「シミ取り」と検索すると、レーザー・IPL・内服・外用が横並びで出てきて、どれを選べばいいのか分からなくなります。ですが実際の診察では、まず顔を見てシミの種類を分け、それから機械を選ぶという順序です。IPLは万能ではなく、得意な相手と、当ててはいけない相手がはっきりしています。
IPLとは — 光を面で当てて、色と赤みに反応させる
IPLは Intense Pulsed Light の略で、日本語では光治療と呼ばれます。レーザーが単一の波長の光を点で当てるのに対し、IPLは幅のある波長の光を、手のひらサイズの面で一度に当てます。
この幅のある光は、皮膚の中のメラニン(茶色い色素)とヘモグロビン(血液の赤み)の両方に吸収されます。だから1回の照射で、薄いシミ・そばかす・赤みの3つに同時に働きかけられる。これがIPLの最大の持ち味です。
一方で、1つのターゲットに注ぎ込むエネルギーはレーザーより弱くなります。濃く盛り上がったシミを1回で飛ばす力はありません。「広く浅く」がIPL、「狭く深く」がレーザーと覚えておくと、説明を受けたときに理解が早くなります。
効くシミ・効かないシミ・悪化しうるシミ
| 種類 | 見た目の特徴 | IPLの相性 | 主に検討される方法 |
|---|---|---|---|
| 老人性色素斑(日光性)・薄いもの | 境界のはっきりした淡い茶色の斑 | よく合う | IPLを数回、または一発のレーザー |
| 老人性色素斑・濃いもの、盛り上がったもの | 濃い茶〜黒、表面がざらつく | 物足りないことが多い | レーザー、または冷凍凝固・切除 |
| そばかす(雀卵斑) | 鼻を中心に散った小さな点 | とても合う | IPL |
| 肝斑 | 頬骨の上に左右対称、もやっと広がる | 刺激で悪化することがある | 内服・外用が土台。光を使うなら弱い設定で慎重に |
| 炎症後色素沈着 | ニキビや傷のあとが茶色く残った | 効かないことが多い | 時間と紫外線対策、外用 |
| 赤み・毛細血管拡張 | 頬や小鼻の赤み、細い血管が透ける | 合う | IPL、血管に合わせたレーザー |
| ADM(後天性真皮メラノサイトーシス) | 頬に左右対称の灰青色の点 | 効かない | 真皮に届くレーザー |
この表で最も注意していただきたいのが肝斑です。肝斑は摩擦や熱といった刺激で濃くなる性質があり、「シミだと思って光を当て続けたら、かえって全体がくすんだ」という経過をたどることがあります。しかも顔には、老人性色素斑と肝斑が同居していることが珍しくありません。自己判断が最も危ないのがこの領域です(関連記事: シミと肝斑の見分け)。
施術の流れと、効果の出方
洗顔してジェルを塗り、目を保護したうえで、顔全体に数十発の光を当てていきます。時間は15〜30分程度、痛みは「輪ゴムで軽く弾かれる感じ」と表現されます。麻酔は通常使いません。
照射後、薄いシミは数日かけて少し濃くなり、細かいかさぶたのようになって、1〜2週間で自然に剥がれ落ちます。この一時的に濃くなる時期に驚いて擦ってしまう方がいますが、擦ると色素沈着が残るので、触らず日焼け止めで守ってください。
IPLは1回で完結する治療ではなく、3〜4週間おきに5回程度を1クールとして重ねるのが一般的です。1回ごとの変化は控えめで、回を追うごとに肌全体のトーンが整っていきます。
費用とリスク
IPLは美容目的のため自由診療です。顔全体1回あたりおおむね1万〜3万円程度が目安とされていますが、機器や照射範囲、回数券の有無によって幅があり、医療機関ごとに異なります。
主なリスクは次のとおりです。
- やけど・水ぶくれ — 出力が強すぎる場合や、日焼けした肌に当てた場合に起こりえます。日焼け直後は受けられないのはこのためです
- 色素沈着・白抜け — 炎症の後に茶色く残る、あるいは色が抜けることがあります
- 肝斑の悪化
- 一時的な赤み・ヒリつき・乾燥
- 毛が抜ける — 光は毛の色素にも反応します。眉やまつ毛の近くは避けて照射します
※IPL(光治療)は自由診療です。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| エステの光と何が違う? | 出力と、診断がつくかどうかが違います | 医療機関では医師がシミの種類を診断したうえで設定を決め、やけどなどが起きた場合も治療まで続けられるためです |
| 日焼けしていても受けられる? | 受けられません | 肌全体のメラニンが光を吸収してしまい、やけどや色素沈着の危険が高まるためです |
| 当日、化粧はできる? | 多くは当日から可能です | ただし赤みが強い日は無理に重ねず、まずは保湿と日焼け止めを優先してください |
| 途中でやめたら戻る? | 元に戻るわけではありませんが、新しいシミは増えます | シミの原因である紫外線は続くためで、日焼け止めをやめないことが結局いちばん効きます(関連記事: 光老化) |
| 敏感肌でもできる? | 状態によります。まず肌荒れを治してからです | バリアが弱っている肌に光を当てると、赤みやヒリつきが長引きやすいためです |
受診の目安
- まず診断を — 頬骨の上に左右対称のもやっとした色がある(肝斑の可能性があり、光治療の前に内服・外用の検討が要ります)
- まず診断を — シミが最近急に大きくなった、形がいびつ、色むらがある、出血する(皮膚の悪性腫瘍との鑑別が必要です。関連記事: ほくろと皮膚がんの見分け)
- 受診を — 照射後に水ぶくれができた、強い痛みが続く
- 受診を — 照射部位が数週間たっても赤い、あるいは茶色く残っている
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しています。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(確認日: 2026-09-20)
- 日本美容外科学会(JSAPS)(確認日: 2026-09-20)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

