「菌がいると肌荒れするから、しっかり除菌したほうがいい?」「美肌菌という言葉を聞いたけど本当?」。皮膚の常在菌は、ここ数年でよく話題になるようになりました。皮膚の表面で何が起きているのかを知ると、毎日の洗い方やスキンケアの考え方が変わります。
皮膚の常在菌とは(仕組み)
常在菌とは、病気を起こさずに、ふだんから皮膚の表面や毛穴にすみついている菌のことです。代表的なものに、次のような菌がいます。
- 表皮ブドウ球菌: 皮膚の表面に多くすむ菌。汗や皮脂を分解して、皮膚の表面を弱酸性に保つ働きがあるとされています。弱酸性の環境は、悪さをする菌が増えにくい環境です
- アクネ菌: 毛穴の奥にすむ菌。ふだんは皮膚を守る側にいますが、毛穴が詰まって皮脂がたまると増え、ニキビの炎症に関わります
- マラセチア: 皮脂の多い場所にすむカビの一種。増えすぎると、脂漏性皮膚炎やマラセチア毛包炎の原因になります
一方、黄色ブドウ球菌は、健康な皮膚には少ない菌ですが、皮膚のバリアが弱っているところでは増えやすく、とびひの原因になるほか、アトピー性皮膚炎の悪化に関わることが知られています。
大切なのは、どれか1種類の菌が「良い」「悪い」と決まっているのではなく、皮膚の環境とバランスによって、同じ菌が守る側にも悪化させる側にもなるということです。
バランスが崩れたときに起こること・見分け方
| 状態 | 関わる菌 | 皮膚に出ること |
|---|---|---|
| アトピー性皮膚炎の悪化 | 黄色ブドウ球菌が増える | 赤み・ジクジク・かゆみの悪化 |
| ニキビ | 毛穴の中でアクネ菌が増える | 赤いブツブツ・膿をもったブツブツ |
| 脂漏性皮膚炎 | マラセチアが関わる | 小鼻のわきや頭皮の赤みとフケ |
| とびひ | 黄色ブドウ球菌・溶連菌が皮膚に入る | 水ぶくれ・ただれが広がる |
どれも、菌そのものよりも「菌が増えやすい皮膚の状態」(バリアが弱い、毛穴が詰まっている、皮脂が多い、湿って蒸れている)が背景にあります。
セルフケア(常在菌と上手に付き合う方法)
- 洗いすぎない: 石けんやボディソープは、汚れや汗の多い場所を中心に、泡で包むように洗います。熱いお湯やナイロンタオルでのゴシゴシ洗いは、皮脂や角質を取りすぎてバリアを弱めます
- 保湿でバリアを保つ: バリアが整っていると、悪さをする菌が増えにくくなります。入浴後は早めに保湿剤を塗ってください
- 除菌は必要な場面に絞る: 手指の消毒は感染症予防として大切ですが、顔や体の皮膚を日常的に除菌する必要はありません
- 汗はかいたままにしない: 汗をかいたらシャワーで流すか、濡れたタオルで拭きます。蒸れた状態が続くと、菌のバランスが偏りやすくなります
アトピー性皮膚炎で黄色ブドウ球菌が増えている場合も、まずは塗り薬で炎症を抑えることが治療の中心です。炎症が治まってバリアが回復すると、菌のバランスも整いやすくなります。
受診の目安
- 湿疹がジクジクする、黄色いかさぶたがつく(細菌が増えている可能性があります)
- 水ぶくれやただれが広がっていく
- ニキビが繰り返し、跡が残りそう
- フケと赤みが続く
- 洗い方やスキンケアを見直しても、肌荒れが続く
診察室でよく聞かれる質問
「美肌菌」を増やす化粧品は効果がありますか?
常在菌と肌の関係は研究が進んでいる分野ですが、特定の菌を化粧品で増やして肌がきれいになる、という効果がはっきり確かめられているとはまだ言いにくい段階です。まずは、菌が暮らしやすい環境(洗いすぎない・保湿する)を整えることを優先してください。
殺菌成分の入った洗顔料やボディソープは使わないほうがいいですか?
ニキビや体のにおいが気になる場所に使うのは一つの方法です。ただ、全身に毎日使うと、皮膚を守る側の菌まで減らしてしまう可能性があります。気になる場所に絞って使い、乾燥や刺激を感じたら普通の石けんに戻してください。
抗菌薬の塗り薬を長く使っても大丈夫ですか?
抗菌薬を長く使い続けると、薬が効きにくい菌(耐性菌)が増えることがあります。ニキビの治療では、抗菌薬を使う期間を区切り、毛穴の詰まりを改善する薬に切り替えていくのが一般的です。自己判断で長く使い続けず、医師と相談してください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A アトピー性皮膚炎(確認日: 2026-10-05)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A にきび(確認日: 2026-10-05)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A とびひ(確認日: 2026-10-05)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

