「大人ニキビだと思って何年もケアしているのに、赤みが消えない」。この訴えで来られた方の中に、一定の割合で酒さ(しゅさ)の方がいます。見た目が似ているので混同されやすいのですが、原因が違うため、入口を間違えると時間だけが過ぎてしまいます。まず何が違うのかを整理します。
ニキビは「毛穴のつまり」、酒さは「血管と炎症の過敏さ」
ニキビは、毛穴の出口が角質で塞がれて皮脂が溜まり(これが白ニキビ・黒ニキビ=面皰)、そこでアクネ菌が増えて炎症を起こす病気です。出発点が「詰まり」なので、詰まりを取る薬が治療の中心になります(関連記事: ニキビ治療の基本)。
酒さは、顔の中央部(頬・鼻・眉間・あご)の血管と免疫の反応が過敏になり、赤みやほてりが続く病気です。毛穴の詰まりから始まるわけではないため、面皰ができません。これが最大の見分けどころです。赤みだけの段階から、赤いブツブツや膿をもったブツブツが混じる段階、鼻が厚ぼったく変形していく段階まで幅があります。
見分け方の表
| 酒さ | ニキビ | |
|---|---|---|
| 面皰(白・黒ニキビ) | できない | できる |
| 赤み | ブツブツが無いときも赤みが残る | ブツブツが治れば引いていく |
| ほてり | 熱い・ヒリヒリする感覚を伴う | 基本的にない |
| 悪化のきっかけ | 温度差・入浴・飲酒・辛い物・日光・緊張 | 生理周期・皮脂の増加・摩擦 |
| 細い血管 | 頬や小鼻に赤い筋が見えることがある | 見えない |
| 出る場所 | 顔の中央。背中や胸には出ない | 顔・背中・胸など皮脂の多い場所 |
| 年齢 | 30代以降に多い | 思春期から成人まで幅広い |
| 目の症状 | 目の充血・ゴロゴロ感を伴うことがある | ない |
もうひとつ、診察室で必ず確認するのがステロイド外用薬を顔に塗り続けていないかです。湿疹として出された薬を自己判断で長く顔に使い続けると、赤みと小さなブツブツが出る状態(酒さ様皮膚炎)になることがあります。この場合は薬をやめる方向に舵を切る必要があり、塗り続けるほど悪くなります。「塗ると一時的に良くなるが、やめると前より赤くなる」という経過があれば、必ず伝えてください。
治療 — ニキビの薬では酒さは良くならない
ニキビは、アダパレンや過酸化ベンゾイルといった、毛穴の詰まりに働く塗り薬が基本です(関連記事: ニキビの塗り薬)。炎症が強ければ抗菌薬の内服を一定期間併用します(関連記事: ニキビの飲み薬)。そして落ち着いたあとも、詰まりを防ぐ薬は続けるのが定石です。ここをやめると戻ります。
酒さは、まず刺激を減らすことが治療の土台になります。そのうえで、メトロニダゾールの塗り薬が保険で使えます。赤いブツブツや膿をもったブツブツが多い場合には抗菌薬の内服が使われることがありますが、酒さに対しては適応外使用となる薬剤もあるため、目的とリスクの説明を受けたうえで使います。赤みそのものや細い血管の目立ちには、レーザーや光治療といった自由診療の手段が選ばれることもあります。
※酒さの赤みに対するレーザー・光治療は自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。施術後に赤みや軽い腫れが数日残ることがあります。
刺激を減らす、というのは具体的にこういうことです。洗顔はぬるま湯で、こすらない。マッサージやスクラブはやめる。熱い風呂・サウナ・辛い物・アルコールは赤みが出る引き金になるので、ひどい時期は控える。日焼け止めは使うが、しみるタイプは変える。地味ですが、これをやめられるかどうかで経過がはっきり変わります。なぜなら酒さは、刺激が入るたびに炎症が呼び戻される病気だからです。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 酒さは治りますか? | 症状を抑えて目立たない状態を保つことはできますが、体質として付き合っていく病気です | 血管と炎症の反応しやすさが背景にあるためです。良くなったあとも、悪化要因を避ける習慣は続けます |
| 化粧はしていいですか? | 構いません。ただし落とすときにこすらないでください | クレンジングの摩擦と洗浄力が、実際にはいちばんの刺激になっていることが多いためです |
| 日焼け止めは何を選べばいい? | しみないものを最優先で選んでください | 紫外線は悪化要因ですが、しみる日焼け止めを我慢して使えばかえって炎症を煽るためです(関連記事: 日焼け止めの選び方) |
| 顔の赤みは酒さ以外にもありますか? | あります | 脂漏性皮膚炎・接触皮膚炎・口囲皮膚炎・全身の病気に伴う赤みなど、鑑別は複数あります(関連記事: 顔の赤み) |
| 鼻が赤く厚くなるのはお酒のせい? | 飲酒が原因とは限りません | 酒さの進んだ形(鼻瘤)で、お酒を飲まない方にも起こります。誤解されやすい点なので、はっきりお伝えしています |
受診の目安
- 受診を — ニキビの治療を3か月続けても赤みが引かない
- 受診を — 白ニキビ・黒ニキビは無いのに、赤いブツブツと赤みが顔の中央に続く
- 受診を — 入浴や飲酒のあとに顔がカッと赤くなり、なかなか戻らない
- 受診を — 顔に塗ったステロイドをやめると赤みがぶり返す
- 早めの受診を — 目の充血・ゴロゴロ感・まぶたの縁の炎症を伴う(眼科との連携が必要になることがあります)
- 早めの受診を — 鼻が厚ぼったくなってきた
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「にきび」(確認日: 2026-09-21)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン(確認日: 2026-09-21)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

