心はステロイド外用薬です。貨幣状湿疹は炎症が強く、皮膚も厚くなりやすいため、部位に応じてしっかりした強さの薬を、治りきるまで使うのが基本になります。かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬の内服を併用します。ジュクジュクして細菌感染を伴う場合は、抗菌薬が使われることもあります。
セルフケアで重要なのは、周囲の乾燥をなくすことです。湿疹のできた場所だけでなく、その部位全体(すねなら脚全体)を保湿します。乾燥した皮膚が残っていると、次の湿疹がそこから始まります。
- 入浴は湯温38〜40度、長湯を避ける。ナイロンタオルでこすらない
- 入浴後すぐに保湿剤を塗る。冬は1日2回
- かゆいときは冷やす。爪を短く切り、かき壊しを減らす
- ウールなど刺激になる衣類を直接肌に当てない
- 良くなったように見えても、皮膚の手触りが周りと同じになるまで薬を続ける(早すぎる中断が再燃の最大の原因です)
治りかけの時期に、体のあちこちに小さな赤いブツブツが散らばってくることがあります。これは自家感作性皮膚炎と呼ばれ、元の湿疹の炎症が全身に波及した状態です。こうなると治療期間が長くなるため、そうなる前に元の湿疹を鎮めることが結果的に早道になります。
受診の目安
- 円形の湿疹が2週間以上続く、または数が増えてきた
- 市販薬を塗っても改善しない、塗ってから悪化した
- ジュクジュクした液が出る、黄色いかさぶたができた、痛みや熱を持っている(細菌感染の可能性)
- かゆみで眠れない
- 体のあちこちに小さな発疹が散らばってきた
- 足の裏や爪にも変化がある(白癬の可能性を確かめる必要があります)
- 脚のむくみを伴う、皮膚の色が茶色く変わってきた
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しており、開業後は湿疹・皮膚炎の診察に対応する予定です。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「白癬」(確認日: 2026-09-02)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(一覧)(確認日: 2026-09-02)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

