「唇に黒い点ができて、だんだん大きくなってきた」「血豆のようだけど、ずっと消えない」。見た目が黒いので、ほくろのがんを心配されて来られる方が多いできものです。ほとんどは良性の血管のふくらみで、診察の場で見分けがつくことが多いものです。
静脈湖とは
静脈湖は、皮膚や唇の浅いところを流れる細い静脈が、風船のようにふくらんで、そこに血液がたまった状態です。たまった血液が皮膚を通して透けて、黒っぽい紫色〜青紫色に見えます。
50代以降の方の下唇に最も多く、顔(頬)や耳にもできます。長年の日光で皮膚や血管の支えが弱くなることが関係していると考えられています。数ミリ〜1cm程度で、やわらかく、痛みはありません。
見分け方: 押すと色が薄くなるか
静脈湖の大きな特徴は、透明なガラスなどで押すと、中の血液が逃げて色が薄くなり、ふくらみも平たくなることです。離すとまた元の色に戻ります。ほくろやメラノーマは色素そのものなので、押しても色は変わりません。
| できもの | 色・形 | 押すと | 見分けのポイント |
|---|---|---|---|
| 静脈湖 | 黒紫〜青紫。ぷっくりしてやわらかい | 色が薄くなり平たくなる | 中高年の下唇に多い |
| メラノーマ(ほくろのがん) | 黒〜茶色。色むら・形がいびつ | 変わらない | 色むら・急な拡大・にじみ出し(関連記事: メラノーマ) |
| ほくろ | 茶〜黒。形が整っている | 変わらない | 何年も変化がない |
| 粘液嚢腫 | 透明〜青白い水ぶくれ状 | 変わらない | 下唇の内側。唇を噛む癖(関連記事: 粘液嚢腫) |
| 血豆(外傷による出血) | 赤黒い | 変わらない | ぶつけた・噛んだきっかけがあり、数週間で消える |
診察では、拡大鏡(ダーモスコピー)で内部の構造を見て、血管のふくらみなのか色素のかたまりなのかを確認します。見た目で判断しきれない場合は、切除して病理検査で確かめます。
治療
静脈湖は良性なので、必ずしも治療の必要はありません。次のような場合に治療を検討します。
- 見た目が気になる
- 食事や歯みがきで引っかかり、出血をくり返す
- メラノーマとの区別がはっきりしない
治療は、局所麻酔で切除して縫い合わせる方法が基本で、取ったものを病理検査に出せる利点があります。そのほか、医療機関によってはレーザーなどで血管を固める方法が選ばれることもあります。唇は動きの多い場所なので、傷あとや唇の形への影響を考えて方法を選びます。
※見た目の改善を目的としたレーザー治療は自由診療となる場合があります。費用は医療機関ごとに異なり、効果の感じ方には個人差があります。治療後に一時的な腫れ・かさぶた・色の変化が出ることがあります。
診察室でよく聞かれる質問
| 質問 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| がんになりますか? | 静脈湖ががんに変わることはありません | 血管のふくらみであって、細胞が増える腫瘍ではないためです。ただし最初の見分けは必要です |
| 自分で針で刺して血を抜いてもいいですか? | やめてください | 血管なので出血が止まりにくく、細菌が入ることもあるうえ、またすぐに血液がたまるためです |
| 出血したらどうすればいい? | 清潔なガーゼで5〜10分ほどしっかり押さえてください | 静脈の出血なので、押さえれば多くは止まります。止まらない場合は受診を |
| 取ったあと、唇の形は変わりませんか? | 小さなものなら、目立つ変化はほとんどありません | 唇の線に沿って縫い合わせるなど、傷あとが目立ちにくいよう工夫するためです |
受診の目安
- 受診を — 唇や顔に黒紫色のできものが新しくできた(一度は確認を)
- 受診を — 引っかかって出血をくり返す、見た目が気になる
- 早めの受診を — 押しても色が変わらない黒いできもの
- 早めの受診を — 色むらがある、形がいびつ、数か月で急に大きくなった、周りに色がにじみ出している
- 受診を — 出血が押さえても止まらない
あび皮膚科クリニックは2027年の開業を予定しており、皮膚のできものの日帰り手術は開業後に提供予定です。開業のお知らせやご質問・ご意見は、お問い合わせフォームからお寄せいただけます。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ホクロ(確認日: 2026-09-23)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A メラノーマ(確認日: 2026-09-23)
- 日本皮膚科学会 診療ガイドライン(確認日: 2026-09-23)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

