「ツバキの木の下を通っただけ」「洗濯物を取り込んだら夜中にかゆくて眠れなくなった」——毛虫皮膚炎の相談は、本人が毛虫を見ていないことがほとんどです。原因が分からないまま掻き広げてしまう点が、この皮膚炎のやっかいなところです。
なぜ、触っていないのに出るのか
原因はチャドクガなどの幼虫(毛虫)がもつ毒針毛です。長さ0.1mm前後のごく細かい毛で、目には見えず、風に乗って飛びます。直接毛虫に触れなくても、木の下を通った、干した洗濯物に付いた、剪定した枝を運んだだけで皮膚に刺さります。
チャドクガはツバキ・サザンカ・チャノキにつきます。庭木や生け垣に多く、年に2回(おおむね初夏と初秋)発生の山があるとされます。抜け殻や死骸、風で落ちた葉にも毒針毛は残るため、虫がいなくなった後の木の下でも起こります。
やっかいなのは、掻くことで毛が皮膚の上を移動し、周囲へ広がる点です。「昨日は首だけだったのに、今日は胸まで広がった」という経過は、多くの場合、虫のせいではなく掻いた手と衣類が毛を運んだ結果です。
症状の特徴
- 数時間〜半日ほど遅れてかゆみが出はじめることが多い
- 1〜2mmの赤いブツブツが、狭い範囲に数十個まとまって出る
- 首まわり・胸・腕の内側・脇腹など、衣類のすき間から入り込む場所に出やすい
- かゆみが強く、夜間や入浴後・温まったときに増す
- 1〜2週間ほど続くことがあり、通常の虫刺されより長引きやすい
- 掻き壊すと、じくじくしたり、色素沈着が残ったりする
ほかのかゆい発疹との見分け
| 状態 | ブツブツの並び | 時間の経過 | 見分けの手がかり |
|---|---|---|---|
| 毛虫皮膚炎 | ごく小さい粒が密集 | 数時間遅れて出て、1〜2週間続く | 庭木・洗濯物・屋外作業の心当たり。衣類のすき間に一致 |
| 蚊などの虫さされ | 数個がぽつぽつ離れて | 刺されてすぐ。数日で消える | 1個が大きく、中心に刺し口 |
| じんましん | 地図状に盛り上がる | 数時間で場所が移動して消える | あとに跡が残らない |
| あせも | 汗のたまる場所に細かく | 汗をかくと出る | 涼しくすると軽くなる |
| かぶれ(接触皮膚炎) | 触れた形どおりに境界がはっきり | 接触の1〜2日後 | 金属・化粧品などの使用範囲と一致 |
| 疥癬 | 指の間・手首・下腹部 | 数週間かけて増える | 家族にも同じかゆみが出る |
気づいたときの手当て(順番が大事)
- こすらない・掻かない。まずここです。こするほど毛が広がり刺さります
- 粘着テープを軽く当てて剥がす——皮膚の表面に残った毒針毛を取り除きます。強く押しつけず、貼って剥がすを場所を変えて繰り返します
- 着ていた服はそのまま脱ぎ、他の洗濯物と分けて洗う。毛は衣類に残ります。可能なら洗う前に外で払い、洗濯後は乾燥機や高温のアイロンを使うと残りにくくなります
- シャワーの流水で洗い流す。湯船につかると毛が湯に広がり、体の別の場所に付くことがあります。その日は湯船を避けます
- 冷やす。かゆみが強いときは、タオル越しに冷やすと落ち着きやすくなります
- かゆみ止めの外用で様子を見ます。改善しないときは受診してください
やらないほうがよいことは、タオルで強くこすって洗う、熱いお湯をかける、爪で掻く、市販薬を何種類も重ね塗りするです。いずれも広がりや悪化につながります。
庭と洗濯物での予防
- ツバキ・サザンカ・チャノキを剪定するときは、長袖・手袋・帽子・首を覆うもの・ゴーグルを着用します
- 作業後はその場で服を脱ぎ、屋外で払ってから洗濯します
- 毛虫を見つけても、棒でつついたり掃いたりしない。毛が舞い上がります。散水で濡らしてから処理する、枝ごと袋に入れるなどの方法が知られています
- 大きな群れは自分で処理せず、専門業者や自治体の窓口に相談します
- 発生期は、木の近くに洗濯物を干さない
受診の目安
- 市販のかゆみ止めで3〜4日たっても軽くならない
- 範囲が日ごとに広がっている
- 掻き壊してじくじくする、黄色いかさぶたがつく(とびひの併発が疑われます)
- 眠れないほどかゆい
- まぶた・唇のまわりに出た
- お子さんで掻くのを止められない
次の場合は急いでください。まぶたや唇が腫れて息苦しい、全身にじんましんが広がる、気が遠くなる——毛虫では多くありませんが、全身のアレルギー反応が疑われるときは救急要請が必要です。夜間・休日で迷うときは救急安心センター(#7119)に相談してください。
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。つくば周辺は庭木や生け垣にツバキ・サザンカが多く、初夏と初秋にこの相談が増える地域です。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「虫さされ」(確認日: 2026-09-08)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-08)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

