「庭仕事中に古い釘を踏んでしまった」「サビた針金が手に刺さった。血はすぐ止まったけれど大丈夫?」。刺し傷は入口が小さく、出血も少ないことが多いため、つい軽く見がちです。ところが刺し傷は、すり傷や切り傷とは危ないところが違う傷です。その場でやることと、受診の目安を整理します。
刺し傷とは(なぜ小さくても注意が必要か)
すり傷や切り傷は傷口が開いているので、水で洗えば汚れを流し出せます。刺し傷は入口が小さく、奥に向かって細く深いため、次のようなことが起こりやすくなります。
- 汚れや異物が奥に残る: 土・サビ・靴底のゴムや布の切れはしが一緒に押し込まれることがあります
- 入口がすぐふさがる: 表面は早く閉じるので、奥に入った細菌が外に出られず、中で増えやすくなります
- 空気の少ない環境ができる: 破傷風菌は空気(酸素)の少ない深い傷で増えやすい性質があります
破傷風菌は土の中に広く存在します。「サビた釘だから危ない」のではなく、「土や汚れと一緒に深く刺さったから危ない」と考えるのが正確です。
症状・見分け方(受診を急ぐサイン)
| 状況 | 考えること | 目安 |
|---|---|---|
| 深く刺さった・土や泥で汚れている | 奥の汚れ、化膿、破傷風 | 当日中に受診 |
| 刺さったものが折れて残っている気がする | 異物の残存 | 当日中に受診 |
| 数日後に赤く腫れて痛みが強くなってきた | 細菌感染(化膿・蜂窩織炎) | 早めに受診 |
| 赤い線が手足の付け根の方へ伸びる・熱が出た | リンパ管炎など感染の広がり | すぐ受診 |
| 口が開けにくい・顔や首がこわばる | 破傷風の初期症状の可能性 | 救急受診 |
足の裏の刺し傷は、靴の上から刺さると靴底の素材や靴下の繊維が奥に入り込むことがあります。数日たってから腫れてくることが多いので、刺さった直後に問題がなくても経過を見てください。
息苦しさ・口の開けにくさ・けいれんなど全身の症状が出た場合は、ためらわず救急車を呼んでください。判断に迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
その場でやること(応急処置)
- 刺さったものを抜く: 浅く、簡単に抜けるものは抜きます。深く刺さって抜けない・抜くと大出血しそうなときは、無理に抜かずにそのまま受診します
- 流水でよく洗う: 水道水で、傷口のまわりを含めてしっかり洗い流します。汚れを外に出すことがいちばん大切です
- 圧迫して止血: 清潔なガーゼやハンカチで押さえます
- 覆って受診: 清潔なガーゼで覆い、傷の状態を見せられるようにして受診します
傷口を自分で針などで広げたり、えぐって異物を取ろうとしたりするのはやめてください。かえって奥へ押し込んだり、傷を汚したりすることがあるためです。
病院での治療
- 傷の確認と洗浄: 必要に応じて局所麻酔をして傷の中を確認し、汚れや異物を取り除きます。異物が疑われるときはレントゲンや超音波で確かめることがあります
- 抗菌薬: 汚れの強い傷や、感染しやすい場所(手・足)の深い傷では、化膿を防ぐために飲み薬を出すことがあります
- 破傷風の予防: これまでのワクチン接種歴と傷の汚れ具合から、破傷風トキソイド(ワクチン)や、必要に応じて免疫グロブリンの注射を検討します
破傷風のワクチンは子どものころの定期接種に含まれていますが、効果は年数とともに弱まっていくとされています。大人になってから追加接種をしていない方や、接種歴が分からない方は、受診時にそのまま伝えてください。それだけで十分判断材料になります。
受診の目安
- 深く刺さった、土や泥・サビで汚れたものが刺さった
- 刺さったものの一部が残っている気がする
- 動物や人にかまれた(刺し傷と同じく奥に細菌が入りやすい傷です)
- 数日して赤み・腫れ・痛み・熱っぽさが増してきた
- 糖尿病がある、免疫を抑える薬を使っているなど、感染症にかかりやすい
診察室でよく聞かれる質問
血が出たほうが汚れが流れて安心ですか?
出血で少し汚れが流れることはありますが、それで奥まできれいになるわけではありません。流水でしっかり洗い、深い傷は受診して確認するのが確実です。
破傷風のワクチンを打ったか覚えていません
覚えていない方はとても多いです。母子手帳が手元にあれば確認できますが、分からなければ「分からない」と伝えてください。傷の状態と合わせて、必要な予防を判断します。
絆創膏で密閉して治してもいいですか?
刺し傷は、奥の汚れを閉じ込めると化膿しやすくなります。深い刺し傷を密閉性の高い絆創膏でふさいで様子を見るのは避けてください。まず受診して、洗浄や確認をしてもらうことが先です。
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参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-07)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-07)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

