「妊娠してから顔のシミが濃くなった」「お腹がかゆくて眠れない」「授乳中だから薬は全部やめたほうがいいのか分からない」——この時期の肌の相談は、症状そのものより「どこまで対処してよいか分からない」ことが負担になりがちです。まず、何が起きているのかを整理します。
この時期に肌が変わる理由
妊娠中は、女性ホルモンをはじめとするホルモンバランスが大きく変動します。その影響で次のようなことが起こります。
- メラニンを作る働きが活発になる — 顔のシミ、乳輪・わき・外陰部の色が濃くなる、お腹の正中線が黒ずむ
- 皮脂の分泌量が変わる — ニキビが増える人もいれば、乾燥する人もいます
- 皮膚が伸ばされる — お腹・胸・太ももに妊娠線ができやすくなる
- 汗をかきやすくなる — あせもや、皮膚が重なる部分の炎症が起こりやすい
- バリア機能が不安定になる — もともとアトピー素因のある方は、良くなる場合と悪くなる場合の両方があります
よくある症状と考え方
| 症状 | 出やすい時期・場所 | 経過の見通し |
|---|---|---|
| 肝斑・色素沈着 | 頬・上唇・額/乳輪・正中線 | 出産後に薄くなることが多いが、時間がかかる |
| 妊娠線 | 中期以降のお腹・胸・太もも | 赤みは薄れ、白い線として残ることが多い |
| ニキビ | あご・フェイスライン | 変動しやすい。使える薬に制限がある |
| お腹のかゆみ・湿疹 | 中期以降。妊娠線に沿って出ることも | 保湿と外用で対応することが多い |
| あせも・すれ | 胸の下、脇、下腹部 | 汗と摩擦の対策で改善しやすい |
| 発疹のない全身のかゆみ | 後期。手のひら・足の裏が強い | 肝臓・胆汁の異常が背景のことがあり、要相談 |
薬をどう考えるか
この時期にいちばん多い誤解が、「妊娠中・授乳中だから、薬はすべてやめたほうがよい」というものです。実際には、症状を我慢して悪化させることのほうが負担になる場合があります。
- 自己判断で中止しない。もともと処方されている薬がある場合、勝手にやめることで症状が悪化することがあります
- 受診時に、妊娠週数・授乳中であることを必ず先に伝える。お薬手帳と、産科で言われている内容も一緒に伝えます
- 塗り薬と飲み薬では考え方が異なります。また同じ塗り薬でも、量・範囲・期間によって判断が変わります
- 授乳中は、塗る場所にも配慮が必要です。乳頭・乳輪に塗る場合、授乳前に拭き取るなどの指示が出ることがあります
- 市販薬・サプリメント・ハーブも申告する。「市販だから安全」とは限りません
- 個別の薬の可否は、必ず主治医・産科医・薬剤師に確認してください。インターネットの情報や体験談で判断しないことが重要です
自分でできるケア
- 保湿を早めに、広く — お腹が大きくなる前から続けると、かゆみと妊娠線の負担を減らしやすくなります。入浴後すぐが基本です
- 掻かずに冷やす — かゆいときは、保冷剤をタオルで包んで数分当てるほうが、掻くより跡が残りません
- 湯温はぬるめ、こすらない — ナイロンタオルは使わず、泡で手洗いします
- 汗をかいたら着替える — 胸の下や脇など、重なる部分は乾いたタオルで押さえます
- 締めつけない衣類を選ぶ — 綿など通気のよい素材にします
- 紫外線対策を続ける — 色素沈着は日光で濃くなりやすいため、日焼け止めと帽子が有効です。刺激の少ないものを選びます
- 美容目的の施術は延期を検討する — レーザーや薬剤を用いる自由診療の施術は、この時期は見合わせる方針が取られることが一般的です。再開の時期は施術内容によって異なるため、医療機関に確認してください
※美容目的の施術は自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。
受診の目安
- 保湿を続けてもかゆみで眠れない
- 湿疹が2週間以上続く、または広がっている
- 手持ちの薬を使ってよいか判断がつかない
- 顔の色素沈着が気になり、この時期にできることを知りたい
- もともとアトピー性皮膚炎があり、妊娠を機に悪化した
次の場合は、皮膚科より先に産科へ連絡してください。発疹がないのに全身、とくに手のひら・足の裏が強くかゆい(夜間に強い)、白目や皮膚が黄色い、尿の色が濃い——胆汁の流れに関わる異常が背景にあることがあり、赤ちゃんの管理にも関わります。また、顔や手のむくみが急に強くなり、頭痛や見えにくさをともなう場合、広い範囲の水ぶくれや粘膜(口・目・陰部)のただれと発熱がある場合も、緊急の評価が必要です。夜間・休日で迷うときは救急安心センター(#7119)に相談できます。
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(確認日: 2026-09-07)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン一覧(確認日: 2026-09-07)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

