「傷がミミズ腫れのように盛り上がってきた」「下着のゴムが当たるとかゆくて痛い」。産後は赤ちゃんのお世話で自分のことが後回しになりがちですが、傷あとの悩みは時間がたつほど治療に時間がかかります。気になったら早めに相談してください。
傷あとが盛り上がる仕組み
傷が治るとき、皮膚の下ではコラーゲン(皮膚の弾力のもとになる線維)が作られて傷をふさぎます。通常は必要な量が作られたところで落ち着き、赤みも引いていきます。ところが、傷に引っぱる力がかかり続けたり、体質的に反応が強かったりすると、コラーゲンが作られすぎて傷が盛り上がります。
下腹部は、座る・立つ・赤ちゃんを抱き上げるたびに皮膚が引っぱられる場所で、ケロイドや肥厚性瘢痕ができやすい部位のひとつとされています。
症状・見分け
| 項目 | 普通の治りかけの傷 | 肥厚性瘢痕 | ケロイド |
|---|---|---|---|
| 見た目 | 赤く、少し硬い | 赤く盛り上がる | 赤く盛り上がり、厚みが増す |
| 範囲 | 傷の幅のまま | 傷の幅のまま | 傷の幅を超えて、まわりに広がる |
| かゆみ・痛み | 軽い | あることが多い | 強いことが多い |
| 経過 | 半年〜1年で白く平らに | 時間とともに落ち着くことが多い | 自然には落ち着きにくい |
肥厚性瘢痕とケロイドは、はっきり分けられないこともあります。どちらも治療の考え方は似ていて、早く始めるほど治療の負担が少ないのが実際です(関連記事: ケロイド・肥厚性瘢痕とは)。
治療・セルフケア
産後すぐからできる予防
- 傷あとをテープで固定する: 傷の両側の皮膚を寄せるように、医療用の紙テープなどを貼って引っぱる力を減らします。数か月続けることが勧められます。貼り方は出産した病院の指示に従ってください
- シリコンジェルシート: 傷あとを保湿して落ち着かせる目的で使います
- 下着のゴムが傷に当たらないようにする: こすれる刺激で赤みが長引くことがあります
盛り上がってきたときの治療
皮膚科・形成外科では、主に次の治療を組み合わせます。
- ステロイドのテープ剤: 傷あとに貼って炎症を抑え、盛り上がりとかゆみを和らげます。保険で使え、治療の中心になります(関連記事: ステロイドテープの使い方)
- ステロイドの注射: 盛り上がりが強い場合に、傷あとに直接注射します
- 飲み薬: かゆみや炎症を抑える薬を使うことがあります
- 手術: ほかの治療で落ち着かない場合に、傷あとを切り取って縫い直します。ケロイドでは再発を防ぐために、手術のあとに放射線治療などを組み合わせることがあります
授乳中の場合
テープ剤や注射は、傷あとの範囲に使う治療で、授乳中でも使われることが多い治療です。飲み薬は授乳中かどうかで選び方が変わるため、授乳中であることを必ず伝えてください。
受診の目安
- 産後半年たっても、赤く盛り上がっている
- 傷の幅を超えて、まわりに広がってきた
- かゆみや痛みで眠れない、下着が当たるとつらい
- 傷あとの見た目が気になって、日常生活や気持ちに影響している
- 産後早い時期に、傷が開く・膿が出る・赤く腫れて熱をもつ・熱が出る: 感染の可能性があるため、出産した病院(産科)にすぐ連絡してください
診察室でよく聞かれる質問
次の出産も帝王切開の予定です。また盛り上がりますか?
体質があるため、同じように盛り上がる可能性はあります。一方で、次の手術のときに前の傷あとを取り除いて縫い直すこともできます。肥厚性瘢痕やケロイドがあったことを、産科の担当医に事前に伝えておいてください。
傷あとが白く平らになるまで、どのくらいかかりますか?
普通に治っていく傷でも、赤みが引いて白っぽい線になるまでには半年〜1年ほどかかります。それまでは、赤いことだけで心配しすぎなくて大丈夫です。盛り上がりやかゆみが強いかどうかが、治療を考える目安になります。
傷あとを日焼けさせないほうがいいですか?
赤みが残っている時期の傷あとは、紫外線で茶色く色が残ることがあります。下腹部は衣類で隠れることが多いですが、水着などで日に当たる場合は、衣類や日焼け止めで守ってください。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ケロイド(確認日: 2026-10-14)
- 日本皮膚科学会 ガイドライン一覧(確認日: 2026-10-14)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

