「妊娠後期に急にお腹に線が入った」「体重が増えた時期に太ももに出た」「成長期に膝の裏に出た」——妊娠に限らず、急に体が大きくなるあらゆる場面で起こります。思春期の男子で相談されることもあり、めずらしいものではありません。
何が起きているのか
皮膚は表皮・真皮・皮下組織の3層でできています。伸び縮みを支えているのは、真皮にあるコラーゲンとエラスチンという線維です。
体が急に大きくなると、この線維が引き伸ばされる速さについていけず、断裂します。断裂したところでは、表面の表皮が薄く引き伸ばされ、その下の血管が透けて見えます。これが最初に赤や紫の線として見える理由です。
時間がたつと血管の反応が落ち着き、色が引いて白い線になります。見た目は落ち着きますが、断裂した線維はそのままなので、皮膚が薄くくぼんだ質感が残ります。この段階は、傷あとの成熟した状態と同じです(関連記事: 傷あとをきれいに治すには)。
体質の影響も小さくありません。同じように体重が増えても、できる人とできない人がいます。ご家族に同じ経験がある方は、できやすい傾向があります。できてしまったことを「ケアを怠ったから」と考える必要はありません。
赤い時期と白い時期で、やることが変わる
| 赤い(紫がかった)時期 | 白い時期 | |
|---|---|---|
| 見た目 | 赤〜紫の線。やや盛り上がることも | 白く光る線。わずかにくぼむ |
| 時期 | できてから数か月以内 | 半年〜年単位が経過した状態 |
| 症状 | かゆみ・ヒリヒリ感が出ることがある | 症状はないことが多い |
| できること | 保湿・摩擦を避ける・体重の急変を避ける | 保湿は続ける。凹凸への対応は限られる |
| 変化の余地 | 比較的ある | 小さい |
「赤いうちに手を打つ」——これがいちばん大事な点です。白くなってしまってから相談に来られる方が多いのですが、その時点でできることは少なくなっています。いま赤い線があるなら、それは対策のしどきです。
予防とセルフケア
- 保湿を続ける — 皮膚がやわらかいほうが伸びに耐えます。妊娠中なら、お腹が目立つ前から始めるほうが理にかなっています(関連記事: 保湿剤の種類と使い分け)
- 塗るときはこすらない — なでるように広げます。強くマッサージすると、かえって刺激になります
- 体重の急な増減を避ける — 妊娠中の体重管理は産科の指導に従ってください。急に増える時期と急に減る時期の両方で起こります
- 下着や衣類のこすれを減らす — できかけの皮膚は弱くなっています
- かゆいときはかかない — かき壊すと、そこだけ色素沈着が残ります。冷やす・保湿するで対応してください
ただし、保湿をすれば必ず防げるというものではありません。体質と伸びる速さの影響が大きく、できてしまう方はできます。「防げなかった=やり方が悪かった」ではない、という点はお伝えしておきます。
医療でできること
白い線に対しては、皮膚の再構築を促すことを狙った施術——レーザーや、皮膚に微細な刺激を加える方法などが用いられることがあります。いずれも自由診療で、目標は「完全に消す」ではなく「目立ちにくくする」です。一度で終わるものではなく、複数回の施術を前提とすることが一般的です。
妊娠中・授乳中は行えない施術があり、時期の相談が必要です。また、ケロイドができやすい体質の方は、施術によって別の問題が起きることがあるため、必ず申し出てください(関連記事: ケロイド・肥厚性瘢痕)。
※妊娠線・肉割れに対する施術は自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。主なリスクとして、赤み・色素沈着・水ぶくれ・期待したほど変化を感じないことなどがあります。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 市販のクリームで消える? | 消えるとは言えませんが、保湿には意味があります | 断裂した真皮の線維が塗り薬で元に戻るわけではないためです |
| 時間がたてば薄くなる? | 色は薄くなります。凹凸は残ります | 色は血管の反応、凹凸は線維の断裂と、原因が別だからです |
| かゆいのは治りかけ? | 治りかけとは限りません | 伸びて薄くなった皮膚は乾燥しやすく、それだけでかゆくなるためです。保湿で和らぎます |
| 日焼けするとどうなる? | 周囲との差が目立ちます | 線の部分は日焼けしにくく、まわりだけ濃くなるためです |
| 次の妊娠でもできる? | できることがあります | 同じ仕組みで起こるためです。前回できた場所に重なることもあります |
受診の目安
- 相談を — いま赤い線がある(対策が効きやすい時期です)
- 受診を — かゆみが強く、かき壊してしまう
- 受診を — 線が盛り上がって硬くなってきた(ケロイドとの区別が必要です)
- 早めに受診 — 急に全身に出てきた、皮膚が薄くなって内出血しやすい、体重や体型が急に変わった(ホルモンの病気が背景にあることがあります)
- 相談を — ステロイドの塗り薬や内服を長く使っている(皮膚が薄くなる作用があるためです)
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ケロイド(確認日: 2026-09-15)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-15)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

