「帝王切開の傷あとが、ときどき無性にかゆい」「手術から数か月たつのに、縫ったところがムズムズする」「ピアスの穴やニキビのあとが盛り上がってかゆい」。かいていいのか、放っておいていいのか、迷いやすい症状です。かゆくなる理由と、受診したほうがよい傷あとの見分け方を説明します。
傷あとがかゆくなる仕組み
皮膚が傷つくと、体は傷をふさぐために、コラーゲン(皮膚の土台になる線維)を作ったり、新しい血管を伸ばしたりします。この修復の時期には、炎症にかかわる物質が出たり、新しくできた細い神経が刺激を感じやすくなったりするため、かゆみが出やすくなります。傷あとの皮膚は汗や皮脂を出す働きも弱く、乾燥しやすいことも、かゆみを強くします。
ふつうの傷あとは、数か月から1年ほどかけて赤みが引き、平らで白っぽい線になっていきます。一方、修復が必要以上に続いてコラーゲンが作られ過ぎると、傷あとが赤く盛り上がることがあります。これが肥厚性瘢痕やケロイドで、かゆみや痛みが強く、長く続きやすいのが特徴です。
症状と見分け方
| 傷あとの状態 | 特徴 |
|---|---|
| ふつうの治りかけの傷あと | 赤みが少しずつ引いていく。かゆみは数か月で落ち着く。盛り上がりは目立たない |
| 肥厚性瘢痕 | 傷の範囲の中で赤く盛り上がる。関節の近くなど引っぱられる場所に多い。年単位で少しずつ平らになることが多い |
| ケロイド | 元の傷の範囲を越えて広がる。胸・肩・耳たぶ・下腹部に多い。かゆみや痛みが強く、自然には治まりにくい |
治療・セルフケア
ふつうの治りかけの傷あとのかゆみは、保湿と、こすらないことで多くが落ち着きます。かくと傷あとに刺激が加わって赤みが長引き、盛り上がりのきっかけにもなるため、かゆいときは冷やすか、押さえるようにしてください。
- 保湿する。傷あとの皮膚は乾燥しやすいため、ワセリンや保湿剤で守ります。
- テープで固定する。手術後しばらくは、傷を寄せる方向に医療用テープを貼ると、引っぱられる力が減り、盛り上がりにくくなります。
- 紫外線を避ける。赤い時期の傷あとは日に当たると茶色く残りやすいためです。
肥厚性瘢痕やケロイドには、保険診療で次のような治療を組み合わせます。
- ステロイドのテープ・塗り薬:炎症を抑え、かゆみと盛り上がりを和らげます。傷あとにぴったり貼るテープは、効果が出やすく、最初によく使われます。
- ステロイドの注射:盛り上がりの中に直接注射します。かゆみや痛みが早く引くことが多い治療です。
- 飲み薬:トラニラストという抗アレルギー薬が、ケロイド・肥厚性瘢痕のかゆみに使われます。
- シリコーンのジェルシートや圧迫:傷あとを覆って保湿・圧迫し、盛り上がりを抑えます。
- 手術:大きなケロイドでは切除することがありますが、再発しやすいため、手術後に放射線治療などを組み合わせることがあります。
診察室でよく聞かれる質問
Q. かゆくてどうしてもかいてしまいます。どうすればいいですか?
A. 保冷剤をタオルに包んで冷やすと、かゆみが和らぎます。夜にかいてしまう方は、テープや絆創膏で傷あとを覆っておくと、無意識にかくのを防げます。かゆみが強く眠れないほどなら、治療が必要な傷あとのことがあるので受診してください。
Q. 帝王切開の傷あとが盛り上がってきました。次の出産まで待つべきですか?
A. 待つ必要はありません。ステロイドのテープなどは早く始めるほど効果が出やすいので、気になった時点で相談してください。妊娠・授乳中に使える治療かどうかは、その時期に合わせて判断します。
受診の目安
- 傷あとが赤く盛り上がってきた
- 元の傷の範囲を越えて広がってきた
- かゆみや痛みが半年以上続く、または強くなってきた
- 傷あとがジュクジュクする、膿が出る
- 以前にもケロイドができたことがあり、新しい傷ができた(早めの予防が大切です)
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参考情報
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ケロイド(確認日: 2026-10-26)
本記事は皮膚科領域の一般的な公開情報に基づいて作成しています。個別の症状の判断は、必ず医療機関でご相談ください。

