「足の裏やふちに小さなプツプツした水ぶくれができて、かゆい」。皮膚科では年間を通して非常に多い相談で、そのたびに同じ説明をしています。この見た目から、水虫(小水疱型の足白癬)と汗疱(異汗性湿疹)を目で区別することは、専門医でもできません。できないからこそ検査をするのですが、受診前に市販薬を塗ってしまう方が本当に多く、そこで話がややこしくなります。まず何が違うのかを整理します。
出発点がまったく違う — 片方はカビ、片方は汗
水虫(足白癬)は、白癬菌というカビ(真菌)が足の皮膚の浅いところに住みついて起こります。指の間がふやける型、かかとが硬くなる型のほかに、土踏まずや足のふちに小さな水ぶくれが並ぶ「小水疱型」があり、これが汗疱と紛らわしい型です。カビが原因なので、人にうつりますし、放っておいても自然には消えません。
汗疱(異汗性湿疹)は、手のひら・足の裏・指の側面という汗腺が特に多い場所に、小さな水ぶくれが左右対称に出てくる湿疹です。汗との関係が深いと考えられており、汗をかく季節に悪化し、涼しくなると落ち着く、という波を持つ方が多くみられます。カビではないので、人にはうつりません。数週間すると水ぶくれが乾いて皮がむけ、また出る、というサイクルを繰り返すのが典型です。
見分け方の表
| 水虫(小水疱型) | 汗疱(異汗性湿疹) | |
|---|---|---|
| 左右差 | 片足だけのことが多い | 両側に左右対称で出やすい |
| 出る場所 | 土踏まず・足のふち・指の間 | 手のひら・指の側面にも同時に出ることがある |
| 手にも出るか | まれ(出ても片手のことが多い) | 手と足の両方に出ることが珍しくない |
| 季節性 | 夏に悪化しやすいが年中ある | 汗をかく時期に悪化し、冬に軽くなる波がある |
| 爪の変化 | 同じ足の爪が白く濁っていることがある | 基本的にない |
| 家族にうつるか | うつる | うつらない |
| 顕微鏡検査 | カビ(真菌)が見える | 見えない |
表にはしましたが、これはあくまで「疑いの強さ」を決める材料です。片足だけの汗疱もありますし、両足の水虫も普通にあります。同じ足の爪が白く濁っている、家族に水虫の人がいる、という2点は水虫を強く疑う手がかりになるので、受診のときに必ず伝えてください。
いちばん確実なのは顕微鏡検査。数分で結果が出ます
皮膚科では、水ぶくれの皮を少しだけ削り取って薬品で溶かし、顕微鏡でカビの糸(菌糸)が見えるかどうかを直接見ます。痛みはほとんどなく、その日のうちに結果が分かります。この検査でカビが見えれば水虫、見えなければ湿疹の仲間として治療を始める、というのが基本の流れです(関連記事: 水虫(足白癬)の基本)。
ここで強くお伝えしたいのが、受診前に市販の水虫薬を塗らないでほしい、ということです。理由は単純で、抗真菌薬を数日塗るとカビの数が減り、顕微鏡で見えなくなってしまうからです。見えなくなっても治っているわけではないので、「検査は陰性だったが実は水虫」という、いちばん厄介な状態になります。すでに塗ってしまった場合は、1〜2週間ほど休んでから検査することもあります。塗った事実を隠す必要はまったくないので、いつ・何を・何日塗ったかをそのまま伝えてください。
治療 — 逆をやると確実に悪化します
水虫は、抗真菌薬の塗り薬を使います。かゆみや水ぶくれが消えても菌はまだ残っているため、症状が消えてからさらに1〜2か月は塗り続けるのが定石です。ここでやめる方が非常に多く、それが「毎年繰り返す」の正体です。爪にも及んでいる場合は塗り薬だけでは届きにくく、飲み薬を検討します(関連記事: 爪水虫の治療)。
汗疱は湿疹なので、ステロイドの塗り薬で炎症を抑えるのが基本です。かゆみが強ければ抗ヒスタミン薬の飲み薬を併用します。そして、汗をかいたまま放置しない・靴の中を乾かす・こすらない、という生活面の調整が再発の間隔をはっきり変えます。金属アレルギーや喫煙が関係していることもあり、繰り返す方では一度掘り下げて調べることがあります。
逆をやるとどうなるか。水虫にステロイドを塗ると、かゆみは一時的に楽になりますがカビは増えて範囲が広がります(見た目が変わって診断も難しくなります)。汗疱に抗真菌薬を塗ると、効かないばかりか薬自体でかぶれて赤みとかゆみが増すことがあります。この2つは似ているのに真逆の薬を使う、という点が、自己判断で失敗しやすいいちばんの理由です。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 水ぶくれは潰していいですか? | 潰さないでください | 水ぶくれの屋根は傷を守るふたの役目をしています。破ると細菌が入り、とびひのように広がることがあるためです |
| 家族にうつりますか? | 水虫ならうつります。汗疱ならうつりません | だからこそ、どちらなのかを検査で決める意味があります。水虫の場合はバスマットとスリッパを分けるのが現実的な対策です |
| お風呂に入っていいですか? | どちらでも入って構いません | 清潔にすること自体は悪化要因ではありません。ただし洗うときにゴシゴシこすると、皮膚が傷ついて悪化します |
| プールや温泉に行っても大丈夫? | 行って構いませんが、上がったら足の指の間まで拭いて乾かしてください | 濡れたまま靴下を履くのがいちばん菌の増えやすい条件になるためです(関連記事: 手湿疹) |
| 治療はどれくらいかかりますか? | 水虫は最低でも2〜3か月、汗疱は波を見ながらの付き合いになります | 水虫は皮膚が生まれ変わる期間まで塗り続ける必要があり、汗疱は体質と季節の影響を受けるためです |
受診の目安
- 受診を — 足に小さな水ぶくれが出た(市販薬を塗る前に来てください)
- 受診を — 市販の水虫薬を2週間塗っても変わらない、またはかえって赤くなった
- 受診を — 同じ足の爪が白く濁ってきた
- 受診を — 手のひらと足の裏の両方に、左右対称に水ぶくれが出ている
- 早めの受診を — 水ぶくれの周りが赤く腫れて熱を持ち、押すと痛い(細菌感染が加わっている可能性があります)
- 早めの受診を — 足の甲まで赤みが広がり、発熱や寒気を伴う(蜂窩織炎が疑われます)
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「白癬・カンジダ症・マラセチア感染症」(確認日: 2026-09-22)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン(確認日: 2026-09-22)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

