「ずっとほくろだと思っていたものが、だんだん大きくなってきた」「かさぶたができては取れるのを繰り返し、治らない」——高齢の方の顔に多く、ほくろと見た目が似ているために様子を見られがちな病気です。特徴を整理します。
どういうものか
皮膚のいちばん外側の層(表皮)のいちばん下(基底層)にある細胞から発生する腫瘍です。日本人の皮膚がんの中で最も多く、長年の紫外線の影響が発生に関わるとされています。そのため、顔・頭・首など日光に当たりやすい場所に多く、高齢になるほど増えます。
大きな特徴は、その場でじわじわ広がる一方、他の臓器へ転移することはまれという点です。ただし放置すると深く広がり、目・鼻・耳など機能や見た目に関わる部分を巻き込みます。小さいうちに取るほうが、切除範囲も傷あとも小さくなります。
見た目の特徴と、ほくろとの違い
| 基底細胞癌で見られること | ふつうのほくろ | |
|---|---|---|
| 色 | 黒〜黒褐色。灰色がかった光沢を帯びることがある | 茶〜黒褐色で均一 |
| 大きさの変化 | 年単位でゆっくり大きくなる | ほとんど変わらない |
| 形 | 縁がロウ細工のように盛り上がり、中央がへこむことがある | 丸〜楕円で平ら〜半球 |
| 表面 | 出血する・かさぶたを繰り返す・治らない | 変化しない |
| 場所 | 鼻・目のまわり・頬・耳など顔の中心寄りに多い | どこでも |
| 年齢 | 中高年以降に多い | 若い頃からある |
「以前からあるほくろが変わらない」なら急ぐ理由は多くありません。注意するのは新しくできた/大きくなっている/出血やかさぶたを繰り返す/中央がくぼんで潰瘍になっているものです。色が薄く、赤みや光沢のあるしこりに見えるタイプもあり、見た目だけで断定はできません。
診断はどのように進むか
- ダーモスコピー——拡大鏡で皮膚の内部構造を観察する検査です。痛みがなく、その場で行えます
- 皮膚生検——診断を確定するために、局所麻酔で組織の一部(または全体)を採り、顕微鏡で調べます
- 広がりの確認——大きさや部位に応じて、切除の範囲を決めるための評価が行われます
ほくろとの区別は拡大して見ることで手がかりが増えます。気になるものは、削ったり自分で取ろうとしたりせず、触らずに受診してください。いじると診断が難しくなります。
治療の考え方
基本は手術による切除です。腫瘍の縁から一定の余裕をとって取り除き、必要に応じて皮膚を縫い寄せる、あるいは皮膚を移動・移植して閉じる方法がとられます。取ったものは顕微鏡で調べ、取り切れているかを確認します。
- 部位によって難しさが変わります。目のまわり・鼻・耳は、機能と見た目の両方を考えた設計が必要で、施設によっては連携先での対応となります
- 大きさ・年齢・全身状態によっては、放射線治療などが選ばれることもあります
- 治療後は再発や新たな発生がないかの経過観察が行われます。一度できた人は、他の場所にもできやすい傾向があるとされています
- 取り残しがあると再発します。「小さいから削るだけ」で済ませないのは、この理由によります
治療の内容と結果には個人差があり、傷あとの残り方も部位や体質で異なります。説明を受けたうえで方針を決めてください。
受診の目安
- 顔のできものが、この1〜2年で大きくなっている
- 出血する、かさぶたができては取れるのを繰り返す、治らない傷がある
- 縁が盛り上がって中央がへこんでいる
- 黒い部分が不均一で、境界がぼやけている
- 長年、屋外での仕事・活動が多かった
- 以前に皮膚がんや日光角化症を指摘されたことがある
急速に大きくなる、痛みや出血が強い、しこりが硬く動かない場合は、早めに受診してください。
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。皮膚外科を軸に、「これは取るべきものか、様子を見てよいものか」を判断するところからご相談を受けられる体制を準備しています。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「皮膚悪性腫瘍」(確認日: 2026-09-09)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ホクロ」(確認日: 2026-09-09)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

