「軟骨に開けて3か月たつのに、まだ押すと痛い」「寝返りで当たるたびに腫れる」「穴の横に小さなしこりができた」。軟骨ピアスの相談は、耳たぶのピアスよりも長引くことが多いのが実際です。よくある経過なのか、治療が必要な状態なのかを見分けることが大切です。
軟骨ピアスが長引く仕組み(耳たぶとの違い)
耳たぶは、やわらかい皮膚と脂肪でできていて、血の流れが豊富です。一方、耳の上の方(ヘリックスなど)や耳の穴の近く(トラガスなど)は、薄い皮膚のすぐ下に軟骨があります。
軟骨そのものには血管がなく、軟骨を包む膜(軟骨膜)から栄養をもらっています。そのため、軟骨に開けた穴は傷の治りが遅く、ばい菌が入ったときにも体の防御が届きにくいという特徴があります。ホールが安定するまでに、耳たぶより長い期間(半年〜1年ほど)かかるとされることもあります。
さらに、軟骨の部分は寝るときに枕で押される、髪や帽子、マスクのひも、イヤホンが当たるなど、毎日の刺激を受けやすい場所です。治りが遅い場所に、刺激が繰り返し加わることが、腫れや痛みが長引くいちばんの理由です。
症状・見分け
軟骨ピアスのトラブルで多いのは、刺激による腫れと、穴の周りにできるしこりです。頻度は多くありませんが、注意が必要なのが軟骨膜炎です。
| 状態 | 見た目・症状 | 急ぎ度 |
|---|---|---|
| 刺激による腫れ | 穴の周りだけが少し赤く、押すと痛い。当たったあとに悪化し、数日で落ち着く | 様子を見てよいことが多い |
| 肉芽(にくげ) | 穴の出入り口に、赤くやわらかい盛り上がりができる。出血しやすい | 早めに受診 |
| ケロイド・肥厚性瘢痕 | 穴の周りに硬いしこりができ、月単位でじわじわ大きくなる | 早めに受診 |
| 感染(化膿) | 黄色い膿が出る、ズキズキ痛む、赤みが広がる | 早めに受診 |
| 軟骨膜炎 | 耳の広い範囲が赤く腫れて熱を持ち、強く痛む。耳の形がふくらんで見える | その日のうちに受診 |
軟骨膜炎は、軟骨を包む膜に細菌が入って炎症を起こした状態です。進むと膿がたまり、軟骨が傷んで耳の形が変わってしまうことがあります。耳たぶ以外の場所まで赤みが広がっているかどうかが、見分けるときの大きな手がかりです。
治療・セルフケア
刺激による腫れが中心であれば、刺激を減らすことがいちばんの治療です。
- ピアスのある側を下にして寝ない: 枕で押される圧迫が、腫れを繰り返す原因になるため。ドーナツ型の枕を使う方法もあります
- 触らない・回さない: 治りかけの傷を毎回こすることになるため
- シャワーで泡を流すように洗う: 汚れを落とすことが目的です。強い消毒薬を何度も使うと、皮膚が荒れて治りが遅れることがあります
- ピアスの軸の長さを見直す: 腫れている時期に短すぎる軸だと、留め具が食い込むため。逆に腫れが引いたあとも長すぎると、引っかかりやすくなります
医療機関では、状態に合わせて次のような治療を行います。
- 感染があるとき: 抗菌薬の飲み薬や塗り薬。膿がたまっていれば、切開して出すことがあります
- 軟骨膜炎: 原因になりやすい細菌に効く抗菌薬をしっかり使います。重い場合は点滴や、膿を出す処置が必要になることがあります。治療中はピアスを外すよう指示されることが多いです
- 肉芽: 塗り薬や、液体窒素・切除などで小さくします
- ケロイド: ステロイドのテープ剤や注射、手術で取ったあとの再発予防などを組み合わせます
自分で膿を押し出したり、しこりを針でつついたりしないでください。軟骨まで傷をつけ、かえって炎症を広げることがあります。
受診の目安
次のような場合は、早めに皮膚科を受診してください。
- 開けて数か月たっても、腫れや痛みが良くなったり悪くなったりを繰り返す
- 膿が出る、穴の出入り口に赤い盛り上がりがある
- 穴の周りのしこりが、少しずつ大きくなっている
次の場合は、その日のうちに医療機関を受診してください。夜間や休日で迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
- 耳の広い範囲が急に赤く腫れて、熱を持っている
- ズキズキと強く痛み、耳の形がふくらんで見える
- 熱が出ている
診察室でよく聞かれる質問
腫れているときは、ピアスを外した方がいいですか?
軽い腫れなら、自己判断で外さないでください。外すと穴がすぐにふさがり、中に膿が閉じこめられることがあるためです。ただし、軟骨膜炎が疑われるときや、留め具が埋まりこみそうなときは、医療機関で外すことがあります。外すかどうかは診察で決めます。
イヤホンやマスクは使っても大丈夫ですか?
穴に当たる位置なら、できるだけ避けてください。毎日の小さな刺激の積み重ねが、腫れが引かない原因になっていることがよくあります。反対側の耳を使う、マスクのひもを耳にかけないタイプにするなどの工夫が役に立ちます。
しこりができたら、もう軟骨ピアスはできませんか?
しこりの正体によります。肉芽なら治療で小さくなることが多いですが、ケロイドの場合は、同じ場所に開け直すと再発しやすいとされています。開け直しを考えるときは、先に医師へ相談してください。
ケロイドかどうか、自分で分かりますか?
見た目だけでは分かりにくいことがあります。月単位でじわじわ大きくなる、硬い、かゆみや痛みがある場合はケロイドを疑います。治療前に、スマートフォンで同じ角度から写真を撮っておくと、大きさの変化を診察で伝えやすくなります。
関連ページ
参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ケロイド(確認日: 2026-10-19)
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A一覧(確認日: 2026-10-19)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

