「介護しているが、お尻が赤くなってきた」「かかとが黒っぽい」「本人は痛いと言わない」——床ずれは、気づいたときには進んでいることが多い一方、予防と早期対応の効果がはっきりしている領域でもあります。ご家族が家庭で判断できる範囲を整理します。
なぜ床ずれができるのか
床ずれ(褥瘡)は、同じ場所に体重による圧がかかり続けて血の流れが妨げられ、皮膚と皮下の組織が傷む状態です。関わるのは圧だけではありません。
- 圧迫 — 骨が出ている場所ほど、狭い面積に力が集中します
- ずれ・摩擦 — ベッドの背を上げたときに体が下にずれる動きが、皮膚と深部の組織を引きはがす方向に働きます
- 湿り — 汗・尿・便で皮膚がふやけると、傷つきやすくなります
- 栄養状態 — たんぱく質やエネルギーが不足すると、皮膚の回復力が落ちます
- 感覚と動き — 痛みを感じにくい、自分で寝返りが打てない状態では、体が自然に行っている「体位を変える」働きが失われます
できやすい場所は決まっています。仙骨部(お尻の中央の骨)、かかと、くるぶし、股関節の外側、肩甲骨、後頭部、耳。座っている時間が長い方では坐骨部(お尻の左右)が加わります。毎日この場所を見ることが、最も効果のある習慣です。
段階と、家庭での見分け
| 段階 | 見た目 | 指で押したとき | 対応 |
|---|---|---|---|
| 危険なサイン(初期) | 赤みだけ。皮膚は破れていない | 押しても白くならない(消えない赤み) | ただちに圧を取り除く。受診・相談 |
| 一時的な圧迫 | 赤み | 押すと白くなり、離すと戻る。時間で消える | 体位を変えて経過を見る |
| 浅い傷 | 表面がむける、水ぶくれ、浅いくぼみ | 痛みを伴うことがある | 受診が必要 |
| 深い傷 | くぼみが深い、脂肪や骨が見える | — | 専門的な処置が必要 |
| 黒い・厚いかさぶた | 黒色や黄色の厚い膜で底が見えない | — | 深さの判定ができない。受診 |
「押して消えるかどうか」は、家庭でできる最も実用的な判定です。数秒間、指の腹で軽く押して離してください。白くならず赤いままなら、様子を見る段階ではありません。
また、かかとの黒ずみは見落とされがちです。靴下を毎日脱がせて確認してください。
家庭でできる予防
- 体位を変える — ベッドではおおむね2時間ごと、椅子では15〜30分ごとが目安とされます。完全に横向きにするのではなく、斜め30度ほどに傾けると骨への集中が減ります
- ずれを作らない — 背上げの前に膝を先に上げる、上げたあとに一度背中を浮かせて圧を抜く(背抜き)
- 体圧分散寝具 — エアマットレスやクッションの導入をケアマネジャー・訪問看護に相談してください。円座(ドーナツ型クッション)は、周囲に圧を集中させるためすすめられません
- 皮膚を清潔に、乾かしすぎない — 尿・便はすぐ拭き取り、こすらず押さえる。保湿で皮膚のやわらかさを保ちます
- 食事 — たんぱく質とエネルギーが不足していないか。食が細い場合は栄養の相談を
- 毎日、決まった場所を見る — お風呂やおむつ交換のタイミングで、骨の出ている場所を確認します
やってはいけないこととして、赤くなった場所をマッサージするがあります。かつて広く行われていましたが、すでに傷んでいる組織にさらに力を加えることになるため、現在はすすめられていません。またアルコールで拭く、ドライヤーで乾かす、市販の消毒薬を漫然と使うことも避けてください。
治療の考え方
治療は「圧を取り除くこと」が土台で、そのうえで傷の状態に合わせた処置を行います。塗り薬や被覆材(ドレッシング材)は、傷の深さ・滲出液の量・感染の有無によって選ばれます。同じ薬をずっと使うのではなく、段階に応じて変えていくのが基本です。
深い場合や、黒いかさぶたで底が見えない場合には、壊れた組織を取り除く処置や手術が検討されることがあります。感染を伴えば全身の治療が必要になります。訪問看護・ケアマネジャー・かかりつけ医との連携が実際の鍵になります。
受診の目安
- 押しても消えない赤みがある
- 皮膚が破れた、水ぶくれができた、くぼんでいる
- 黒い・黄色い厚いかさぶたで底が見えない
- 膿・強いにおい・周囲の赤い広がりがある
- 発熱、食欲低下、いつもと様子が違う(感染が全身に及んでいる可能性)
- 予防の方法(マットレス・体位・栄養)について相談したい
次の場合は急いでください。発熱を伴い、傷の周囲が急に赤く広く腫れる、強い痛みや悪臭がある、意識がはっきりしない。夜間・休日で迷うときは救急安心センター(#7119)に相談してください。
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。床ずれは皮膚科だけで完結しないことが多く、在宅医療・看護・栄養の関係者と一緒に進める領域です。
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参考情報
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-08)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-08)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

