「肘と膝にガサガサした赤いところがあって、湿疹の薬を塗ってもなかなか治らない」。こうした相談の中に、乾癬が隠れていることがあります。乾癬と湿疹はどちらも赤くカサカサする発疹ですが、起こる仕組みが違い、効く治療も一部違います。とくに乾癬は、ここ十数年で治療の選択肢が大きく増えた病気です。「ずっと治らない湿疹」と思い込んでいる方にこそ、見分け方を知っておいていただきたいと思います。
乾癬と湿疹とは(起こる仕組みの違い)
乾癬は、免疫(体を守るしくみ)の働きが過剰になり、皮膚の表面の細胞が通常よりずっと速いペースで作られてしまう病気です。ふだんの皮膚はおよそ1か月ほどかけて生まれ変わりますが、乾癬の部分ではそれが数日にまで早まるとされ、はがれきれない角質が積み重なって、厚い赤みと白いかさぶた(鱗屑・りんせつ)になります。体質に加えて、肥満、喫煙、飲酒、ストレス、感染症、一部の薬などが悪化のきっかけになります。
湿疹は、ひとつの病名でもあり、皮膚の炎症を広く指す総称でもあります。皮膚のバリア(外からの刺激を防ぐ働き)が弱ったところに、乾燥・汗・洗剤・金属などの刺激やアレルギーが加わって炎症が起こります。アトピー性皮膚炎、手湿疹、かぶれ(接触皮膚炎)なども湿疹の仲間です。
どちらも「うつる病気」ではありません。乾癬は見た目が目立つため、プールや温泉で周囲の目が気になるという声をよく聞きますが、人から人へ感染することはありません。
症状・見分け方(乾癬と湿疹の比較)
| 比べるポイント | 乾癬(尋常性乾癬) | 湿疹 |
|---|---|---|
| 見た目 | 境目がくっきりした、厚く盛り上がった赤み | 境目がぼんやりした赤み。細かいブツブツが混ざる |
| 表面 | 銀白色のフケのようなかさぶたが重なり、ポロポロはがれる | カサカサ、じくじく、かき壊した跡 |
| できやすい場所 | 頭皮、肘、膝、腰、お尻など、こすれやすい場所 | 顔、首、肘の内側、膝の裏、手など(種類による) |
| かゆみ | ないこともあるが、かゆい人も多い | 強いことが多い |
| 爪 | 点状のへこみ、厚くなる、浮く、変色することがある | 手湿疹で爪が波打つことはあるが目立たないことが多い |
| 関節 | 指・かかと・腰などの関節が痛む・腫れることがある(乾癬性関節炎) | 関節の症状はない |
| 経過 | 良くなったり悪くなったりを長く繰り返す | 原因を避け、治療すると落ち着きやすい |
ほかにも、乾癬には「傷や摩擦を受けた場所に新しい発疹が出る」という特徴があり、ベルトや下着のゴムが当たる場所に並んで出ることがあります。頭皮の乾癬は、フケ症や脂漏性皮膚炎(脂の多い場所の湿疹)とよく似ていて、見た目だけでは区別が難しいことも少なくありません。
皮膚科では、発疹の形・場所・爪の様子を合わせて診断します。迷う場合は、皮膚の一部を取って顕微鏡で調べる検査(皮膚生検)を行うこともあります。
治療・セルフケア
乾癬の治療は、軽いうちは塗り薬から始め、効きが足りない場合に段階的に強い治療を加えていくのが基本です。
- 塗り薬: ステロイド外用薬と、活性型ビタミンD3外用薬が中心です。この2つを1本に配合した薬もあり、1日1回で済むものが多く使われています。
- 光線療法: 治療に効く波長の紫外線(ナローバンドUVB、エキシマライトなど)を患部に当てます。週に1〜2回程度の通院で続けるのが一般的です。
- 飲み薬: 免疫の働きを調整するアプレミラストや、シクロスポリン、エトレチナートなどが使われます。
- 生物学的製剤(注射薬): 乾癬の炎症に関わる物質をピンポイントで抑える注射薬です。塗り薬や飲み薬で効果が不十分な場合や、関節の症状がある場合に検討され、日本皮膚科学会が承認した施設で使われます。
一方、湿疹は、ステロイド外用薬で炎症を抑え、保湿剤でバリアを整え、原因となる刺激を避けるのが基本です。治療の土台は似ていますが、乾癬は長く付き合う前提で「良い状態を保つ」ことを目標にするのが大きな違いです。
セルフケアとしては、患部をこすらない・かさぶたを無理にはがさないことが大切です。はがすとその刺激で新しい発疹が出ることがあるためです。乾燥すると悪化しやすいため保湿を続け、肥満の方は体重を減らす、たばこを控える、飲酒を減らすといった生活の見直しも、治療の効きを良くする助けになります。日光を適度に浴びると良くなる方もいますが、日焼けするほど浴びると逆に悪化するため、ほどほどにしましょう。
受診の目安
- 湿疹の塗り薬を2〜3週間使っても、境目のはっきりした厚い赤みが残る
- 頭皮のフケが厚く、生え際や耳の後ろまで赤みが広がっている
- 爪にへこみ・厚み・浮きがある
- 手足の指の関節、かかと、腰などに痛みや腫れがある
関節の症状は、放っておくと関節の変形につながることがあるため、皮膚の発疹と一緒に必ず医師に伝えてください。
また、全身の皮膚が急に真っ赤になる、小さな膿の粒(膿疱)がたくさん出て高い熱が出る、寒気やだるさが強い、といった場合は、乾癬が重症化しているおそれがあります。早めに医療機関を受診してください。夜間・休日に受診先に迷うときは救急安心センター事業(#7119)に相談でき、ぐったりして動けないなど緊急性が高いと感じたら119番に連絡してください。
よくある質問
乾癬は家族や周りの人にうつりますか?
うつりません。乾癬は免疫の働きの偏りで起こる病気で、感染症ではないため、同じお風呂やプールに入っても、タオルを共用しても人にうつることはありません。家族に乾癬の方がいると出やすい傾向はありますが、それは体質の話です。
市販の湿疹の薬を塗っていてもいいですか?
一時的に赤みが引くことはありますが、乾癬の場合は再びぶり返しやすく、塗り続けても根本的な改善につながりにくいことがあります。市販薬を1〜2週間使っても変わらない、または何度も同じ場所に出る場合は、皮膚科で診断をつけてから治療を選ぶ方が近道です。
乾癬は治りますか?
体質がかかわるため、再発しやすい病気です。ただし、今は治療の選択肢が増えており、症状がほとんど目立たない状態を長く保てる方も多くなっています。「治らない」とあきらめず、今の治療で満足できていなければ、次の選択肢を医師に相談してください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-29)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-29)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

