「寝ていたら急に激痛で目が覚めて、布団の中にムカデがいた」——秋と初夏に多い相談です。痛みが強いので不安になりますが、ほとんどの場合は局所の反応で、適切に処置すれば数日で落ち着きます。この記事では、その場でやること、どこからが受診の範囲かを整理します。
ムカデは「刺す」のではなく「咬む」
ハチが針で刺すのに対し、ムカデは頭の下にある大きなあごのような脚で咬みつき、そこから毒を出します。そのため傷は、2つの点が並んだ形になることが多いのが特徴です。咬まれた瞬間に、電気が走るような鋭い痛みがあります。
この毒は、痛みと腫れを起こす成分を含みます。痛みの強さと、危険の大きさは比例しません。激痛でも局所だけで収まることが大半です。逆に、痛みが落ち着いたあとに全身の症状が出てくるほうが問題になります。
症状の経過
| 時間 | 起こること | 対応 |
|---|---|---|
| 咬まれた直後 | 鋭い激痛。数分で赤みと腫れが出てきます | 流水で洗い、冷やします |
| 数時間後 | 腫れと熱感が強くなります。ずきずきした痛みに変わります | 冷やし続けます。痛みが強ければ市販の痛み止めを使って構いません |
| 翌日〜数日 | 腫れがピークになり、そのあと引いていきます。かゆみに変わることもあります | 赤みが広がる・熱が出る場合は受診してください |
| 1週間以降 | 多くは治まります。色素沈着やしこりが残ることがあります | しこりが長く残るときは相談を(関連記事: 結節性痒疹) |
ほかの虫との違い
| ムカデ | ハチ | 蚊・ブユなど | |
|---|---|---|---|
| 傷の跡 | 2つの点が並ぶ | 小さな点が1つ(針が残ることも) | はっきりしないことが多い |
| 痛み | 刺された瞬間から激痛 | 刺された瞬間から激痛 | 痛みは軽く、かゆみが主 |
| 起こる場所 | 屋内が多い(布団・靴・洗濯物) | 屋外 | 屋外・屋内とも |
| 全身反応 | 2回目以降にまれに起こります | 2回目以降に起こりやすいことが知られています | ほとんどありません |
ハチと共通するのは、1回目より2回目以降のほうが、全身の反応が起こりやすくなるという点です(関連記事: ハチに刺されたとき)。過去に咬まれたことがある方は、次に咬まれたときに、じんましんや息苦しさが出ないかを30分ほど注意して見てください。
その場でやること
- ①流水で洗う — 皮膚についた毒と汚れを洗い流すのが目的です。石けんを使って構いません
- ②冷やす — 保冷剤をタオルで包んで当てます。冷やすと痛みの神経の伝わりがおとなしくなり、腫れも抑えられます
- ③心臓より高くする — 手や足を咬まれたときは、上げておくと腫れが軽くなります
- ④掻かない — 掻き壊すとそこから細菌が入り、あとで腫れがぶり返す原因になります
- ⑤30分は様子を見られる場所にいる — 全身の反応が出るとしたら、多くはこの時間帯です。一人のときは、誰かに連絡できる状態にしておいてください
- ⑥口で毒を吸い出さない — 吸い出せる量はわずかで、口の中の細菌を傷に入れてしまうほうが不利です
皮膚科で行う治療
基本はステロイドの塗り薬で炎症を抑え、かゆみが強いときは抗ヒスタミン薬の飲み薬を併用します。腫れが強い場合には、飲み薬のステロイドを短期間使うことがあります(関連記事: ステロイドの飲み薬)。
注意したいのが、数日たってから赤みと腫れが広がり、熱感が強くなってくる場合です。これは毒の反応ではなく、傷口から細菌が入って皮膚の下に感染が広がった状態(蜂窩織炎)のことがあります。この場合は抗菌薬が必要になるため、判断のために受診してください(関連記事: 蜂窩織炎)。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| お湯で温めるとよいと聞きました | おすすめしていません | 紹介されることのある方法ですが、痛みで熱さの感覚が鈍っているところに熱いお湯を当てると、やけどを作ってしまうことがあるためです。冷やすほうが安全に痛みを抑えられます |
| ムカデを持っていくべき? | 必要ありません | 治療の内容は虫の種類で大きく変わるものではなく、捕まえようとして二度咬まれるほうが問題だからです |
| 咬まれたあと、お風呂は? | 当日はシャワー程度にしてください | 温まると血流が増え、痛みと腫れが強くなるためです |
| 毒は残りますか? | 体に長く残るものではありません | 腫れが数日続くのは、毒そのものではなく、体の炎症反応が続いているためです |
| 跡は残りますか? | 茶色い色素沈着がしばらく残ることがあります | 炎症が強かった皮膚は色が残りやすいためです。多くは数か月かけて薄くなります(関連記事: 炎症後色素沈着) |
| 家に入れないためには? | すき間をふさぎ、家の周りの落ち葉や植木鉢の下を片づけてください | ムカデは湿って暗い場所を好み、えさになる虫を追って家に入ってくるためです。梅雨どきと秋に増えます |
受診の目安
- 受診を — 腫れが強い、痛みが我慢できない
- 受診を — 顔・首を咬まれた
- 受診を — 咬まれた場所が手や指で、指が曲げにくい
- 早めに受診を — 翌日以降に赤みと腫れが広がってきた、熱を持ってきた、発熱がある
- 早めに受診を — 傷口から膿が出てきた
- すぐに救急へ — 息苦しさ、全身のじんましん、めまい、意識がもうろうとする(判断に迷うときは#7119、反応が悪ければ119番)
- とくに注意 — 以前にムカデやハチで全身の症状が出たことがある方
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「虫さされ」(確認日: 2026-09-18)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-09-18)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

